穏やかな時間
魚族長の持って来てくれた卵でプリンを作り始める。
マンドラゴラ達は、白いヒヨコちゃんのデメテルに夢中になっている。
かわいいな。
一生懸命デメテルのお世話をしようとしている。
パパもデメテルにメロメロになっているね。
ベリアルのちょっと生意気な感じのヒヨコちゃんもかわいいけど、デメテルは守ってあげたくなるかわいさなんだ。
わたしも早くプリンを作り終わって撫でたり吸ったりしよう。
今日はたくさん作るから頑張らないと。
「ピュイ?」
デメテルが、またピュイって言った。
かわいいっ!
皆もメロメロになっている。
あれ?
わたしの方に歩いて来ている。
ヨチヨチ歩きでかわいいっ!
どうしたのかな?
お腹が空いたかな?
「デメテルどうしたの? お腹空いた? 抱っこかな?」
かわいいな。
つぶらな瞳で見つめられている。
あぁ……
かわい過ぎて撫で回したいよ。
「もしかして、お手伝いをしてくれるの?」
「ピュイ」
あれ?
言葉が通じている?
でも、ベリアルみたいには話せないのかな?
お手伝いか……
マンドラゴラ達は手があるけどデメテルは翼だから。
何のお手伝いをしてもらおうかな。
「うーん……じゃあ、味見をしてもらおうかな?」
「ピュイ」
「キュキュイ」
マンドラゴラ達も味見がしたいんだね。
かわいいな。
飾りで使うブルーベリーとイチゴがあるから小さく切ってあげよう。
「じゃあ皆リビングに行って椅子に座ろうね。デメテルはお父さんがマンドラゴラだった時に使っていた椅子に座ろうか」
うわあぁ!
かわいいな。
皆、良い子に座っている。
「ご飯が食べられなくなっちゃうから少しだけね?」
マンドラゴラ達が、小さいお皿に少しずつ盛られた果物をフォークを使って食べている。
最近、マンドラゴラの赤ちゃんは何でも自分でやりたがるから食べさせられなくて残念だったんだ。
「デメテルは食べさせてあげるね?」
フォークでイチゴをクチバシの前に持っていくと、モグモグ食べている。
……!
かわいいっ!
こんなにかわいいのにどうして追放されたのかな?
あの優しい神様が追放したんだよね?
よほどの理由があったのかな?
それにしても、真っ白だな。
果汁で汚れたら大変だ。
「デメテル、おいしかった?」
「ピュイ」
かわいい!
ピュイ!?
かわい過ぎるっ!
「ベリアルも食べる?」
クチバシにブルーベリーを近づけると、おいしそうに食べている。
デメテルとは違うかわいさだよね。
ベリアルは、やんちゃな子っていう感じなんだ。
わたしより、かなり年上だけど……
「吸いたい……ベリアル……少し吸わせて」
少しでいいからモフモフを感じたい。
「ハデスが怖いからダメだ。ルゥに吸われるたびに命の危機を感じるんだ」
……?
ハデスが……?
「ルゥ……ヒヨコの姿だがベリアルは天族だからな。他の男を吸うのは耐えられない」
あれ?
でも、ウェアウルフ王とグリフォン王は吸っても嫌がらないよね?
「ハデス、どうしてウェアウルフ王とグリフォン王はいいの?」
「それは、犬猫だからだ」
……?
ベリアルもヒヨコちゃんだけど……
「ルゥ……要するに嫉妬してるんだ。あのハデスがな……笑えるよな。ププッ……」
かわいいっ!
ベリアルが笑っている!
はっ!
いつの間にかベリアルを抱っこしている。
ダメだ。
我慢できない。
「ちょっとだけ吸わせて」
少しでいいから吸わせて欲しいよ。
「ルゥ……ベリアルは眠くなったようだ。永遠にな……」
ハデスがベリアルを取り上げた!?
あぁ……
わたしのモフモフが……
あれ?
今、永遠って言った?
「だから嫌だって言ったんだ! オーク助けてくれ!」
ベリアルがキッチンに飛んで逃げて行く……
あぁ……
わたしのヒヨコちゃん……
「あははは! これです! ずっと家の中の出来事を見たかったのです」
魚族長が楽しそうに笑っている。
音だけ聞いているのは寂しかったよね。
これからは、寂しい思いをする事はないんだね。




