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ハデスとペルセポネ(1)

今回は、じいじが主役です。

 あれは遥か昔、天界での事___


 天族であるわたしには三人の姉と一人の弟がいた。

 わたし達は父親に丸飲みにされ、腹の中に閉じ込められていた。

 絶望の闇にいたわたし達を救ったのは新しく産まれた末の弟だった。

 末の弟の力で、腹から出たわたし達は力を合わせ父を討った。

 

 そして、三人の兄弟で天界を三つに分けた。

 長男のわたしは、冥府。

 次男の弟は海。

 そして、末の弟は空を支配した。


 いつの間にか、天族は空の世界だけを天界と呼ぶようになった。


 ある時、わたしは末の弟に会う為に天界を訪れた。

 そして出会ってしまったのだ。


 輝く白い髪、美しい青い瞳……

 末の弟の娘……

 ペルセポネ。


 天界の柔らかい光の中で花を摘むペルセポネに、一瞬で心を奪われた。

 わたしは末の弟にペルセポネを娶りたいと頼んだ。

 弟は反対するどころか今すぐに妻にすればいいと言い、わたしはその日のうちにペルセポネを冥界に連れて行った。


 ペルセポネも初めこそ困惑していたがすぐに冥界の暮らしに慣れ、わたしに心を寄せるようになった。


 そんなある日___


 わたしの二番目の姉でもあるペルセポネの母親、デメテルが役割を放棄してペルセポネを捜し回っていると知った。

 末の弟は、わたしがペルセポネを冥界に連れて行った事を話していなかったのだ。

 慌てて説明したようだったがデメテルの怒りは収まらず今すぐに返せと使いをよこした。

 

 ペルセポネを手放したくなかったわたしは冥界のザクロを用意した。

 この実を食べると冥界から出られなくなるからだ。

 ザクロを食べさせたのには他にも理由はあったが……

 

 ペルセポネにザクロを食べさせたが口にした量が少なかったらしく、一年の三分の一だけを冥界で過ごす事になった。

 残りの三分の二は母親のデメテルの元で過ごす事になったが……

 わたしはペルセポネのいない日々に耐えられそうになく、デメテルに会いに行った。

 女好きの弟達や他の天族とは違い、ペルセポネただ一人を愛していた。

 話せばきっと分かってくれるはずだ。

 そう思っていた。

 だが……

 デメテルは、ペルセポネが冥界で暮らさなければいけない期間を作ったわたしを憎み……

 わたしの魂を身体から取り出した。

 そして、醜いカエルのヴォジャノーイ族に憑依させた。


「お前の醜い姿を見ればペルセポネも二度と恋心など抱かないだろう」


 実の姉なのに……

 まさかこんな事になるなんて。 


 それから先、天界で何があったのか……  

 わたしには知るよしもなかった。

 魔族は天界には出入りできない。

 天族が呼び寄せれば入れるが……

 天族はわたしがヴォジャノーイ族に憑依した事を知らないのか?

 それとも、デメテルが邪魔をしているのか?


 初めこそ弟が天界へ戻してくれると期待していたが、そんな日は訪れなかった。

 わたしは、憑依したヴォジャノーイ族の身体を最強にする為に日々鍛錬し光の魔術以外の全ての力を使えるようになった。

 

 ペルセポネも今のヴォジャノーイ族のわたしの姿を見れば、きっと離れていくだろう。

 いや、違う。

 ずいぶん時が経った。

 すでに他に愛しい者がいるだろう……

 もう、守るべき者もいない。

 わたしは、この広い世界に一人きりなのだ……


 ただ虚しく日々は過ぎていった。


 そんなある日、魔族最強だと思っていたわたしは現実を知る事になる。

 

 あのお方が現れたのだ。

 強く、知識の豊富なあのお方は……

 あっという間に魔王となった。

 

 だが魔王様は異世界の人間だったらしく、すでに魔素におかされていた。

 魔王様には、異世界に幼い娘がいるらしかった。

 そして魔王様は、その娘がこの世界にやって来る事を知っていた。

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