十五歳の誕生日(1)
ついに、十五回目の誕生日がやってきた。
年をとる実を食べているから、もっと大人に見えるんだけどね。
それに、前世のわたしと合わせれば三十一歳か……
今回は『ルゥの誕生日』と『月海が十五年前に島に来た日のお祝い』の両方の宴なんだ。
ルゥが産まれた事を皆に祝って欲しかったから、すごく嬉しい。
亡くなった身体を勝手に使わせてもらっているから本物のルゥには、いつも申し訳なく思っているんだ。
「ルゥ……かわいいわよ。ボーっとしちゃって大丈夫? ドレスが苦しい?」
わたしの身支度を手伝ってくれている、ばあばが心配しているね。
「大丈夫……コルセットも着けないし、ドレスも緩いから」
じいじが体調を心配して苦しくないドレスを用意してくれたんだよね。
真っ白いフワフワのドレス……
すごく素敵だ。
「なんだか不思議だなって思って……前世で一度死んだのに、また生まれ変わってこうして生きているなんて。ばあば……永遠に近い命を与えてくれてありがとう」
「わたし達は不思議な縁で結ばれていたのね……だから、ルゥがかわいくて仕方がないのね。ルゥ? わたしとブラックドラゴンは、いつ帰って来るか分からないの。だから、これだけ言っておくわね。これから先、ヴォジャノーイちゃんが迷う時や辛い時にはルゥが支えになってあげてね?」
ばあば……?
どうしたのかな?
やっぱりじいじに何かあったのかな?
「ばあば? じいじに何かあったの?」
「いつか、ヴォジャノーイちゃんが話してくれるはずよ。ばあばが話したら怒られちゃうわ」
じいじに大変な事が起きているの?
わたしじゃ力になれないのかな?
「ルゥ……そんな顔しないで? デリケートな問題なのよ。そのうち話してくれるわよ。ばあばもブラックドラゴンから聞いたの。今の会話もヴォジャノーイちゃんに聞こえているかもね……」
デリケートな問題?
「……ばあば? わたしね……人間だった時は色々な事を急いでいたんだ。人間の命は短いから急がないと、あっという間に終わっちゃうの。亡くなるまでに、やり残した事が何もない人の方が少ないと思う。でもね、長い命をばあばに与えてもらって考えが変わったんだ。わたし、じいじが教えてくれるのを待ってみるよ。じいじは、わたしに付いて来て欲しいって言ってくれたの。今はそれだけで充分だよ?」
ばあばが微笑みながら聞いてくれている。
「ルゥが急に大人になってしまったみたいで少し寂しいわね」
「じいじの事が大好きだから信じたいの。でも、それだけじゃなくて……じいじに頼ってもらえるような存在にもなりたいの。困った事があったら一番に相談してもらえるようになりたいんだ」
「ルゥならきっとなれるわよ。でも、今は無理をしないでね。まだ身体が魔素にやられている状態だから。もう少し元気になってから、頑張ればいいわ」
「……うん。ありがとう。ばあば」
そうだね。
まずは体力作りからゆっくり始めないとね。
島の中をお散歩してみようかな?
「ルゥ。宴の準備ができたよ」
パパがハーピーちゃんを抱っこしながら呼びに来てくれたね。
ハーピー族の中ではハーピーちゃんの名前が決まったらしいけど、その名前で他種族が呼んだら従魔になっちゃうんだ。
ハーピー族以外には秘密……か。
きっとすごく強そうな名前なんだろうな。
『赤ちゃん』って呼んだら、マンドラゴラの赤ちゃんと同じ名前で紛らわしくなっちゃう……
だから『ハーピーちゃん』って呼ぶ事になったんだ。
ハーピーちゃんは昨日卵から出てきた時、味を覚える為に肉を食べたらしいけどしばらくは日本で言うお粥みたいな物を食べるんだって。
赤紫のキラキラの瞳がすごくかわいい。
紺色の髪もフサフサだ。
翼は真っ白。
ハーピー族は元々翼が白いけど、翼が黒い方がかっこいいらしい。
獲物をたくさん狩った証なんだって。
でも、一年に一度ある換羽で羽根が生え変わるから白く戻っちゃうんだ。
だから、また狩りをたくさんして羽根を血で染めるらしい。
ママの赤黒い翼も血の色なんだね……
ハーピーちゃんは一か月くらいで、歩いたり話したりするらしい。
あっという間に成長するんだね。
「パパ、ありがとう。ハーピーちゃん、おはよう。今日もかわいいね」
紺色の髪を撫でると気持ちよさそうにしている。
よかった。
食べ物だとは思われていないみたい。
「あううぅ……」
ハーピーちゃんがかわいい声を出す。
パパもすごく幸せそう。
「もう皆、来ているから行こうか?」
「うん。パパ」
今から『ルゥ』と『わたし』の誕生日の宴が始まる。




