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神と恋人(2)

今回は、神様が主役です。

 何が起こっているのか、わたしには何も分からなかった。

 調べてみると、どうやら次期神の候補にわたしが選ばれたらしかった。

 まさか、わたしのせいでイナンナが……


 地下牢にいるイナンナに会いに行くと、冷たい床に横たわりもう意識がない状態だった。

 何があったんだ?

 イナンナの美しい金の瞳は、もう二度と開く事はなかった。


 わたしは神に会いに行った。


 イナンナに酷い事をしたのは大天使らしかった。

 でも、もう意識のないイナンナには証言する事はできなかった。


 神は言った。


「イナンナは次期神候補のお前を誘惑した罪で、心と神力を分けて追放する事にする。そしてイナンナの心は天族ではなくなり人間になる」


 誘惑した?

 イナンナが……?

 何を言っているんだ?

 それに、心と神力を分けて人間になる?

 今までに聞いた事のないやり方だ。


「神よ! わたし達は互いに愛し合っています。イナンナを追放するならわたしも共に……」


「今、お前が下手に動けばイナンナは殺される。分かるだろう? わたしは神だ。だがいつも家臣に、おびやかされている。常に薄氷の上にいるのだ」


 神よ……

 何を言っているんだ。


「イナンナを守りたければ神になるしかない。権力を持ち、守るしか手がないのだ」


「神になったとしても、守れる保証はありません。わたしも共に追放された方が守り抜けます」


「奴らがそれを許すと思うか? お前が神にならなかった瞬間にイナンナもお前も殺されるだろう」


「では……奴らを殺します。イナンナは……もう意識が……」


「まだ眠っているだけだ。今のところはな」


「わたしに……どうしろと?」


 イナンナのいない世界に生きる意味はない。


「時を待て。いや、作るのだ」


 時を作る?


「数千年後、人間に聖女が誕生する。その聖女に、人間の世界に追放されたイナンナの魂を入れるのだ」

 

 人間の聖女に?

 イナンナの魂を?


「その聖女は生後すぐ息絶える。その時に魂を入れ込むのだ」


 神は未来や過去を見る力を持っている。

 間違いはないだろうが……

 でも、過去や未来を見るのは世界を変えてしまう可能性があるから禁止されているはず。

 だから、わたしも時間を戻す力があっても使わない。

 小さな事を、ひとつでも変えてしまえば未来が大きく変わってしまうから……

 それに時を戻すには大量の神力が必要だ。

 それこそ命がけだ。

 神は未来を見たのか?

 数千年後?

 人間になったイナンナには、それ程の時は生きられない。


「イナンナは……その時にはもう……」


「イナンナの魂はお前に巡り会うまで『永遠に生き続ける』だろう。イナンナの魂は聖女の亡骸に入り、魔族の愛に包まれ幸せに育つ。先程、赤ん坊のイナンナの髪を撫でて来た……」


 え?

 赤ん坊のイナンナの髪を撫でて来た?

 未来を見るだけではなくて、未来の世界に入り込めるのか?

 もし、わたしが時を戻せばイナンナは死なずにすむかもしれない。

 やってみるか?

 でも、もっと悲惨な未来が訪れるかもしれない。


「魔族に育てられたイナンナは、それからどうなったのですか?」


 魔族が人間の赤ん坊を食べないはずがない。

 少し大きくなったら食べるつもりなのかもしれない。


「美しく育ったイナンナはお前に出会い、その後この天界は大きく変わる事になる」


「天界が変わる? それはどう変わるのですか?」


「今はこれ以上は話せない。だが、イナンナの存在を疎ましく考える天族がふたつに分かれたイナンナを攻撃し続ける。お前はそれを誰にも気づかれぬよう阻止するのだ」


 イナンナを攻撃し続ける?

 なんて愚かな……


「今はまだ、愚かな大天使どもを殺める時ではない。分かるか? 時を待つのだ。イナンナの魂は複雑に絡み合う時の中で、必ずお前に会いに来るだろう」


 必ずわたしに会いに来る……?

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