十五歳の誕生日(8)
「そうだ。頼まれていた物が出来上がったぞ?」
ドワーフのおじいちゃんが、じいじに小さい箱を渡している。
何かな?
じいじも何か作ってもらっていたのかな?
「間に合ったな」
じいじが嬉しそうにしている。
なんだろう?
「ルゥ。ほら、イヤリングだ」
じいじが箱に入ったイヤリングを見せてくれる。
え?
イヤリング?
ルゥの母親の形見の?
ドレスの飾りにした後に、またイヤリングにするってじいじが言っていたけど。
ドワーフのおじいちゃんに頼んでいたんだね。
「母親の形見でもあるが、このイヤリングのおかげで兄の存在が分かったからな。これからも大切に身につけよう」
じいじ……
わたしが人間を辞めるって言って外したイヤリングをちゃんと保管してくれていたんだ。
それに、またイヤリングの形に戻してくれるなんて……
「ありがとう。じいじ。わたし、幸せだよ?」
「ルゥが幸せなら、じいじも幸せだ」
じいじが左耳にイヤリングをつけてくれる。
小さい頃から毎日つけていた物だから、やっぱり落ち着くね。
前と全く同じ形だ。
さすが、ドワーフのおじいちゃんだね。
「ルゥとヴォジャノーイちゃんは本当に仲良しね。ばあばまで嬉しくなっちゃうわ。これなら、安心して行けるわね」
ばあばが嬉しそうに笑っている。
ああ……
もう行っちゃうのか……
数年、もしかしたら数百年会えないかもしれないなんて。
でも、泣かないよ?
泣いたら心配をかけちゃうから。
笑顔で見送るって決めたんだ。
遠く離れた場所でも、わたしの笑っている顔を思い出して欲しいから。
「じゃあ、わたし達は集落に行って来るよ。ドワーフ……今までずっとホワイトドラゴンを守ってくれてありがとう」
おじいちゃんがドワーフのおじいちゃんにお礼を言っている。
お別れが近づいているんだ。
寂しいよ……
もう二度と会えないとか、そんな事はないよね?
「じゃあ、行って来るよ」
おじいちゃんとばあばが少し離れた所で手を繋いで光の中に消えていく。
「気をつけて行って来てね!」
泣きそうな気持ちを隠しながら大声で叫ぶ。
ドラゴンは耳がいいから聞こえたよね?
どうか無事に帰って来ますように。
「それじゃあ、おばあ様達も帰るわね」
「ええ? もう帰っちゃうの?」
寂しいよ。
もっといて欲しいよ。
「今度、おばあ様の国にも遊びに来てね」
抱きしめてくれるおばあ様の温もりが心地いい。
「うん。遊びに行くね」
「はい。ルゥちゃん、誕生日おめでとう」
おばあ様がわたしの首にネックレスをかけてくれた?
あれ?
イヤリングと同じ青い宝石だ。
「この宝石はね、アクアマリンというの。人魚の涙とも呼ばれているのよ。幸せな結婚をして欲しい相手に贈る物なの」
アクアマリン?
聞いた事はあるけど、この世界にもあるんだね。
「人魚の涙か……わたしはルゥに初めて会った時、人魚姫だと思ったんだ。綺麗で優しくて、芯の強さも感じられた。まさか、いとこだったなんてね」
レオンハルトが懐かしそうに話し始める。
そういえば、初めて会った時に魚族に襲われていたよね。
怒っていないのかな?
二人亡くなったし。
でも、尋ねない方がいいよね。
魚族長の事も、あの時襲ってきた魚族の長だっていう事は黙っておこう。
「わたしもレオンハルトが、いとこだって知って驚いたよ。それに、お兄様がいた事もすごく驚いたんだよ?」
「ルゥ……お兄様は、ずっとルゥを捜していたんだ。やっと見つけた妹が魔族に育てられていたと知った時は本当に驚いたよ。でも、幸せに暮らしていると分かって安心したよ? 今日はルゥの大切な家族に会えて嬉しかったよ。それから……」
お兄様がグリフォン王とウェアウルフ王の所に歩いて行く。
「グリフォン王、ウェアウルフ王、妹からお二人の話を聞いています。兄と弟のような大切な存在だと。お二人が妹を信じてリコリス王国に来させてくれたから、妹も信頼に答えたいと言っていました。妹の心の支えになってくださり本当にありがとうございます」
お兄様……
あの時の話を覚えていたんだね。




