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ハデスとペルセポネ(4)

今回は、じいじが主役です。

「デメテルは酷く動揺して……完全に亡くなる前に魂を残そうとした。ハデスのいる『人間と魔族の世界』を嫌がり、異世界の人間の世界にペルセポネの魂を送った。だが……異世界にペルセポネの魂を受け入れられる程の身体はなかった」


 異世界の人間……?

 ペルセポネの魂はどうなったのだ?


「わたしはペルセポネが亡くなった後、蘇らせる方法を考えた。天界では許されないが『人間と魔族の世界』で天族がやっている方法……そう、憑依だ」


 憑依……?

 まさか……

 ペルセポネの魂は誰かに憑依しているのか?


「わたしはペルセポネの魂が不憫で……ペルセポネの死から三日後に神の座を譲り、異世界の人間の世界に行った。そして、異世界をフワフワと浮遊するペルセポネの魂と共に過ごした。かなり時が経ってペルセポネの魂はイナンナの子孫の為に植えられた木や泉に天界を感じ、とある集落に留まるようになった」


 イナンナの子孫の為に植えられた木や泉……?

 ルゥのいた集落……か?


「だが、魂は身体に入り込まなければ感情を持たない。それでも()()()()()()()()()()と、天界を感じる事ができる泉のそばを離れようとしないペルセポネの為に……泉をぬるくし、人間が入りに来るようにした。少しでも賑やかになればと思って……」


 弟も異世界で暮らしていたのか?

 ペルセポネが寂しくないようにずっとそばにいたのか……

 それに、イナンナの魂?

 イナンナの魂がその集落にいるような言い方だな……


「早くペルセポネに合う身体を『人間と魔族の世界』に見つけなければと考えていたが『人間と魔族の世界』でなくても、異世界の集落に天族の血を引く娘を産まれさせればいいと考えついた。そしてペルセポネの魂に耐えられる身体ができたら、その身体に憑依させようとした」


 まさか……

 ルゥのいた集落でペルセポネに合う身体を作り出したのか?

 だが、どうやって?


「わたしは誰にも気づかれないように、天界を追放され魂を抜かれた天族の身体を使い……集落に天族の血を引く人間を作り始めた」


 まさか……

 わたしの身体も使ったのか?


「さすがに大天使以上の力を持つ子を産むとなると人間の身体には耐えられない。神力の強くない天族の身体を使い、子から子へと徐々に神力の強い人間を作っていった」


 気の長い話だが、それだけペルセポネを愛していたという事か……


「先代の神……ブラックドラゴンにより植えられた木と泉によって集落の者達が長生きしたわけではない。天族の血が混じっているから他の人間よりも長く生きていたのだ。と言っても、人間の血が入っているから天族のように長く生きるわけではない。百歳を少し過ぎるくらいだ。わたしは、集落の者達の記憶を操作しずっと死なずにいても怪しまれないようにしていた」


 長寿は木の実のせいではなかったのか。

 ドラゴン達が木の実や泉を調べに行く必要はないのだな。

 だが、行く必要がないとも言えない……

 誰から聞いたのかは話せないからな。

 この話をドラゴン達にはしない方がよさそうだ。

 調べに行きながら、異世界を旅してくればいいだろう。

 

「そして、ついに産まれた。ルー……かわいそうな子が……」


 ルゥがかわいそうな子?

 どういう事だ?


「異世界の人間に産ませられる天族の子は一人が限界だった。それに『田中のじいちゃん』として生きながら天族の身体を同時に二体以上操るのは難しく、子を産ませたらすぐに天族の身体は天界に返していた。人間には、死んだと思わせてな。火葬される直前にわたしが創り出した偽物の骨と入れ替えていた……」


 それで、集落でルゥを産んだ天族も死んだ事になったのか……


「ルーの身体は、かなり天族に近かった。だが、その身体に魂が入る事はなかった。母親の腹で子が大きくなっていっても魂は存在しなかった。わたしは空っぽのルーの身体にペルセポネの魂を入れた」


 そんな……

 ルゥが……

 ペルセポネだったのか……


「ルーの祖母は知っての通りイナンナの子孫だった。わたしはイナンナの身体を使える日を待ちわびていた。そして強い神力を持つ、ルーの父親の星治が産まれた時に直感した。星治とイナンナの子こそペルセポネの身体になると。そうだ……ルーを産んだ天族の身体は……イナンナだ」


 まさか……

 だが、大天使はイナンナの身体を残さなかったと言っていたが。


「イナンナの身体を消滅させたと思い込ませ、隠していたのだ。ペルセポネの友人だったイナンナの身体を消滅させたくはなかったからな。それに……イナンナが追放されたのはペルセポネの亡くなった二日後だった。もしかしたら、イナンナの身体を何かに使えるかもしれないと思ったのも事実だ。そして先代の神に、ルーをイナンナの子孫だと思い込ませ聖女の身体に憑依させるように仕向けた」


 ルゥの魂はイナンナの子孫ではなく、ペルセポネだったのか……

 ペルセポネの魂だったから、イナンナの受け継ぐべき記憶を持っていなかった……?

 身体は魔王様の血を引いていても、魂は後から入れられた……

 魂に残された記憶は魂に引き継がれる。

 ルゥはペルセポネの魂そのものなのか。

 ブラックドラゴンは利用されていた……?

 イナンナの子孫だと思い込まされて、ルゥを守るように仕向けられていたのか。

 だが身体はイナンナの子孫……

 騙されたわけではない……のか?


「異世界の集落で、大天使どもがイナンナを攻撃するのを防ぎながら暮らしていたが……わたしが旅行をしていると見せかけ天界に戻っている間に、ルーの祖母は殺されてしまった。そして、ルーもかなりの魔素が体内に入り込んでしまった。これ以上はペルセポネの魂を入れておく事ができないと思った時、ついに『人間と魔族の世界』に聖女が産まれた」


 それで、魂を入れ替える為に……

 ルゥを溺死させたのか?

 まさか……

 そんなはずは……

 

「ルゥは溺死したと聞いた……まさか、殺したのか?」


 頼む。

 違うと言ってくれ。


「他に方法がなかったのだ……」


 身体は違うとしても、魂はペルセポネだ。

 どうしてそんな事ができる……?

 実の娘の魂が、もがき苦しむ姿を見ても助けなかったのか……

 それは、本当に愛していると言えるのか?

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