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何が真実なの……?

「聖女様……ウェアウルフ族に、わたしよりも長く生きる者がいます。大昔の聖女の光を見た者です。その者なら何か分かるかもしれません」


 魚族長はすごく長く生きているのに、もっと長く生きているの?

 ちょうど、今日ウェアウルフ王国に行くから話を訊いてみたいけど……

 ばあばの前で訊いても平気なのかな?


「あのね? 皆にお願いがあるの。ばあばには、まだこの話は聞かせたくないの。ブラックドラゴンのおじちゃんの事もだよ? ちゃんと全部分かるまで黙っていてくれないかな? ばあばを傷つけたくないの」 


「月海の言う通りだね。ドラゴン王は何も知らないみたいだし……それに赤ん坊のドラゴン王が光の中から現れたって……天使のウリエルが現れた時と同じだよ? もしかしたらドラゴン王は神の力で産まれた……とか?」


 お父さん……?

 ばあばが自称神様の力で産まれたって……?

 

「ばあばが言っていたよね? 神様の世界から追放された堕天使が何人かいるって……もしかして、ばあばも追放されたのかな? でもばあばは悪い事ができるような感じじゃないよね……」


「ドラゴン王は堕天使ではないだろう。天族特有の匂いがしないからな」


 じいじ……?

 魔族は天使の匂いが分かるのかな?

 そういえば、ベリアルに会って来たピーちゃんからも天使の匂いがするって言っていたよね。

 でも自称神様に会って来た時は匂いの事を言っていなかった。


「もし、ばあばと少女が関係あるとしたらどんな関係なんだろう?」


 全然分からないよ。


「ルゥのいた世界の少女の事は分からないが、ブラックドラゴンの張った結界は恐ろしいほど完璧だ。他にこれほどの結界を張れる者はいないだろう。ブラックドラゴンは……天族かもしれないな。だが、天族の匂いがしないのはどうしてなのか……?」 


 じいじの言う通りかもしれない。

 ブラックドラゴンのおじちゃんは、ドラゴンにしてもすご過ぎる。

 おじちゃんは自称神様に会いに行って、この世界で何かさせられているのかな?


「天族がドラゴンの姿で、どうして月海を守ってくれるんだろう? 子を産ませる為かと思っていたけど、もしかしたら……ただ月海を大切に想っているからなのかも……だとしたら陽太君は集落に帰れるんじゃないかな?」


 お父さんが真剣に考えながら話しているけど……

 確かにブラックドラゴンのおじちゃんは、わたしにいつもちょっかいを出してくるけどすごく優しい。

 初めから全部間違えていたのかも……  

 自称神様は実は良い天使だった?


「ルーチャン、ゴメン。ボク、ジイチャン、イキテル、ウチニ、カエリタイ。カミサマ、アイニ、イクヨ」


 え?

 ピーちゃん!?

 まだ自称神様が本当に良い天使か分からないのに……

 飛んで行っちゃった……


「ダメだよ! ピーちゃん!」


 殺されちゃうかも……

 どうしよう。


「じいじ! 自称神様の所に行かなくちゃ! どうしたらいい?」


 早く行かないと。


「ルゥ……魔族には行けないのだ。この前はブレスレットがあったから行けたのだ」


 そんな……

 ピーちゃんは聖獣のシームルグだから行けるんだ……

 じゃあ……


「わたしは? 聖女だから行けないかな?」

 

 光の力もあるし。

 行けるんじゃないかな?

 あれ?

 でも、この前……

 ピーちゃんもブレスレットをつけられていたよね?

 ……?

 ピーちゃんはいつもどうやって自称神様に会いに行っているの?


「ルゥが行けたとしても今のわたしには、その行き方すら分からない……」


 ……?

 じいじ?

 様子がおかしい……?

 わたしじゃ、ピーちゃんを助けられないのかな?

 前世では、いつも優しくしてもらって今世では辛い思いをし続けてきたのに……

 自称神様に酷い目に遭わされていないよね?

 生きて帰って来て、ピーちゃん……


「タダイマ!」


 え?

 ピーちゃん!?

 まだ二分も経っていないよ?


「ピーちゃん! 怪我していない? 大丈夫?」


 ピーちゃんがわたしの腕に飛び込んで来た。

 

「ウン。ダイジョウブ。アノネ、カミサマニ、オネガイシタ。カエシテ、クレルッテ」


「ピーちゃん? それ本当?」


「ウン。オワカレ、シニキタ。カミサマ、イイテンシ」


 神様が良い天使?

 確かに、話を聞く限り良い天使だけど……

 ピーちゃんをわたしの子供に憑依させて何か企んでいるんじゃなかったの?

 もしかして、ただの考え過ぎだった?


「トリノ、スガタ、ダケド、ボク、ジイチャント、オカアサン、アッテ、クルヨ」


 ピーちゃん……

 もう二度と会えないんだね。


「ピーちゃん……寂しいけど、幸せに暮らしてね。今までありがとう」


 腕にいるピーちゃんを優しく撫でる。


「陽太君……おじさん達にたくさん甘えるんだよ……よかったね」


 お父さん……

 泣いている。

 自分の事みたいに嬉しいんだね……

 でも……

 おじいちゃんとおばちゃんがいなくなった後は……

 辛過ぎるよ。

 ずっとひとりぼっちだよ……  


「ルーチャン、オジチャン、ミンナ、イママデアリガト」


 ピーちゃんが光り始めた。

 これでお別れなの?

 

「ピーちゃん……陽太お兄ちゃん! 集落で幸せに暮らしてね」


「ルーチャ……ボ……モ……」


 姿が消えかかるピーちゃんが何か言ったけどよく聞こえなかった。 

 魔族の皆が一瞬動揺した……?

 

 そして、ピーちゃんは集落に戻って行った。


 なんだか変な感じだ。

 あっけないというか……

 ピーちゃんは、わたしの子に憑依させられるとばかり思っていたのに。

 そうしたかったのはベリアルだけだったのかな?

 自称神様は、ただの良い天使だった?


 でも、まだ解決していない事はたくさんある。

 ばあばの事。

 ブラックドラゴンのおじちゃんの事。

 集落の事。

 浮遊島の事。

 他にもたくさん……

 

 ピーちゃんを、おじいちゃんが生きているうちに帰らせたくて急いでいたけど……

 その必要もなくなったし、ゆっくり慎重に解決していこう。


 ……あれ?

 もしかして、ピーちゃんを集落に帰したのは急がせない為?

 ブラックドラゴンのおじちゃんが一か月待たせようとした事に関係しているのかな?

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