大好きなじいじ~前編~
星空の下、しばらく橋の上でじいじと抱きしめ合っていた。
それからゆっくり歩き始めた。
繋いだ手はひんやりしているけど、心は温かくて……
もっとこうしていたくて、ゆっくり歩いてしまう。
「疲れたか?」
じいじに心配させちゃった。
「違うの……あの……もっと、じいじと手を繋いで歩いていたくて……」
うわぁ……
恥ずかしい。
耳まで熱いよ。
「ルゥ……耳が真っ赤だぞ?」
え?
「こんなに暗いのに見えるの?」
「ああ。顔も赤いぞ?」
うぅ……
恥ずかし過ぎる。
じいじの胸に顔をくっつければ見えないかな?
「もう見えない?」
わたしの言葉に、じいじのドキドキが速くなった?
「ルゥ……言いたい事があった……」
え?
言いたい事?
何?
「ルゥが明け方……周りを確認した後に、眠るわたしに口づけした事があっただろう?」
「……!?」
起きていたの!?
うわぁ!
恥ずかしい!
「あの時、寝首をかかれるのかと思い身構えたが。まさか口づけをされるとは……」
じいじにギュッとしがみつく。
ダメだ。
まさか起きていたなんて。
恥ずかし過ぎてダメだ!
あの時のわたしのバカバカ!
「ルゥ……愛している」
じいじがわたしを抱き上げた!?
うわぁ……
お姫様抱っこだ。
恥ずかしいけど、じいじの顔を見上げてみる。
じいじと目が合ってドキドキが速くなる。
ダメだ……
じいじの綺麗な瞳に……
わたしがうつっ……て……
気がつくとベットで朝になっていた___
「おはよう。ルゥ」
あれ?
わたし、橋にいなかった?
いつの間にか寝ていたの?
確か前にも同じような事が……?
「昨日は疲れたんだね。よく眠っていたよ?」
え?
何これ?
じいじ……だよね?
椅子に座っているじいじが、ベットにいるわたしに話しかけてきた。
見た目は確かにじいじだけど。
何か変だ。
「誰?」
じいじじゃないよ?
話し方が違うもん。
「どうしたの? ルゥ」
誰なの?
本物のじいじはどこ?
「待って……この感じ、もしかしてドラゴンのおじちゃん?」
「だいせいかーい!」
じいじの姿のドラゴンのおじちゃんが、部屋の中で黒いドラゴンの姿になった!?
うわあ……
床がギシギシいっているけど。
建ててもらったばかりの家を壊さないで欲しいよ。
「どうして分かったの?」
ドラゴンの姿のおじちゃんが不思議そうにしている。
「大好きなじいじを間違えるわけないよ」
あ……
言っちゃった。
恥ずかしい……
おじちゃんが、笑いながらもう一度人間の姿になった。
よかった。
床が抜けなくて。
今度はいつもの黒髪に金の瞳の人間の姿になっている。
「おじちゃん、またじいじに殴られちゃうよ?」
前にも、わたしにちょっかいを出して一撃で倒されていたよね?
「あはは。ヴォジャノーイが、いないからやっているんだよ」
なるほど。
「じいじは?」
「魔王城だよ。そっと来たから気づかれていなかったはずだよ?」
そっと来たって……
気づかれていなかった?
あれ?
過去形だね。
「大事な話があるんだ。ルゥから皆に伝えて?」
「え?」
何だろう?
「今やろうとしている事を、一か月待って欲しいんだよ」
何の事かな?
「何を待つの?」
「天族の事だよ?」
天使の?
しまった。
自称神様に聞かれたかも。
魔王城の結界の中じゃないと全部聞かれているかもしれないんだ。
「おじちゃん、天使に聞かれているかも……」
「大丈夫だよ。おじちゃんが結界を張ったから。あと、かわいいルゥが日に焼けないように幸せの島と橋にも日焼け防止の結界を張ったからね。それと今だけヴォジャノーイが入って来られないようにしてあるんだ」
え?
そんなに広範囲に結界を張れるんだ。
でも、じいじが入って来られない結界って何?
あれ?
そういえば魔族が張るのは結界じゃなくて防御膜だよね?
ドラゴンは『結界』でそれ以外の魔族は『防御膜』なのかな?
じゃあ魔王の島に結界を張ったのはドラゴン族?
もしかして、おじちゃんが?
「すごい……」
わたしの言葉に、おじちゃんが笑顔になった。
「そうなんだよ。おじちゃん天才なの。じゃあ、もう行くね? ヴォジャノーイが結界を壊して入って来そうだから。あぁ! そうだ。『つがい』おめでとう」
そう言うと、慌てて部屋から出て行った。
おじちゃん……
相変わらずだよ。




