永遠の命と、悲しい気持ち
「聖女様……グリフォン王は、浮遊島を守る為にずっと神経をすり減らしてきました。これからは穏やかに暮らしていけるでしょう」
ウェアウルフ王が悲しそうな顔をしながら話している。
「ウェアウルフ王はグリフォン王とずっと仲良しだったの?」
「初めて会った時は敵でした。ですが、魔力を持たずに王座を守る者同士意気投合しまして。それからは互いに行き来するようになりました」
そうだったんだね。
「ウェアウルフ王も寂しくなるね……」
一番寂しいのはウェアウルフ王だよね。
「聖女様……わたしは、これを別れだとは思いません。旅から帰ったグリフォン王と会う時には王としてではなく、友として世界の話を聞ける事が楽しみなのです」
ウェアウルフ王が優しく髪を撫でてくれる。
大きくて温かい手だ。
「聖女様、笑ってください。聖女様にはいつでも笑顔でいていただきたいのです」
「うん……ありがとう。ウェアウルフ王はいつから幸せの島に来てくれるのかな?」
泣いてばかりじゃダメだよね。
「三日後には王位を譲り、こちらに参ります」
三日後か……
「楽しみにしているね。従者のおじちゃんは王様になるんだね。もう会えないのかな?」
毎日会っていたから寂しいな。
「落ち着いたら必ず遊びに来ます。王国ではカカオや聖女様のお好きなフルーツをたくさん育てています。ハーピーの息子と、ぜひ遊びにいらしてください」
「ありがとう。絶対に遊びに行くからね」
「明日の聖女様の宴を楽しみにしています。それでは、我らもこれで失礼します」
「うん。また明日ね。レモラ族の皆もありがとう」
ウェアウルフ王が幸せの島に住むようになったら、レモラ族の皆とも会えないのかな。
じいじと二人きりになった砂浜は、広くて静かだ。
やっぱり、お別れは悲しいな。
永遠に近い命を与えられるって、別れを何度も経験するっていう事なんだろうな。
もちろん、たくさん出会いもあるんだろうけど。
「ルゥ? 大丈夫か?」
じいじが心配して抱きしめてくれる。
「うん。大丈夫だよ。少し寂しくなっちゃったの」
「ルゥは……ずっと幸せの島にいたいか?」
え?
じいじ?
「じいじも、どこかに行っちゃうの?」
なんとなく、じいじが遠くに行っちゃう感じがしていたんだ。
「……いや。じいじにとって、幸せの島は大切な場所だ。ただ、遠い未来に……もしかしたらな。その時はルゥも一緒に来るか?」
遠い未来?
じいじの声が悲しそうだ。
何かあったのかな?
「わたしは、ずっとじいじのそばにいたいよ? じいじの事が大好きだから……」
「そうか。ルゥ……いや……また今度話そう」
じいじ……?
大丈夫なのかな?
大変な事に巻き込まれたりしていないよね?
「姫様、大きい魚が獲れました! ハーピーのお祝いにどうぞ!」
魚族長が波打ち際で、わたしを呼んでいる。
「ルゥ、行っておいで」
抱きしめてくれていたじいじの顔を見ると……
いつも通りだね……
「うん……」
大丈夫……
だよね?
「姫様、この魚は滅多に現れない魚で……」
魚族長と波打ち際で話していると、いつの間にかベリアルがじいじの足元にいる?
あれ?
いつの間にか仲良しになったのかな?
「ハデ……だ……?」
……?
なんだろう?
よく聞こえないな?
ベリアルの言葉に、じいじが険しい顔になった?
何を話しているのかな?
「姫様? 気になりますか? ヒヨコは『派手好きだろう』と言っていました」
わたしの様子を見ていた魚族長が教えてくれたけど……
派手好き?
じいじが……?
シンプルな物が好きだと思うけどな?
好みを知って仲良くなろうとしているのかな?
ピーちゃんが帰って来るまでは、じいじとわたしとマンドラゴラ達とベリアルで暮らす事になるから頑張っているのかも……?




