現在のブームに満足していても、危機感は必要だと思う
誰が何と言おうと、「売れる作品」を生み出すのは大切なことです。
もちろん、売れ筋の要素を取り入れたとしても、大ヒット作を生み出すことは困難です。
実力のある人がそれをやるから、人気が爆発するのだと思います。
ましてや、圧倒的な実力のない人間が売れる作品を生み出すためには、売れ筋を研究して取り入れていくしかありません。
趣味で創作をするなら、あまりそういうことを考えなくて良いので、気楽なのですが……。
男性向けの作品が行き詰まり、女性向けの作品にシフトすることによって、しばらくの間は物語への需要が保たれそうです。
それは、日本の物語にとって、基本的には良いことだったと思います。
現在の流れに反発する人も少なくないようですが、仮に物語の世界が性欲のない男キャラばかりになったとしても、それが売れるのであれば仕方がありません。
しかし、いずれは現在の流れも途切れることでしょう。
そうなれば、既に始まっている流れ――海外の需要に応える物語を生み出す必要が生じることは想像に難くありません。
ところが、現在の日本人が求める作風と、海外の国民が求める作風は異なります。
これまでは、日本人が良いと考える作品を海外に送り出してきました。
それが強みだと考えられることもありますし、そういう世界の方が住み心地が良いと感じる人だって少なくないでしょう。
ですが、明確に「欧米用」「中国用」「インド用」「東南アジア用」「アフリカ用」のような作品を制作して送り出す時代が迫っているかもしれません。
そうなれば、日本で制作される物語が、日本人にとっては共感できない意味不明な作品群と化すおそれがあります。
より高い需要を追っていけば、そうなってしまうことは必然です。
むしろ、日本国内でそういう作品を生み出せなければ、日本のアニメーターが中国に引き抜かれているのと同様の現象が拡大していくだけのような気もします。
ぶっちゃけた話。
女性が物語を制作して消費するようになってきているのに、スタイルの良い美少女が海やプールに行ったり、入浴したりしてくれるのですから、日本って恵まれてますよね……。
そう遠くない時期に、倫理的な問題などを語る必要もなく、「売れないから」という理由でそういう描写が消滅することも、あり得ないとは言えないのかもしれません。
まあ……完全消滅するかについては、とても疑わしいと言うべきですが……。
売れ筋の作品を生み出すことについて、「商業主義に魂を売った」といった文脈で批判する人がいます。
しかし、そんな批判は無視しても構いません。
わざわざ細かい説明をすることは避けますが、物語を作るには金銭的な裏付けが必要だからです。
それよりも、世の中が、売れる作品で満たされることの恐ろしさについて、真剣に向き合うことが必要です。
自分が支持するものが、新しいトレンドによって駆逐されて少数派になっていくことの恐怖について、真剣に考えるべきでしょう。
今まで「売れればいいんだよ!」などと言っていたのに、自分がマイノリティに転落したら「売れるものばっかり作りやがって!」などと言うのは、なろうのモブ悪役だけで充分です。
人間は、今の多数派であっても、近い将来の少数派だということを肝に銘じて生きなければなりません。
最後に。
孤独を恐れてはいけません。
人間は、どこかしらで少数派になるのです。
マイノリティとして生きていきましょう。
以上で、このエッセイを終わります。




