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十五歳の誕生日(5)

「まずはこれだ」


 これ?

 何かな?

 ベリアルの細長いパンみたいなかわいい翼が、いつの間にか小さい何かを持っている?

 

「粘土だ!」


 え?

 どこから出したの?

 いろんな色の粘土?


「ベリアル……その粘土をどうするの?」


 まさか……

 こねて創るとか言わないよね?


「この粘土で形を創るんだ。その後にオレが人間みたいに動ける身体にする」


 ……待って?

 ベリアルが創るんだよね?

 ピーちゃんの身体を創った時は、天使だったから手先が器用だったかもしれないけど……

 今はヒヨコちゃんだよね?

 大丈夫なのかな?


「あああぁ! しまった! 今のオレはヒヨコだったっ!」


 だよね?

 かわい過ぎるパンみたいな翼じゃ無理だよね?


「わたしどもでよろしければ」


 ウェアウルフ王……?

 そうか、すごく器用だもんね。


「お願いしてもいいのかな? 助かるよ」


 お父さんも、ウェアウルフ王に作ってもらえば安心だね。

 これで魔力も人間の身体も戻ってくるんだ。


「魔王の姿は見た事があるので簡単に作れます」


 さすが、手先が器用なウェアウルフ族だ。

 あっという間に作り終わりそう。


「え? このちっこいダイコンが魔王? かわいいな」


 マクスは怖いものしらずというか……

 そういえば、この前もじいじに黒曜石で作った馬をもらっていたよね。

 魔族でさえ、怖くてじいじには話しかけないのに。


「マクス、失礼だぞ? 申し訳ありません。悪気はないのですが……」


 レオンハルトが代わりに謝っているね。

 

「大丈夫だよ? ボクも元は人間だったんだ。気にしないよ?」


 お父さんは優しいね。

 こんなに優しくて魔王が務まるのかな?


「あれ? マンドラゴラ達も何か作っているの?」


 パンを作るみたいにコネコネしている。

 小さい手で一生懸命……

 かわいいよ。


「キュキュイ」


 楽しそう。

 何を作っているのかな?


「聖女様、マンドラゴラは聖女様への贈り物を作っているようです」


 ウェアウルフ王が教えてくれたけど……

 わたしのプレゼントを!?

 嬉しいよっ!


「キュイキュイ」


「シームルグの形を作ると言っています」


 ピーちゃんを?

 わたしがピーちゃんに会いたがっているのを知っていたんだね。

 優しいな。


「ありがとう。嬉しいよ……」


「キュキュ」


 マンドラゴラ達は楽しそうだね。

 見ているだけで幸せな気持ちになるよ。


「ルゥちゃん、毎日こんな風に楽しく過ごしているのね」


 おばあ様が嬉しそうに笑っている。


「うん。すごく幸せだよ」


「初めて魔族の中にいるルゥちゃんを見た時は息ができないくらい心配したの……でもね、すぐに分かったの。ルゥちゃんが魔族達に愛されているって」


 死の島の戦いの時か……


「あの時は、あの狼さん達は敵だったはずよね? すっかり仲良しさんなのね」


 そうだね。

 あの時、わたしはウェアウルフ王を殺したんだ。

 そんなわたしを守りたいって思ってくれるウェアウルフ王は本当に優しいよね。

 

「うん。かわいい弟みたいなの」


 ニコニコのわたしを見て、おばあ様が抱きしめてくれる。


「ルゥちゃんの事をね……ずっと国に連れて帰りたかったの。でも、やめるわね。おばあ様は、また間違えた道に……大切な家族を導いてしまうところだったわ」


 確かルゥの母親を大国の側室にしたけど、王妃に殺されたんだっけ?

 レオンハルトの母親は、よく分からないけど確か亡くなっているんだよね?


 おばあ様は今でも自分を責めているのかな?

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