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かわい過ぎるベリアル(2)

「うん。王様達がね、フワフワのツヤツヤなの」


 ニコニコのわたしに、ママが嬉しそうな顔になる。


「ルゥは大きくなっても相変わらずかわいいな」


 ママは卵を産んだ後も、わたしの事を変わらず大切にしてくれる。

 あ、そうだ。

 皆に訊きたい事があったんだ。


「ママとパパの部屋が大きくなっていたけど、ウェアウルフ王がやってくれたの? すごく素敵だね」


 いつの間にか、隣同士だったパパとママの部屋の間の壁がなくなって広いひとつの部屋になっていたんだよね。

 赤ちゃんのベットとか、かわいい物もたくさんあったし。

 かわい過ぎて、見ているだけで顔がにやけちゃうよ。


「聖女様が、お兄様の宴に行かれている間にグリフォン王達と島の整備をしておきました。気に入っていただけましたか?」


 ウェアウルフ王が撫でて欲しそうにしっぽを振っている。


「え? じゃあ、イフリート王が言っていた山ほどの仕事って、この事だったんだね。ウェアウルフ王、いつもありがとう。大好きだよ」


 ウェアウルフ王に抱きつくと、しっぽがちぎれそうなくらい揺れ始めた。

 そのしっぽにマンドラゴラの子供達が、じゃれついている。

 子供達はウェアウルフ王の事が大好きなんだね。

 

 あぁ……

 神様の事で落ち着かない日々を過ごしていたから、すごくのんびり感じる。


「ルゥ、元気そうね」


 人間の姿の、ばあばとおじいちゃんがリビングに入って来た。

 遊びに来てくれたんだね。

 ずっと手を繋いでいて幸せそうだ。


「うん。だいぶ楽になったよ」


 過去に何があったかを知ってから、おじいちゃんが嬉しそうだとわたしまで嬉しくなっちゃうよ。

 おじいちゃんは、ばあばを見てずっとニコニコしているね。


 ……ばあばの所にも来たのかな?

 今の神様が……


 あれは夢だったのかな?


 昨日の夜、いつも通りじいじと眠っていると夢を見た。

 と言うよりは……

 過去を見て来たんだ。


 わたしの隣には、ずっと天使がいた。

 ウリエルは大天使だったけど、この天使は……

 たぶん新しい神様だ。

 時間を移動できるらしいっておじいちゃんが教えてくれたけど……

 身体ごとじゃなくて魂だけ移動するのかな?

 赤ちゃんの時のわたしの髪を撫でたって言っていたらしいけど……

 身体ごと移動していたとしたら、じいじが気づいていただろうし。

 うーん……?

 

 自分の姿は見えないけど、白っぽい長い髪の女性になっていたみたい。

 ばあばが人化した姿?

 イナンナさんの姿なのかな?

 真っ白い天使の翼が生えていた。

 という事は、わたしの魂はイナンナさんと同じなのかな?

 ……でも、髪の色が少し違ったような?


 わたしの目の前には、イナンナさんらしい天使がいた。

 浮遊島で、天使の姿のおじいちゃんと幸せそうに笑っていた。

 そして、イナンナさんは大天使に捕らえられた。

 妊娠に気づいていたイナンナさんは、大天使に子だけは助けて欲しいと頼み込んでいた。

 でも、大天使は……

 お腹から赤ちゃんを取り出した。

 それから、創った身体に『記憶』を入れて異世界の集落へ……

 『力』をドラゴンの卵に入れて追放した。

 

 あれは……

 おじいちゃん?

 最後に見たのは浮遊島の白いバラの中で、独りで泣き崩れるおじいちゃんの姿だった。


 胸が痛かった。

 おじいちゃんは何千年もの間、ずっと苦しんでいたんだ。

 神様がわたしに見せてくれたあの過去の出来事をばあばも見たのかな?

 でも、それはわたしが口に出してはいけないんだ。

 ばあばとおじいちゃんは過去とは関係なく、今はホワイトドラゴンとブラックドラゴンとして恋人になっているんだから。

 ずっと心の中にしまっておこう。

 あの過去の幸せそうな二人の姿も……

 おじいちゃんの泣き崩れる姿も。


 誰にも言ってはいけないんだ。

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