違和感~前編~
朝ごはんを食べていると、ウェアウルフ王とグリフォン王が遊びに来てくれた。
いつもより早く来てくれてよかった。
今日はこれからお出かけだから。
「ウェアウルフ王、グリフォン王。昨日はありがとう。おかげで花も野菜も元気だよ?」
「本当ならば、付いて行きたかったのですが……お役に立てて嬉しいです」
グリフォン王が嬉しそうにしている。
あれ?
ウェアウルフ王?
元気がない?
「ウェアウルフ王? どうかした? どこか痛い?」
「あ……いえ、大丈夫です」
……?
大丈夫じゃなさそうだよ?
「聖女様……実は……」
「ダメだ」
ウェアウルフ王の従者が話そうとして王様に止められたね。
何かあったんだ。
言いにくい事なのかな?
「ウェアウルフ王? 教えて欲しいな……」
いつも助けてもらってばかりだから、困っているなら力になりたいよ。
「聖女様……それが、恥ずかしながら腰痛が……」
「腰が痛いの? 横になって?」
横になったウェアウルフ王に治癒の力を使う。
「すごい。痛くない。治ったのか?」
よかった。
少しでも恩返しできたかな?
「もしかして、昨日無理をさせちゃったかな? ごめんね」
山ほどの仕事をさせられたって……
何をさせられたんだろう?
「あぁ、違います。あのくらいは何でもありません。この腰痛は今朝、国を出る前に子供達がじゃれついてきまして」
子供達?
「ウェアウルフ王は子供がいたの!?」
「え? わたしの子ではなく国の子供達です。レモラ族の待つ波打ち際で、毎朝子供達が待っているのです」
「王は民に、特に子供達から人気があるのです。毎朝もみくちゃにされているのです」
「こら、恥ずかしいだろう」
従者との、この姿を見れば分かるよ。
ウェアウルフ王は優しい王様なんだね。
治癒の力を使われて少し眠そうだ。
わたしに治癒の力を使われると皆寝ちゃうのに起きていられるなんて、さすが種族王だよ。
「あ、そうだ。王様達にお願いがあるんだけど……今度遊びに行ってもいいかな?」
「ええ!? 聖女様がですか!? なんなら今日、これからでも!」
グリフォン王……
嬉しそうだ。
迷惑じゃなくてよかった。
「いつでも大歓迎です! 温泉も作っておきました!」
え?
ウェアウルフ王は温泉を作ったの?
「この前ドワーフに会ったのですが、すっかり意気投合しまして。小さい火山と温泉を一緒に作ってもらいました」
手先が器用同士、話が合うんだろうな……
「グリフォン王国にも温泉を作ってもらいました。おかげで皆ツヤツヤです」
グリフォン王が嬉しそうに話している。
最近のグリフォン王がツヤツヤで最高の触り心地なのは温泉のおかげなんだね。
「「聖女様の大好きなモフモフもいます!」」
おお……
グリフォン王とウェアウルフ王の声が揃ったよ。
ん?
モフモフ?
「グリフォン王の所にも、あれがいるのか?」
「ああ。今は冬の地域に島があるからな」
王様達二人で話しているけど……
確かグリフォン王の国は空に浮かんでいて、少しずつ移動するって言っていたよね。
『あれ』って何だろう?
「聖女様はジャックフロストを見た事がありますか? あれは聖女様好みのモフモフ……」
「ええ!?」
ウェアウルフ王の話の途中だけど大声を出しちゃった……
今ジャックフロストって言った!?
しかも温泉!?
「あのね! 今わたし、ジャックフロストを捜しているの!」
すごい偶然だ。
……本当に偶然だよね?
上手くいき過ぎているようにも思えるけど……
誰かの敷いたレールの上を歩かされているような……
考え過ぎかな?
「え……? ジャックフロストですか? それならどこにいるか分かりますが……」
え?
ウェアウルフ王には分かるの?
「ウェアウルフ王? 全部の子がどこにいるか分かるの?」
ドラゴン王の、ばあばですら大量過ぎて把握できないって言っていたのに……
ウェアウルフ王はすごいよ!




