ハデスとペルセポネ(3)
今回は、じいじが主役です。
天界の神は、わたしの弟でありペルセポネの父だったはずだが……
どういう事だ?
神の座を譲ったのか?
今の神はブラックドラゴンであり、ルゥの魂の先祖である事が分かった。
そして、腐敗しきった大天使達を殺したようだった。
その後、先代の神がまた神の座についたと聞いた。
弟がまた神になったのか?
それとも、違う誰かなのか……
考えても分かるはずもない。
もう何千年も天界とは関わってこなかったのだ。
ヒヨコになったベリアルに記憶があると分かったのは浮遊島だった。
だが、わたしがハデスだとは気づいていないようだった。
しかし、ある日突然言われたのだ……
「お前、ハデスだろう?」
驚いた。
今はヴォジャノーイ族の身体なのに……
なぜ気づいたのだ?
「久しぶりだな。突然いなくなったと聞いたが、まさか追放されていたのか? お前は堅物の真面目な奴だったからな。オレみたいに罪を被せられたんだろう?」
わたしが突然いなくなった……?
天族は、わたしがデメテルに追放された事を知らなかったのか?
ベリアルはわたしが行方不明になったと知ると、方々捜し回っていたようだった。
そしてある時、何の罪を犯したのかも分からぬまま魔族の世界に追放されたと話してくれた。
わたしの行方を知られたくないデメテルがそうさせたのか?
弟も、わたしが今ここに生きている事を知らないのか?
その夜、ベリアルに島の結界の外に出ようと誘われた。
どうやら、新しい神がわたしに会いたがっているようだった。
弟なのか?
それとも、全く違う天族なのか?
ベリアルは、新しい神に天族だった頃の身体を返してもらい天界に戻れると言われていたようだった。
もしかしたら、わたしも身体を返してもらえるかもしれない。
ルゥの隣に立つのにふさわしい身体……
天界や冥界に帰りたいとは微塵も思わなかった。
わたしはこの数千年間ずっと天族を恨んできたのだ。
ただ……
ペルセポネ……
今は、わたしではない天族と幸せに暮らしているだろう。
行方不明になったわたしを待ち続けるはずがない。
ルゥが眠った後、ベリアルと島から離れた場所に向かった。
目の前に現れたのは……
末の弟だった。
わたしがハデスだと知っているのか?
それとも、無実の罪で追放された天族だと思い会いに来たのか?
「ハデス……記憶があったのか」
弟は静かに話し始めた。
「デメテルに追放されたと知り、すぐに天界に戻そうとしたのだが……ハデスがヴォジャノーイ族に憑依させられた事を知ったペルセポネが……」
ペルセポネ……?
何かあったのか?
「ペルセポネがどうしたのだ!?」
「一年の三分の一を冥界で寂しく暮らす事に耐えられそうもないと、ハデスと暮らす為に魔族の世界に行きたいと言い出した。だが、それでもザクロを食べたからな。三分の一の時間は冥界で過ごさなければいけない。だとしてもハデスと残りの三分の二の時間を過ごせるのなら耐えられると言って……」
ペルセポネはわたしを想ってくれていたのか……
わたしはなんて愚かなのだ。
ペルセポネが他の天族と結ばれていると考えていたなんて。
「それをデメテルは許さなかった。そして……デメテルはペルセポネを監禁した。それからすぐだった。ペルセポネは自害した……」
……自害?
ペルセポネが……?
「次に冥界に行かなければならない日までに説得しようと閉じ込められ、一人になった時にな……」
そんな……
わたしのせいだ。
わたしがペルセポネを自害に追い込んだのだ。




