表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

136/402

神と恋人(6)

今回は、神様が主役です。

 異世界から来た勇者はルゥとは幼なじみだったようだ。

 勇者に問われた。

 自分達をどうするつもりなのかと。

 その問いにわたしはこう答えた。

 

「……勇者よ。生き続けたいか? 今世こそ聖女を守り抜きたいか? これ以上は考えてはいけない。聖女のそばにいたいなら、口に出してもいけない。前世で無力な自分を悔いただろう? またそうなりたくなければ、ただ黙っている事だ」


 そうだ。

 勇者は悔いていた。

 前世でも今世でもルゥを守れなかった事を。

 そして、それはわたし自身も同じだった。


 三度もイナンナを助けられなかった。

 そのたびに自分の無力さを痛感させられた。

 何もできなかった自分自身に腹が立つ。

 今度こそルゥを守り抜くんだ。


 勇者はルゥの息子に憑依させられると思っていたようだが、それはベリアルがさせようとしていた事。

 わたしにはそんな必要はなかった。

 むしろルゥの子に他人を憑依させるなんて絶対にあり得ない。

 ルゥには……

 イナンナの子孫には幸せになってもらいたい。

 

 そんな時、聞いてしまった。

 割れた片方の浮遊島を大天使の奴らが隠していると。

 そして、ドラゴン王のイナンナを浮遊島の温泉に誘導した後『人間と魔族の世界』の浮遊島の温泉と異世界のイナンナの為に創り出した泉を入れ替えたという事も知った。

『人間と魔族の世界』の浮遊島も、異世界の泉もわたしが創った物だ。

 力のある大天使なら、短い時間であればわたしの残した神力を利用して入れ替える事も可能だろうが……

 まさかそこまでして、同時に両方の世界のイナンナの命を奪おうとするなんて。

 でも……

 そこまでしたのに命を奪わなかったのは、なぜなんだ?

 それ以前にも数回、異世界の人間のイナンナをあの泉に誘導し魔素を浴びせていた事も分かった。

 一度で命を奪う事もできたはずなのに……

 苦しめて殺そうとしているのか?

 それとも、殺せない理由でもあったのか?


 いや、そんな事はもうどうでもいい。

 大天使のクズどもめ!

 もう赦せない!


 わたしは、ルゥに永遠の命を授ける為に一口食べれば一歳年をとる実を渡すよう勇者に頼んだ。

 ルゥはドラゴン王のイナンナに永遠の命を与えて欲しいと頼んだが、前ヴォジャノーイ王に先延ばしにされてしまったからだ。

 子を産む時に苦労しないように、身体を成長させたいからと……

 永遠の命を与えられると成長が止まってしまうから。

 大切にしてもらえるのは嬉しいが、大量の魔素を体内に注入されてしまえば浄化の力のあるルゥでも生きてはいられない。

 急がなくては……

 でも、ルゥや魔族達は勇者に渡した実を怪しがり食べる事はなかった。

 

 しまった……

 ブラックドラゴンの姿で渡せばよかった。

 だが、今になって同じ実をブラックドラゴンの姿で渡したら怪しまれる。

 どうしたらいいんだ?


 そんな時、わたしに会う為に勇者が天界に来ようとしていた。

 天界には()()()天族しか入れない決まりがあるが……

 人間や魔族でも身分の高い天族の助けがあれば入る事ができる。

 勇者は聖獣シームルグの姿だがそれはベリアルが創った身体で、魂は異世界の人間……

 だから勝手に天界に入る事はできない。


 わたしはその時、偶然『人間と魔族の世界』にいた。

 勇者は前の世界の家族に会う為に帰りたいと言った。

 だが……

 わたしは、この『人間と魔族の世界』と『天界』と『異世界』との時間のズレが複雑に絡み合っている事を知っている。

 勇者はルゥがこの世界に来てからも、ベリアルの所に何度か出入りしていた。

 もう、異世界ではかなりの年月が経っているかもしれない。


 でも……

 大切な人に会いたい……か。


「世界の時間にはズレがある。もう大切な家族は、いないかもしれないが……それでも行くのか?」


「ボク、ホントノ、カゾク、アイタイ。アイシテルカラ」


 愛してる……か。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ