家族の想い~後編~
「どっちの世界の生き物でもないのなら……天族の世界の生き物かしらね……」
ドラゴン王のばあばが知らないなら……
あの蛍みたいな光は、この世界の生き物じゃないんだね。
天使の世界の生き物?
もしかして……
「おばあちゃんがね、夜に歩き回る事があったの。その夜にだけ光る子とフワフワの子達が現れたの。何か関係があるのかな?」
「……そうね。ジャックフロストは、ただ寒い所にいるだけの子達だから何もできないのよ。光る子に何か関係がありそうね」
「おばあちゃんはね、前世の時に神様に好意を持たれたみたいなの」
おばあちゃんは神様にもう一度会う為に生まれ変わったんだ。
お互いに想い合っていたはず。
「もしかしたら、光る子がおばあさんを道案内していたのかもね……」
道案内……?
一緒に遊びたいみたいな感じはしたけど……
「ばあば……わたし、全部知りたいの。おばあちゃんの事も、異世界の人間がこの世界に連れて来られた本当の理由も。それと……自称神様が何をしようとしているのかも」
もう少しで全て繋がりそうな気がする……
「今のわたし達にできるのはジャックフロストを捜す事ね。それから、ハーピーが無事に卵を産む事よ」
ママ……
わたしのせいで疲れちゃったよね。
「ママ、幸せの島に帰って休もう?」
ゆっくり眠って疲れをとって欲しいよ。
「ママ……?」
気持ち良さそうに眠っている……?
いつの間にか光の力を使っていたみたい。
「ルゥ、パパはハーピーを連れて行くからヴォジャノーイと後からおいで」
……?
パパ?
変な感じがする……?
あ、そうだ。
「ごめん、パパ。今日出かけていて花壇と野菜に水をあげられなかったの」
「それなら大丈夫だ。いつもの犬猫が島の事をやっていたはずだ」
じいじが教えてくれたけど……
犬猫が島の事をやっていた?
犬猫って……
まさか……
「ウェアウルフ王とグリフォン王?」
「そうだ。付いて来たがったからな、島の整備をさせておいた。ルゥの為だと言ったら喜んでいたぞ?」
そういえば、イフリート王が山ほど仕事をさせているって言っていたよね。
この事だったんだ。
申し訳ないな。
明日いっぱい撫でてあげよう……
「ルゥ……おやすみ。先に行くね?」
パパがママを抱っこして幸せの島に帰る。
あれ?
パパ……?
いつもと違う感じ?
のんびり話さないし、少し痩せたような……
「ルーチャン、ベリアル、ココデ、ネテルカラ、ボク、ココニ、トマルネ」
そうか。
ベリアルはマンドラゴラ達と寝ているんだったね。
「うん。分かった。ピーちゃんが、おじいちゃん達に早く会えるように色々考えるね」
「ウン、アリガト」
寂しいけど、ピーちゃんの気持ちを大切にしたいんだ。
「じゃあ……月海、おやすみ」
小さいお父さんが抱きしめてくれる。
「お父さん……? あのね、わたしずっと幸せだったよ? 前世でも、今世でも……」
「……月海」
前世では辛い時もあったけど、おばあちゃんと穏やかに過ごせる時間が幸せだった。
今世ではたくさんの家族ができて賑やかで……
あの頃とはまた違う幸せがある。
「お父さん……おやすみ」
「ばあばは魔王と話があるから、ヴォジャノーイちゃんと二人で帰ってね?」
ばあば……
じいじと話せるように気を遣ってくれているのかな?
「うん。ばあば、いつもありがとう。おやすみ」
じいじと、幸せの島まで繋がる橋を歩く。
夜の少しひんやりする空気……
繋いでいるじいじの手もひんやりしている。
空では星がキラキラ輝いている。
波の音だけが響く橋の上で、じいじが話し始める。
「今日は……ハーピーが羨ましかった」
「え? じいじ? どうしたの?」
じいじが誰かを羨ましがるなんて。
「ルゥの気持ちを大切にしたくて、じいじはルゥが前の世界に帰ってもいいと言った。だが……本当は……どこにも行くな」
じいじがわたしを抱き寄せる。
いつもより、ほんの少し強く抱きしめながら言葉を続ける。
「ルゥが……全てだ。じいじの幸せな記憶の全てにルゥがいる。ルゥがいない世界は暗闇で何も見えないだろう……ルゥは暗い海を照らす月のようだ」
ドキドキする。
夜の闇の中、息をするのを忘れるくらいじいじを見つめている。
よく見えないな……
でも、優しく見つめてくれているのは分かる。
じいじの優しい手が、わたしのほっぺたに触れる。
だんだん近づいてくるじいじの顔。
じいじの柔らかい唇にもっとドキドキする。
すごく幸せだよ……
これからも、ずっと一緒に幸せを感じていたい……




