表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

134/402

神と恋人(4)

今回は、神様が主役です。

 ドラゴンになったイナンナには天族だった頃の記憶はなかったが、あの頃のように花や木に永遠の命を与えては静かに微笑んでいた。


 愚かな大天使どもがイナンナを攻撃してくる事もあったが、ブラックドラゴンの姿になって何度も助けに行った。

 わたしが神だと知られないように、天族の匂いや気配を消して……

 そんな時、大天使が異世界の人間に魔素を送ろうとしている事に気づいた。

 まさか……

 イナンナの片方は異世界に……?

 だから、魔族と共存する人間の国を捜しても見つからなかったのか。


 わたしは慌てて、異世界にいるイナンナの様子を見に行った。 

 

 そこには……

 イナンナ……

 

 あの頃より少し小さいが、白い髪に金の瞳……

 イナンナだ!


 でも……

 なぜ泣いているんだ?

 辛い暮らしをしているのか?


 あれは……?

 餓死しそうな人々?

 かわいそうに……

 この人間達を助けたいんだね。


 わたしは姿を隠したまま、たくさんの木の実がついた木を植えてあげた。

 その実には、体力を回復させる効能があった。

 

 人間達はみるみる元気になっていった。


 イナンナ……

 やっと見つけた。

 このまま向こうの世界に連れて行きたいけど……

 白いバラが咲き誇る浮遊島は、今はどうなっているんだろう。

 卵からホワイトドラゴンが孵ってからは行っていなかったからな。

 確か最後に行ったあの時、魔族が島の所有権を巡り争っていた。


 イナンナを隠せる場所はあの島しかない。

 一旦戻って島を見て来よう。


 島を見に行くと、もうそこには魔族が暮らしていた。

 どうしたものか……


 もう一度異世界のイナンナの様子を見に行くと、その場所は魔素で満ちていた。

 大天使め!

 卑劣な事を!


 一部の人間は、もがき苦しみ息絶えたようだ。

 わたしが与えた木の実を食べた者達は生き延びたか?

 よかった……

 イナンナも無事だ。


 でも、あまりに魔素が濃過ぎる。

 わたしが、ずっとこの場に留まり浄化するわけにもいかないし……


 そうだ。

 この地に、とめどなく湧き出る泉を創ろう。

 その湯気に魔素を払う効能を持たせれば、これから先イナンナが魔素で攻撃されても大丈夫だ。


「人間の娘よ。この地に神の泉を与えよう。この泉は穢れを落とす。……いつか迎えに来るその日まで待っているのだぞ?」

 

 その泉から湧き出る湯からは、絶え間なく湯気が出る。

 その湯気の力で魔素は薄れていく事だろう。


 イナンナ……

 わたしのイナンナ……

 すぐに戻って来るよ。

 すぐに迎えに来るから。

 島をふたつに割って、そこに隠して住まわせよう。

 今、島を使っている魔族が住んでいない辺りを割ればなんとかなるだろう。


 急ごう。

 待っていて、イナンナ……

 今度こそ幸せにするよ……


 でも……

 ダメだった。


 島を割ってから一度天界に戻り、すぐに異世界に行ったが……

 もうイナンナは死んでいた……

 まさか『天界』と『異世界』の時間に、こんなにズレがあるなんて……

 

 そういえばドワーフも会うたびに久しぶりだなって……

 でも『異世界』と『人間と魔族の世界』を行き来した時には時間のズレは感じなかった。

『天界』と『人間と魔族の世界』を行き来する時の時間のズレよりも、『天界』と『異世界』を行き来する方がズレが大きそうだ。


 ……今さら何を考えても仕方がない。

 もうイナンナは死んでしまったんだ。

 まただ。

 またわたしは、イナンナを助けられなかった。


 そういえば、先代の神が言っていたな。

『人間と魔族の世界』の聖女の身体に、イナンナの魂が入り込むと……


 だが……

 もうイナンナは死んでしまったんだ……


 わたしが助けられなかったからだ。

 先代の神が言った未来は……

 もう来ないのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ