十五歳の誕生日(4)
あれ?
お父さんは少し元気がないみたい。
どうしたのかな?
「お父さん……疲れちゃった?」
マンドラゴラの姿のお父さんを抱っこする。
「あ……いや、月海の成長に胸がいっぱいになって……」
わたしが急に大人になったからかな?
天使達との事では、すごく心配をかけちゃったよね。
「お父さん、毎日わたしの幸せを願ってくれてありがとう。わたしも毎日お父さんの幸せを願っているよ」
マンドラゴラの姿のお父さんを抱きしめる。
「月海……嬉しいよ。お父さんは月海のそばにいるのに守ってあげる事もできないんだ。自分の無力さが情けないよ」
お父さんは、わたしが転移して来る前は魔王として魔族と戦っていたんだよね。
今はマンドラゴラの姿だから歯がゆい事もあるよね。
「あぁ……セージ、そんな風に思っていたの? かわいそうな事をしたね。セージの力はおじいちゃんが預かっているんだよ?」
悲しそうな顔をしたおじいちゃんが、お父さんに話しかける。
え?
おじいちゃんが預かっている?
お父さんの力を?
「おじいちゃんはどうして、お父さんをマンドラゴラの姿にしたの?」
「それはセージが力ではなくて、心で世界を治めたいと言っていたからだよ。ちょうどいい人間の身体があれば与えてあげたかったんだけど、セージの強過ぎる力を無理矢理入れたら身体が壊れるからね。マンドラゴラの身体にもセージの力は強過ぎるかもしれないけど……」
そうなんだね。
お父さんの強過ぎる力に身体が耐えられない……か。
このままマンドラゴラの姿でいても大丈夫なのかな?
「なんだ? 身体が欲しいのか? だったらオレが創ってやろうか?」
パパの肩に逃げていたベリアルが話し始めたけど……
身体を創る?
どういう事かな?
「ベリアル? それは、どうやるの?」
わたしに抱っこされているお父さんが真剣な顔で尋ねた。
お父さんは人間の身体が欲しいのかな?
マンドラゴラの姿だと生活するのも大変なのかも。
もしかしたら……
わたしを守る為に?
「簡単だ。オレは勇者にも身体を与えていたからな。今、やってやろうか? お前の姿は知らないから、適当に見た目を言えば創ってやるぞ?」
「そんな事ができるの? お願いしたいな。この身体だと月海を守ってあげられないんだ」
お父さん……
やっぱり、わたしの為に?
あれ?
じいじが魔王城に繋がる橋を、すごい速さで渡っている?
「オレは身体という入れ物を創るだけだ。魂がなければ、ただの人形と変わらないからな。魂なんて、そうそうお目にかかれる物じゃない。異世界から人間の魂でも持って来なければ使う事もない力だ」
ちょっと得意気に話すヒヨコちゃん……
かわい過ぎるっ!
「ベリアル……すごいね! ただのかわいいヒヨコちゃんじゃないんだね……ちょっと吸わせて欲しいんだけど……」
もう、我慢できない……
吸いたい……
顔をうずめたい……
「ルゥ……お前がオレを吸うたびに、オレは命の危機を感じるんだ……」
……?
ベリアル?
何でかな?
「魔王様、生前の肖像画をお持ちしました。ベリアル、この姿で創れ」
じいじは魔王城に肖像画を取りに行っていたんだね。
前に見せてもらったけど、遺影のお父さんにそっくりだった。
誰が描いたんだろう?
ヴォジャノーイ族かな?
「お前、動くの速過ぎだろ? はぁ……この通りに創ればいいんだな?」
すごい……
どうやって創るのかな?
キラキラの光の中から出てくるとか?
さすが天使だよ!
かわいいヒヨコちゃんっていうだけじゃないんだねっ!




