デメテルと神様~後編~
「嫌だ嫌だ! デメテルちゃんと一緒に帰るの!」
うわぁ……
神様は子供みたいだ……
田中のおじいちゃんの時もこんな感じだったよね。
そういえば、今まで魔族と天使とのやり取りの時に神様が来た事がないって言っていたけど……
これだからかな……?
「……」
デメテル……
完全に黙っちゃったね。
「これ以上、天族の恥をさらす前に帰れ。デメテルの好きなようにさせてやれ」
ハデスの言う通りだね。
その方がいいよ。
「デメテルちゃん……ううぅ……」
神様……
泣きながら帰って行ったね……
もう、田中のおじいちゃんにしか見えなかったよ。
「あの……デメテル……? 大丈夫?」
何があって家出したのかな?
「……ごめんなさい。ヒヨコの振りをしようと思ったけれど、ゼウスのせいで……まったくゼウスは愚かなんだから」
おお……
普通に話している。
「ハデスのお姉さんだったら、わたし達は親戚になるのかな?」
わたしはハデスの妻になったから、デメテルは義理のお姉さんになるのかな?
「……親戚……ね」
あれ?
人間が親戚になるのは嫌なのかな?
「デメテルは……わたしが親戚だと嫌かな?」
「え? 違うの。そうじゃないのよ? ぺ……あの……あ……」
デメテル……?
やっぱり嫌なのかな?
「ルゥ……違うのだ。何があったのかを話そう。とりあえず座ろう……」
元気がなくなったわたしにハデスが話しかけてきた。
ハデスとソファーに座ったけど……
ずっと手を繋いでくれている。
「何から話そうか……」
ハデス……
言葉を選んでいるみたい。
そういえば、ばあばが『ハデスにはデリケートな問題がある』みたいに話していたような……
「ルゥ……集落で光る何かを見たと言っていたが……それはデメテルだった。陰ながらルゥやおばあさんを守っていたらしい」
え?
どうして守ってくれたのかな?
「わたしの娘とイナンナは親友だったの。だから……イナンナを放っておけなくてね……」
デメテルも言葉を選びながら話しているような……
イナンナと娘さんが親友だったの?
それで守ってくれていたんだ。
「ありがとう。守ってもらっていたのに、気づかなくてごめんね」
「え? あ……そんな事は……」
デメテルが慌てている?
「ルゥ、ご飯ができたよ? 食べようか」
パパが朝食を持ってリビングに入って来た。
「わたしは少しデメテルと話してくるから、ルゥは先に食べていなさい」
ハデスとベリアルとデメテルがリビングから出て行ったけど……
聞かれたらダメな話なのかな?
ばあばもデリケートな話だって言っていたし……
わたしは聞かない方がいいのかも。
でも……
やっぱり寂しいな。
「姫様……」
魚族長が心配そうにわたしを見つめている。
「あ……魚族長も一緒に食べる?」
魚族長は肉食だから食べないか……
何か食べられそうな物はあるかな?
「……姫様、あの……いつか、その……ハデス様から……」
魚族長?
心配してくれているんだね。
「ハデスが、わたしに話せないのにはわけがあるはずだよ? 仲間外れにされているなんて考えないから大丈夫……」
「はい……ハデス様は、いつも姫様の幸せだけを考えておられます」
「うん……そうだね。本当にありがたいと思っているよ……」
集落にいた頃、デメテルがおばあちゃんとわたしを守ってくれていた……か。
あの蛍みたいな光だったデメテルは、大天使の魔素の攻撃からわたし達を守っていたんだ。
だから、おばあちゃんが魔素でやられそうになった時に早く家に帰るように教えてくれたんだね。
デメテルも神様もイナンナの事を大切に考えてくれていたのが伝わってきた。
いつか、デメテルと神様の娘さんに会えるかな?
イナンナとの思い出をたくさん聞けたら嬉しいな。




