神と恋人(1)
今回は、神様が主役です。
あれは遥か昔___
まだ、わたしとイナンナが天界で暮らしていた頃。
わたしはまだ神ではなく、イナンナも白い髪が美しい天族だった。
わたしはイナンナと永遠の愛を誓った。
天界は悪意が渦巻く場所だ。
常に自分が優位に立つ為に、他人の粗探しをする連中ばかり。
でもイナンナは違った。
花や木に永遠の命を与えては静かに微笑んでいた。
美しいイナンナの金の瞳に見つめられると、わたしは胸が高鳴った。
わたしはイナンナと二人きりになれる場所を創る事にした。
人間と魔族が住む世界に……
二人で過ごすのにちょうどいい島を創り出して浮遊の力で浮かばせた。
そしてイナンナの髪と同じ、美しいたくさんの白いバラを植えた。
天界の建物は見ただけで不快になるから、人間の国の建物に似せた城を建てた。
白亜の城……
イナンナは喜んでくれるだろうか。
島が完成すると、わたしはイナンナを浮遊島に連れて行った。
「イナンナ? 絶対に目を開けたらダメだよ?」
「今日はどんな面白い事があるの? ふふ」
わたしの手で目隠しをされたイナンナが笑っている。
「さあ、目を開けて」
「うわあぁ! 綺麗……」
目を開けたイナンナが金の瞳をキラキラ輝かせている。
よかった。
喜んでくれた。
ドワーフにお礼を言わないとな。
「すごく素敵よ。あなたが創ったの?」
「さすがに全ては無理だよ。ドワーフに知り合いがいてね。手伝ってもらったんだ。あ、でもバラはわたしが植えたんだよ?」
イナンナがわたしを抱きしめてくれる。
「ありがとう。わたし、幸せよ?」
あぁ……
頑張ってよかった。
イナンナの為だったら、わたしは何だってできる。
「イナンナは白いバラの花言葉を知っている?」
「え? 花言葉って何?」
「人間は花に意味を持たせるんだ。白いバラの花言葉は相思相愛なんだよ」
イナンナの前にひざまずき一輪の白いバラを差し出す。
「一輪の白いバラは『一目惚れ』。九十九本の白いバラは『永遠の愛』」
イナンナが恥ずかしそうに頬を赤らめている。
「九十九本のバラは花束にするより、これからもずっと一緒に見られるように植えてみたんだ」
「……ありがとう。嬉しいわ」
イナンナが一輪の白いバラを受け取ってくれる。
「わたしも、受け取ってもらえて嬉しいよ」
よかった。
少し恥ずかしかったけど、イナンナが喜んでくれた。
「わたしの力でバラに永遠の命を与えてもいいかしら?」
「もちろんだよ。わたし達の愛も永遠に続いていくようで嬉しいよ」
優しくイナンナを抱きしめると、温かくて柔らかくて……
大好きだ……
これからも、ずっと一緒にいよう。
わたし達の愛は永遠だ……
それから、わたし達は毎日島に行き幸せな時間を過ごした。
島にはドワーフと一緒に作った小さい火山と温泉がある。
夜になると火山が赤く光って綺麗だ。
わたし達だけの島。
わたし達だけの時間。
いつまでもこの幸せが続いていくと思っていた。
そんなある日、突然イナンナがいなくなった。
そして、イナンナが天界から追放されると知ったんだ。




