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ルゥ誕生の真実~後編~

今回は、ハデスが主役です。

 デメテルは、集落でルゥが寿命で亡くなってから聖女の肉体に憑依させようとしていたのか……

 全てにおいて、弟が余計な事をしていたという事だな。

 昔から空気は読めないし女好きで、ろくでもない奴だったが……


「今度という今度は我慢の限界でね……ハデスに話した過去の出来事も勘違いばかりだし。それに、幸せに暮らしているルゥを自害に追い込むなんて……」

 

 確かに、今デメテルから聞いた話ならルゥは自害しなかっただろう。

 弟がした愚かな行為を全て隠せば……だが。

 まったく……

 愚かな弟だ。


「話してもいいかしら……ルゥに。ルゥは少しずつペルセポネの頃の記憶を取り戻しつつある……前もって教えておいた方がいいと思うの。もちろん、ゼウスがしてきた事は言わないわ」


 ……また自害してしまったら?

 怖くて堪らない……


「ルゥは、わたしに懐かしさのようなものを感じていたみたいなの。見ていて分かったのよ……少しずつ戻ってくる記憶に混乱するはずよ? もちろん、ハデスとの記憶も戻ってきているはず……話した方がいいわ」


「……怖い。怖くて話せそうもない」


 冥王と恐れられたわたしが……

 みっともないな……

 だが、ルゥを傷つけるのが怖い……

 怖くて堪らない。

 また喪ったら……

 

「わたしから話すわ。母親だもの」


 デメテル……


「愛しているの……ペルセポネを……そして、ルゥの事も愛しくて堪らないわ」


 話すしかないのか……

 確かに記憶が戻りつつある今……

 話しておいた方がいいのは分かる。

 だが……

 怖い……

 怖いのだ。


「でも……ルゥに話す前に、この事を話さなければいけない()()がいるの」


 家族……?

 誰に話すのだ?

 なるべくなら誰にも知られたくない……


「ハーピーとセージに話したいの。話さなければいけない。ハーピーはルゥの母親よ。ずっと守り続けてきた姿を見れば、どれだけルゥを大切に想っているか分かるわ。そして、セージ……本当に申し訳ない事をしたわ……集落のルーの身体は実子でも魂はペルセポネだったの……」


 確かに異世界での身体は実子だったが……

 今のルゥは、この世界の聖女の身体だ。

 身体も魂も魔王様の娘ではない……

 あぁ……

 愛しい娘の魂が別人だったと知れば魔王様がどれほど傷つくか……


「セージはペルセポネを実の娘と思って愛している。でも……真実は知らせなければいけない。それに、セージなら必ずルゥの心を支えてくれるはずよ」


 ……そんな簡単な事ではない。

 魔王様が、異世界に置いて来たルゥをどれほど愛していたか……

 いずれ、この世界に来るルゥの為に命を削り戦ってきた。

 実の娘ではないと知れば、どうなるか。

 もし魔王様がルゥに『娘を返してくれ』と言ったら?  

 酷く罵ったら?

 ルゥは立ち直れない……

 また自害してしまうかもしれない。


「話さないで欲しい……」


 話さないでくれ。

 魔王様とルゥは、やっと巡り会えたのだ……

 傷つける必要はない。

 このまま実の親子として暮らして欲しい。


「ハデス……隠しておいた方が傷つけてしまう事もあるの。もちろん、隠さなければいけない事は隠し続けるわ」


 わたしは……

 わたしは今度こそルゥを守り抜けるのか……?

 また喪いそうで怖い……

 もうこれ以上、時は戻せない。

 ルゥ……

 どうか自害しないでくれ……

 ルゥはわたしの全てなのだ……

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