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冥王ハデス

「ルゥ!? 大丈夫か!?」


 ママとパパが慌ててリビングに入って来た。


「ママ? どうしたの?」


 どうしてこんなに慌てているんだろう?


「……? お前誰だ? ルゥの知り合いか?」


 ママがハデスの姿のじいじに話しかけたけど……

 天使の身体に戻ったから分からないんだね。


「あのね……じいじなの……」


「ヴォジャノーイ? ……?」


 そうだよね。

 分からないよね。


「ハーピーよ……わたしだ。分からないか?」


 ハデスがママに話しかけたけど……


「……はあ!? 嘘だろ!? ヴォジャノーイなのか!?」


 ママが大声を出して驚いているね。


「ヴォジャノーイ……天族だったの?」


 パパも驚いている。


「あぁ……身体を返されたのだ。これからは、この身体で生きていく事になった」


 もうヴォジャノーイ族の身体には戻らないのか……

 嫌だったみたいだし、これでよかったのかな。


「翼が邪魔だな」


 ハデスが黒いモヤに包まれる。


 え?

 魔素?

 

「これでいいな」


 モヤがなくなると……

 翼が消えている?


「じい……ハデス。翼がないよ? 痛くないの?」


「大丈夫だ。翼は邪魔な時は消す事ができる」


「え? 出し入れ自由なの? 便利だね」


「便利か……ルゥは面白い事を言うのだな」


 ハデスが優しく髪を撫でてくれる。

 じいじの頃と変わらない優しい手だ……


「今のは魔素なの?」


 身体に悪くないのかな?


「魔素ではない。わたしは冥王だったからな。天族ではあったが、どちらかといえば闇に近い力を使っていた」


 めいおう?


「めいおうって何?」


「天界で命を落とした者が行く世界の王だな。冥界は恐ろしい所ではない。皆、生きていた頃の姿のままで暮らし続けている」


 死んだ後に暮らす国?

 冥界の王様だから冥王なのか。

 じゃあ追放された天使は、そこには行けないんだね。

 でも身体も魂もそのままって、生きているのと同じだよね?

 ……?

 生きていた時の延長……?

 うーん……?

 

「わたしは死神と呼ばれる事もあったが、そうではなかった。冥界は穏やかで豊かな場所だった。ただ、亡き者は二度と冥界からは出られない」


 ハデスは冥界で幸せに暮らしていたのに追放されたのかな?

 でも、冥界の王様だったのに?

 もっと偉い誰かがいたのかな?


「今のわたしには、この島の方が幸せに暮らせる……」

 

 ハデスが優しく笑った。

 優しい黒い瞳に見つめられるとドキドキする。

 あれ?

 気持ちが高ぶっているのに眠くならないな。

 

「……? ルゥ。どうした? どこか痛いか?」


 ハデスが心配そうにしている。


「違うの。今まではドキドキしながら、じい……ハデスを見つめると眠くなったの。でも今は平気だなって思って」


「そうか……ルゥは気づいていたのか。これからはもう、眠くはならないだろう」


 ……?

 どういう事かな?


「……ルゥ、ハーピー、オーク。話がある」


 ハデスが真剣な顔をして話し始める。


「待て。ヴォジャノーイ。魚族長がルゥを心配しているんだ。大声で起こされてな。家で何か起きているみたいだから見に行って欲しいって言われたんだ」

 

 ママ……?

 家で何か起きていた……?

 魚族長は陸に上がれないから大声でママとパパを呼んだのかな?

 その時はハデスじゃなくて、じいじだったはずだよね?

 じいじには魚族長が叫んでいるのが聞こえなかったのかな?


「……まさか」


 あれ?

 ハデスが何か考え込んでいる?


「ルゥ……わたしは魚族長と話してくるから、(ハーピー)の寝顔を見てくるといい。家に一人、置いて来たのだろう? 心配だ」


 ハデス……?

 魚族長と大切な話があるのかな?

 言う通りにした方がよさそうだね。


「ママ、パパ。ハーピーちゃんの寝顔を見に行ってもいい?」


「もちろんだ。かわいいぞ? ルゥの赤ん坊の頃みたいにな」


 ママが嬉しそうに笑っている。


 ……ハデス。

 わたしに聞かれたくない何かがあるんだね……

 でも、よかった。

 ハデスが遠くに行っちゃいそうで怖かったけど、これからも一緒にいられるんだね。

 それだけで充分だよ。

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