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ハデスとペルセポネ(5)

今回は、じいじが主役です。

「ドラゴン王にはイナンナの身体が天界にある事は話してある。だが、返してもらう必要はないと言われた。もちろん、ルーを産んだ事は隠してある。今の話も誰にもしていない」


 ……ルゥには話すべきなのか。

 それとも黙っているべきなのか……?

 ペルセポネの両親が、これ程酷い事をしてきたと知れば傷つくはずだ。


「ハデス……お前、ルゥに話すのか? 話さない方がいいと思うぞ? ルゥは優し過ぎる。ペルセポネ様の為だったとはいえ自分のせいで集落の人間が利用されていたと知れば、辛い思いをするだろ。それに、今の話は酷過ぎるだろ?」


 ベリアルの言う通りだ。

 ルゥは聖女の身体に憑依した事だけでも思い悩んでいるのに、今聞いた話をすればどうなるか……


 それに、ペルセポネの記憶がないルゥに昔、愛した女性がいた事を知られたくない……

 しかも、それがルゥの魂だったなんて。

 きっとルゥは、わたしがルゥ自身ではなくペルセポネを愛していたと考えるだろう。


 わたしは卑怯だ……

 ルゥに良く思われたいから真実を隠していようなんて。

 これから先、ずっとルゥを騙して生き続けるのか?

 そんな事はダメだ。

 出生の秘密も他の者から聞くかもしれない事を考えれば、わたしから話した方がいいだろう。


「ルゥに全てを話そうと思う」


 話すべきだ。

 分かってもらえるまで何度でも愛を伝えよう。

 集落の事も、わたしがルゥの気持ちを支えよう。

 ずっと寄り添い、辛い気持ちを慰めよう。


「お前正気か?」


 ベリアル……

 黙っていれば、ルゥの為にもわたしの為にもいいだろう。

 だが、偽りの幸せなど長続きはしない。

 今度こそ、本物の家族になるのだ。


「わたしがルゥを支えていく……」


 ペルセポネの事も、きっといつか分かってもらえるはずだ。

 そうなるように、わたしができる事は何でもする。


「ハデス……冥界に戻りたいのなら身体を返す事ができるが……」


 弟よ……

 わたしの身体か。

 やはりまだ残っていたのだな。

 ルゥは、わたしの天族の頃の身体を見たらどう思うだろう?

 もしかしたら、ペルセポネの頃の記憶が戻るかもしれない。

 ダメだ。

 それは、ルゥにもペルセポネにも失礼な考えだ。

 ペルセポネはペルセポネで、ルゥはルゥなのだ。


「身体は返して欲しいが冥界には戻らない。このまま、幸せの島でルゥと暮らし続けたい」


 ルゥの幸せの全てが、幸せの島にあるからな。


「デメテルは今のこの状況を知っているのか?」


 また、わたしからルゥを取り上げようとするのではないか?

 デメテルのペルセポネへの愛情は深いからな。

 ペルセポネの魂が肉体に入ったと知れば放ってはおかないだろう。


「……ハデス。知らなかっただろうが、デメテルはヴォジャノーイ族の身体に憑依させた後すぐに呪いをかけた。もしも、ペルセポネの魂が『人間と魔族の世界』に行ってしまった時の為にな……」


 呪い?

 何の呪いだ?


「ペルセポネに対してだけの呪いだ。ペルセポネがヴォジャノーイ族になったハデスの瞳を、高ぶった感情で見つめると意識を失うという呪い……ハデスはペルセポネを愛しているから眠るペルセポネに妙な事はできないと考えたのだろう。デメテルは二人の幸せを望んではいなかった。愛し合う姿を見たくなかったのだ」


「わたしがハデスの身体を取り戻せば呪いはなくなるだろうが……デメテルは、また何かしてくるのではないか?」

 

 あのデメテルが黙っているはずがない。

 今度は何をしてくるか……


「大丈夫だ。デメテルが、ハデスをヴォジャノーイ族の姿にした時に約束させた。もし、これでもペルセポネがハデスを愛するのなら二度と二人の邪魔をしないとな。だが……ペルセポネは自害した。そして……デメテルは十五年前、聖女に憑依したばかりのルーを島から連れ去ろうとしたのだ。はぁ……デメテルは今、軟禁中だ。もう何もできないだろう」


 軟禁中……?

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