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一か月

 さっき目覚めたばかりなのに、また少し眠ってしまった……

 疲れているのかな?


 朝食まではまだ時間があるから、じいじと一緒に魔王城のお父さんに会いに行く事になった。

 手を繋いで魔王城に続く橋を歩いていると、ブラックドラゴンのおじちゃんが張ってくれた結界のおかげで日差しが痛くない事に気づく。

 もう日焼け止めもいらないし、魔力や神力で島を覗かれたり盗み聞きをされる事もない。

 これからは、自称神様の話をしても聞かれる事がないから安心だね。

 それに、敵意がある存在が島に入れなくなった。

 と言っても、敵意を隠す事ができるベリス王みたいな魔族なら入れちゃうらしいんだよね。

 

 ブラックドラゴンのおじちゃんはどうして一か月、自称神様の事を調べるなって言ったんだろう?

 ドラゴン王のばあばに訊けば分かるかな?


 魔王城の執務室に入ると、お父さんとばあばとママ、ピーちゃんもいる。

 マンドラゴラの子供達は執務室の小さいベットで、ベリアルと眠っている。

 ベリアル……

 かわいい寝顔だな。

 とても悪い事をしていたとは思えない。

 フワフワのヒヨコ……

 フワフワの……

 ぐふふ……

 ……?

 ん?

 ぐふふ?

 

「ルーチャン、ハナシ、キイタ。ヒトツキ、マツノ?」


 ピーちゃんは早く帰りたいよね。

 本当に一か月待たないといけないのかな?

 その間に向こうの世界のおじいちゃんが亡くなったら……

 もう亡くなっている可能性もあるし……

 一日でも早く帰してあげないと。


「わたしもピーちゃんが集落に帰る方法を見つけたいよ……ばあば、おじちゃんはどうして待てって言ったんだろう?」


「あの子は、なかなかドラゴンの島に帰らないのよ。でも何か知っているのは確かね。ルゥ? 堕天使はベリアルだけじゃないのよ? あの子には堕天使の友がいるみたいなの」


 そういえば、おじちゃんは放浪癖があるって言っていたよね。

 堕天使の友達か……


「おじちゃんは、ベリアルがいたみたいな空間に入れるの?」


 じいじは苦しそうだったけど。


「ベリアルは神に閉じ込められていたのね。シームルグは聖獣だから時々会いに行っていたんでしょう? ほとんどの堕天使は天族の世界から、この世界に追放されているのよ?」


 そうなんだ。

 神様に追放された堕天使なら色々教えてくれそうだけど……

 

「ダテンシニ、アエナイカナ?」


「そうね……会えない事もないけど、堕天使は気難しいっていうか……シームルグなら分かるでしょ?」


「ウン……ダテンシ、コワイヨ」


 ピーちゃんは、それでも早く帰る方法を知りたいんだね。


「ばあばは一か月待った方がいいと思う?」


「あの子がそう言うなら理由があるはずよ?」


 一か月は長いな……


「その間に何かできる事はないかな?」


 少しでも前に進んでいたい。


「そうね……まずはジャックフロストを捜してみたらどうかしら? たくさんいる中からルゥが会った子達を捜すの。もちろん、旅行をしているっていう名目でね」


 やっぱり、そこからだよね?


「ばあば、じいじ、ママ? どこかに、前の世界の人間が転移させられて生きている事はないかな?」


 もしかしたら、どこかで生きていて何か知っているかも。


「難しいんじゃないかしら? ウリエルが何人か転移させたみたいだけど、魔素が強い場所なら長くは生きられないから。でも、もしかしたらルゥみたいに生きている人間もいるかもね」


 ドラゴン王のばあばにも分からないなら、いないのかな?


「そうか……そうだよね」


「月海、この前の里芋の煮っころがしに使った醤油……あれオークが作ったの?」


 お父さん?

 あの時の里芋の煮っころがし?


「あれは、じいじが見つけてくれたの。この世界にもお刺身を食べている人間がいるらしいよ?」


 じいじに醤油の説明をしたら持って来てくれたんだよね。


「……ヴォジャノーイ? 前の世界でも生魚に醤油をかけて食べる人間は珍しかったんだ。もしかしたら……まずはその国に行ってみたらどうかな?」


「その国は確か今は雪の時期のはず。ルゥ、行ってみるか?」


 じいじが連れて行ってくれるんだね。

 でも、おじちゃんは一か月待てと言ったけど……


「これは、ただの旅行だから難しく考える事はないよ?」


 お父さんも、旅行としてなら平気だと思うんだね。

 ただの旅行か……


「ただ待っているなんて、できないだろう?」


 じいじが髪を撫でてくれる。


 そうだよね。

 とりあえず今できる事をしてみよう。

 何もしないでいたら、ピーちゃんが一人で動いちゃうかもしれないし。


 確かに生魚に醤油なんて珍しいよね。

 もしかしたら群馬のあの集落で行方不明になったり、亡くなったりした人間が転移して来て醤油を作ったのかも。


「じいじ、その人間の国に連れて行ってくれる?」


「もちろんだ。朝食後、すぐに出かけよう」


 こうしてわたし達は、人間の国に行く事になった。

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