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今、できる事~前編~

 全魔族王会議が終わり、王様達がお見舞いに来てくれた。

 ベリス王とリヴァイアサン王は初めて島に来たのかな?

 そういえばリヴァイアサン王は陸に上がれるんだね。

 王様だからかな?


 ベットに身体を起こしているわたしに、グリフォン王がひざまずく。


「聖女様……わたしは聖女様が苦しんでいるというのに何もできずに……」


 グリフォン王……

 違うよ。


「グリフォン王が……謝る事じゃないよ? 迷惑かけてごめんね……」


 ダメだ。

 上手く話せない。

 肺が苦しい。

 元気な姿を見せたいのに。


「聖女様……チョコクッキーを持って来ようかと思ったのですが……今は身体に優しい物がよいかと。異世界ではコメを食べると聞き、持って来ました。オカユという物をオークに作ってもらいましょう」


 ウェアウルフ王が悲しそうな顔をしている。


 こんなんじゃダメだ。

 今は寝込んでいる時じゃない。

 皆に、こんなに心配をかけちゃったよ。


 わたしは聖女だ。

 浄化の力を持っている。

 わたしならやれる。

 やらないといけないんだ。

 自分の怪我や病気は治せなくても、まだ身体に残っている魔素なら浄化できるはず。


 目を閉じて集中する。

 想像するんだ。

 元気になったわたしが皆と楽しく笑っている姿を。

 こんなに大切にされているんだ。

 これ以上、皆に辛そうな顔をさせたらダメだ。


 もう、ひとりぼっちの時のわたしじゃないんだ。

 今のわたしには……

 こんなにたくさんの種族を超えた大切な存在がいるんだ。


 あれ……?

 なんだろう?

 今までとは違う……?

 心が温かい。


 それに……

 呼吸が少しだけ楽になった。


 身体が成長したからかな?

 光の力が増している気がする。

 でも、魔素が消えただけで魔素で傷ついた内臓は治っていないみたい。

 完治するまでは時間がかかりそうだ。


「ルゥ……? 治癒の力を使ったのか?」


 じいじが心配そうにしている。


「身体の中の魔素だけ浄化してみたの。でも……内臓は治らないね……」


「まだ苦しいですか?」


 心配して泣きそうなウェアウルフ王の頭に手を伸ばす。


 いつもよりフワフワじゃないな……

 わたしの為に色々動いてくれていたのかな。


「皆には……笑っていて欲しいの。わたしの為に辛そうな顔を……しないで欲しいの」


 だから笑って?

 ウェアウルフ王が涙を流しながら微笑んでくれる。


「抱きしめても……いい?」 


 ウェアウルフ王を抱きしめたいな。

 いっぱいありがとうって言いたいけど、気を遣わせちゃいそうだ……


「い……今はあの、あまり綺麗ではなくて……」


 そんなの気にしないよ?


 床にひざまずいているウェアウルフ王の首に腕をまわす。

 わたしのほっぺたとウェアウルフ王のほっぺたをくっつける。


「いつもありがとう。大好きだよ」


「聖女様……わたしも大好きです……」


 その後グリフォン王にもほっぺたをくっつけてお礼をしたら、じいじにもう疲れただろうってベットに横にならされた。

 確かに疲れたな……


 その後、横になったまま王様達の話を聞いた。


 魔族達は天使達との全面戦争を望んでいるらしい。

 元々、天使達と魔族達は仲が悪いみたい。

 今回わたしが攻撃された事で我慢の限界がきたらしい。


 でも……

 そうなったら神様は、どうなるのかな?

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