皆が幸せになる方法
ママが卵を産んだ翌日___
魔族の全種族王が魔王城に集まった。
わたしが天族に殺されそうになった事を話し合うんだって……
わたしが意識を失っている間にウェアウルフ王とグリフォン王とヴォジャノーイ王が天使達を滅ぼすって大騒ぎになったらしい。
よく分からないけど、魔族から天使に陳情書を送る為に全魔族王会議が開かれるらしい。
一応、聖女殺害未遂だから……
まさか、天使と魔族で戦になったりしないよね?
神様は大丈夫かな……
もし、お父さん達の考えが合っていれば、前世のお父さんと月海は神様の子孫になる。
この世界のルゥの身体だから完全な子孫じゃないけど。
ご先祖様……
なんだよね?
しかも、ずっと陰ながら助けてくれていたんだ。
それなのに、わたしは神様の事を疑っていた。
申し訳ないな。
一か月経てば会えるのかな?
それに、本当に神様はブラックドラゴンのおじちゃんなのかな?
これからどうなるんだろう……
お父さんが魔王だから、天使と魔族の全面戦争にはならないよね?
「はぁ……」
ベットの上でため息をつく。
まだ身体がだるくて、ずっとベットで過ごしているんだ。
「ルゥ? 大丈夫か?」
椅子に座って書類に目を通していたじいじが、心配してくれる。
「うん……神様はずっとわたしを守ってくれていたのに、疑っちゃって……申し訳なかったなって思って。じいじ? わたしのせいで戦にならないよね?」
戦だけは絶対にダメだよ。
「……どうだろうな? じいじも天族は絶対に赦せない。もし戦になれば、じいじも参戦するだろう」
そんな……
ダメだよ。
絶対ダメだよ!
涙が溢れてくる。
「嫌だよ……じいじも、魔族の皆も……わたしのせいで傷ついたり……もし死んじゃったら……」
わたしのせいだ。
わたしが一か月待たなかったから。
わたしのせいで大切な皆が死んじゃうの?
前世のお母さんは、わたしを産んだせいで死んで……
おばあちゃんの事も守りきれなかった。
これ以上わたしのせいで誰かが死ぬのは絶対に嫌だよ。
「ルゥ……泣いたらダメだ。今は身体が強い魔素にやられている。体力を使わないようにしないとな」
泣いているわたしを、じいじが抱きしめてくれる。
わたしの身体が辛いのは年をとる実を食べていきなり成長したのもあるけど、一番の原因はグリフォン王国で強い魔素にやられたかららしい。
浮遊島自体には魔素はなかった。
でも、あの時わたしの身体に大量の魔素が注ぎ込まれた。
ベリアルの話だと、魔素を自由に操れる天使がいるらしい。
わたしは普段結界の中から出ないから、結界のない浮遊島で殺そうとしたんだろう。
ブラックドラゴンのおじちゃんは、わたしを天使の攻撃から守る為に結界を張ってくれていたんだ。
もちろん、天使達に会話を盗み聞きされない為っていうのもあるだろうけど……
ばあばの様子がおかしかったのも、記憶が戻ったんじゃなくて天使に操られていたからだったみたい。
ばあばの昔の記憶はもう戻る事はないらしい。
ドラゴンの身体になった時に完全に記憶が切り離されたんだって。
天使は残酷だ。
ベリアルが天使を嫌うのも分かる。
自分の利益の為に、恋人同士の神様とばあばを引き裂いたんだ。
神様は、ただ黙ってそれを受け入れたのかな?
でも、ずっとばあばを守っていたんだよね?
何があったんだろう。
神様は今どうしているのかな?
ばあばは大丈夫かな?
神様が昔の恋人で、ばあば自身も天使だって知って……
辛いのかな?
それとも、自分を追放した天使が憎いのかな?
「ルゥ……? 何か食べないと。食べられそうか? キッチンに食べ物を……」
じいじがキッチンに行こうと、座っていたベットから立ち上がる。
ダメ……
行っちゃダメ……
「行かないで……じいじ。ずっとそばにいて……」
涙が止まらない。
わたし、どうしちゃったのかな?
不安で寂しくて押し潰されそうだ……
「ルゥ、じいじはいつもルゥのそばにいる。少し眠ろう」
じいじがベットに座って髪を撫でてくれる。
ひんやりするけど温かい手。
じいじの優しい瞳に心が落ち着く。
ばあばと神様はこれからどうなるのかな……?
皆が幸せになる方法が見つかればいいけど……




