十五歳の誕生日(2)
今日の宴はウェアウルフ王と従者二人、グリフォン王と従者二人、おじいちゃんとばあば、お父さんと幸せの島の家族、魚族長が参加してくれる。
ルゥの家族のおばあ様とお兄様とレオンハルト達も来てくれるらしい。
さすがに人間を魔王城には呼べないから、今回は幸せの島で宴をする事になったんだ。
だから、なるべく少ない人数にする為にヴォジャノーイ族のおじちゃん達は呼ばない事になった。
参加したそうだったけど、じいじがダメだって言ったら仕方なく諦めてくれたみたい。
その代わり、明日おじちゃん達の為に『いつもありがとうの宴』を開く事になったんだ。
宴って言っても、わたしがプリンを作って皆で食べるだけなんだけど。
それでも、すごく楽しみにしてくれているんだ。
家から砂浜に出ると、おばあ様とレオンハルト達の姿が見える。
あれ?
お兄様は来られなかったのかな?
じいじとお父さんの姿も見えない。
あ……
もしかして、かなり前からおばあ様達を砂浜で待たせていたのかな?
「待たせちゃったかな? ごめんね……」
高齢のおばあ様が船に乗って長旅をして来たのに待たせるなんて……
疲れさせちゃったよね。
「ルゥちゃん。大丈夫だったの? 心配していたのよ……」
おばあ様が力強くわたしを抱きしめた?
高齢なのに力が強いんだね……
って、そうじゃなくて……
じいじが言っていた。
おばあ様には神様や天使の事は話していないって。
わたしは体調不良で命の危機があったから、永遠に近い命を与えられた事になっているらしい。
さすがに『大天使が魔素で攻撃してきた』なんて言えないし……
お兄様にだけ天使の事を話してあるんだっけ?
神様だったブラックドラゴンのおじいちゃんを助ける為に話したんだよね。
「うん……心配かけてごめんね」
嘘をついているみたいで申し訳ないよ。
でも、本当の事は話せないよね。
「……綺麗ね。あの子によく似ているわ」
あの子?
ルゥの母親の事だよね。
おばあ様の子供は三人いて、ルゥの母親と伯母様は亡くなっている。
ルゥは母親似らしいから、わたしを見て辛くならないといいけど……
「ルゥ……身体は辛くない? 寝込んでいたって聞いたけど」
レオンハルトが心配そうに話しかけてきた。
「もう大丈夫だよ? あのね、弟が産まれたの。すごくかわいいんだよ?」
ニコニコのわたしを見て二人とも安心したみたい。
「やめろ! 殺すぞ!?」
え?
ベリアルの声?
声の方を見るとレオンハルトの従者のマクスが、ベリアルを撫でている。
ベリアル……
ピンクのフワフワのドレスにミニハットを被っている。
かわいいっ!
「なんだよ? お前かわい過ぎだろ? 殺す? アハハハ!」
いや、気持ちは分かるけど……
一応天使だからね。
ベリアルがその気になったら、この辺りの島は一瞬で消えてなくなるくらい強いんだから……
ベリアルは無実だったのが分かったから神力を返してもらったんだよね。
……まさか怒って暴れないよね?
「マクスあのね……その子、本当に強いから気をつけて……」
あぁ……
ベリアルのつぶらな瞳がわたしを見つめている。
かわいい……
思わずベリアルを抱き上げて、ほおずりをする。
フワフワ……
カスタードクリームみたいな色の真ん丸な身体……
かわいい容姿なのに怖い事を言うくちばし……
堪らない……
興奮が止まらないよっ!
「かわいい……吸っていい?」
ダメだ。
気持ちが抑えられない。
おじいちゃんがかけてくれた、魔族をかわいいと思う術のせいかな?




