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超能力高校生探偵:白詰朔の幸福  作者: 正坂夢太郎
第四章 真の犯人を暴け!
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第四十六話 「赤紙」

 四月十八日、月曜日。

 宗田栞は朝早く目が覚め、六陵高校に駆け足で向かった。途中で何度も足を止め、リュックサックの中に酉饗津惟から預かった依頼状があることを確認する。そのたび、宗田栞はふうっと肩を撫で下ろした。

 ちゃんとうまくいくんだろうか、という不安が宗田栞を襲う。この依頼状を渡して、津惟ちゃんを守るために推部が動き始めたとして……ちゃんと真犯人を捕まえられるのかな。

 でも、考えていてもしかたがない。やってみなくちゃ。うん、そうだよね。


 教室に入って、猫のリュックを机のフックにかけ、依頼状を取り出して座る。時計を見ると…………ええと、6時35分。校門解放からまだ五分しか経ってない。さすがに、早く来すぎたかもしれない。


 五分経って、時計を見ると……6時40分だった。白詰くんと御簾川さんは、まだ来ないのかな。まさか、今日の朝依頼状を見せに行くのを忘れて――――――


 その瞬間、宗田栞は思い起こす。よく考えたら、御簾川さんは朝七時に推部集合って言ってた!! まだ約束の時間まで二十分もあるけど、念のために早く集まったり、してるかもしれない!!

 こんなことしてる場合じゃないや、と思うより早く、宗田栞は駆け出した。手には依頼状を握りしめている。

 一年生棟から職員棟を繋ぐ渡り廊下に出たとき、何やら校門の方が騒がしくなっているのに気がついた。たくさんの人が、下を向いて歩いている。よく見ると、その人たちは誰かから何かをもらった後で下を向いているらしかった。つまり彼らは、何かを手に持って読んでいる。

 なんだろう、と宗田栞は思ったが、優先事項が頭に浮かび、職員棟へと駆け入った。



 ◇◆宗田栞◇◆



 職員棟から実習棟に入り、第三音楽室前廊下に辿り着く。案の定と言うべきか、そこには先輩がいた。背が低く、にもかかわらず若干偉そうな口調の、しかしそれが嫌悪感を伴わない不思議なしゃべり方をする、間抜けだが時折難しいことを話す、先輩。

 宇治川海山だ。彼以外には誰もいない。


「まだなのか」


 宇治川海山がそう言った。宗田栞は自分に呼び掛けているのかと思ったが、彼が耳に折り畳み式携帯電話を当てているのを見て理解した。彼は電話をしている。


「……そうか、こちらに来るのか」


 彼は廊下を見渡した。宗田栞と目が合い、ぼそぼそっと呟いてから携帯電話をしまった。


「来たのか」

「……はい」


 誰と話をしていたのかは想像がつく。恐らく、赤く燃え上がるような長髪をなびかせ、いつも腰にはセーターを巻いてボタンを三つ開け、己の能力のためにどこでも目を瞑ってしまう癖が身に付いた、生徒会書記をも務める透き通った声を持つ、先輩。

 有田千鶴。その本人と、会話していたのだ。多分二人はここで待ち合わせをしている。


「あの、どうして先輩は、こんなに早くにここにいるんですかっ?」


 宇治川海山は少し悩んで答えを導く。


「一昨日の制服の件がまだ片付いていなくてな。このままではあいつがジャージ姿で廊下に立たされることになるかもしれない」

「……たいへんなんですね」


 宗田栞がそう言うと、宇治川海山はチラリと宗田栞を見た。


「いや、嘘はやめよう。君に嘘を吐くのは気が引ける。実を言うとな……私には卓越した能力があるのだ」


 確か千里眼クレアボイアンスという能力だ。


「私の能力を使えば、少々の未来は見てとれる。君がこの時間にここに来ることが分かっていたから私はここにいるのだ。制服が見つかっていないのは本当だが――――――」


 余り動揺しない宗田栞を見て、宇治川海山は「あまり驚かないのだな」と漏らし、驚いた顔をする。


「まあ、君の能力に比べれば、大したことではないか」

「そ、そんなことないですよ!」

「何も、厳選……寒村…………自信を持たないでいる必要はない。君の能力は、私の知る中ではトップスリーに入る能力なのだ」


 そうして宇治川海山は指を折る。小指、薬指、中指、人差し指、と折ったところで、人差し指を元に戻した。「やっぱりトップフォー……いや、何でもない」


 どうやら宗田栞はトップフォーだったらしい。


「そもそも、能力の価値というのは、人によって変わるものだ。例えば、相槌先輩、あの人は今テニス部を主な部活動として過ごしているが、そこで超能力を使うことはないらしい。相槌先輩が言うには『フェアじゃないんだよね、うん』なのだが、私なら恐らく、先輩と同じ立場なら超能力を使う。公式戦では超能力の使用が黙認されているからな。バレない範囲ならば、構わないと思っている」

「相槌先輩の能力って、何ですか?」

「まだ知らなかったのか?」


 宇治川海山が目をまん丸に開ける。


「“異常吸着オクトパサック”だ。なんにでもくっつくことができる。簡単に言えばスパイダ○マンのようなものだ。大きな違いは、吸着するものは何も自分と物でなくてもよく、靴や地面やラケットなどの、物と物でもいいということだな。ラケットを取り落とすことはなくなるし、踏ん張りたいときに地面から足が浮くことはない。そして、一度ラケットに触れたボールが相槌先輩の意思なしに離れることは、決してない。それほどまでに有用な能力であるにも関わらず、先輩は能力を一切使わず、己の実力のみで部のトップに上り詰めた。最近聞いた話では、白虎高校の精鋭軍団、通称“白虎隊”を一人で封殺したといい話も聞いたな。…………付いてきているか、ソーダ」

「あ、はいっ」


 宗田栞は瞼を持ち上げる。余りにも知らない単語が多く、眠気が訪れていた。実際には、『厳選……寒村…………』のあたりから話が耳に入っていない。ただ、相槌先輩の能力が“蛸足吸着オクトパス”であったのは覚えている。いや、それすらも本当の記憶なのかどうか、怪しい。


「君も能力の発動には時と場所を選ばなければならないぞ。超能力は、発動に大きな精神力を必要とするからな」

「えっ、そうなんですか?」

「そうだ。クローバーの能力が貧血を起こしやすいものだということは前にも言ったが、その他の能力も、ずっと使い続けていれば次第に疲れる。新政府は最近の実験で、広範囲に影響を及ぼしたり、効果範囲が狭くてもその効果が凄まじい能力であれば、十分もせずに死に至るという結果を得たらしい」

「じゅっぷん、ですか」

「ああ。君の能力に至っては全世界に及び効果も比較的強い能力だから、君の体感時間で五分もあれば衰弱し、七分経った頃には文字通り生気を失っているだろうな」


 宗田栞は、二日前の体育の時間の能力解除後に自分を襲った体のだるさを思い出した。

 確かにあのとき、白詰くんがいた手前平気なふりをしてたけど、あたしの体力は限界に近かった。あれは、能力を使ってすごい早さでグラウンドを一周してしまったからなのかな。体感で三分くらい、現実で三秒ほど。それだけ世界を止めていれば衰弱してもおかしくない。


「そうならないようにするには、能力を解除すればいい。簡単な話だ。心の中で夢を唱えているのならば、それを一旦止めればいいのだ。私の場合は、慣れたもので、能力を得てから一年も経っているからある程度思い通りに能力を操れる。能力が体に馴染んだのだろうな」


 それはすごい。


「ところで…………ソーダ、君は今日、どうしてこんな朝早くにここに来たんだ? 私の能力ではそこまで分からないのだ」

「あっ、えっと…………」


 宗田栞は右手でつまんでいた酉饗津惟からの依頼状を宇治川海山に渡す。彼はその依頼状に目を落とし、少しして顔を上げる。


「…………どういうことだ?」

「えっと……それは、津惟ちゃんからの依頼状なんです」

「それはわかる。問題は内容だ。『助けてください』というのはなんなんだ? 酉饗津惟は、ゴキブリ爆弾事件の犯人だ。そんな彼女がどうして――――――」


「津惟ちゃんは犯人じゃないです」


 努めて冷静を保ち宗田栞は宇治川海山をまっすぐに見据える。「津惟ちゃんは、この事件に巻き込まれた、被害者だったんです」


「――――何だって」


 宇治川海山の声が上擦る。「それは本当なのか」


 宗田栞は宇治川海山に、一昨日の放課後のことを話して聞かせた。一通り話し終えると、彼は頭を抱えた。


「我々はひどい勘違いをしていたようだ。そうか……本当に彼女が被害者だったとすると、この一連の事件は全く色を変える。『酉饗津惟の部エース掃討作戦』から『成り済まし酉饗津惟追放作戦』になる。そうなると…………」

「この事件で追放されないといけないのは、津惟ちゃんじゃなくて、ほんとうの犯人なんです」

「ということは、ダリアの推理は何もかも間違っていた、ということになるな」


 宇治川海山は同意を求め宗田栞を仰ぐ。宗田栞は小さく頷く。

 宇治川海山の肩が小刻みに振れた。


「ふっふっふ…………はははは!! ダリアも私も、新入生たちにまんまと追い抜かれてしまったというわけだ!! これは傑作だ!」


 宇治川海山は大口を開けて笑う。ひとしきり笑うと、宇治川海山は口元を緩ませながら言った。


「よし。認めよう」

「――――何を、ですかっ?」

「君たちを、だ。これにて新入生のテストは終了だ」

「へ?」

「前に言ったろう、この一連の事件を君達の初めての任務とする、と。それはもう終わりだ。この事件から君達新入生三人は手を引いていい」

「で、でもっ」宗田栞は声を荒らげる。「まだこの事件は解決してなくってっ」


「まあまあ、私の話を最後まで聞いてくれ」


 宇治川海山は指を振る。


「まず、一つ確認しておきたいのは、君達がどうして私達にこの依頼状を見せる気になったのか、ということだ。恐らく君達は、私達に協力を仰ぎ、酉饗津惟の追放を食い止め真犯人を共に暴きたいから、このような行動に出たのだろう?」

「…………はい」

「だがしかし、我が六陵高校推理探偵部では、その年最初の事件を新入生だけに解決させ、それをもって正式に我が六陵高校推理探偵部に入部するという伝統がある。これは今までの、先代も先々代もずっとしてきたことだ。もちろん私もそうした。私の場合は猫の捜索だったな。私の能力を試すにはちょうどよかったが、結局のところあれは先代が――――いや、ともかく、それが伝統なのだ。本当に新入生が六陵高校推理探偵部としての役割を試すテストのようなものなのだ。それを君達の代に限って外すわけにはいかない」


 宇治川海山は眉を寄せる。


「そこで、だ。私とダリアが君達に頼んだのは、何という事件の解決だったか……君は覚えているか」

「? ゴキブリ爆弾事件の犯人探し……じゃないんですかっ?」


「――――――違う」


 宇治川海山はにやりと笑みを綻ばせた。


「君達に頼んだのは『無くした制服の捜索』だ……そうだったろう」

「え、そうじゃないです」

「一昨日、そのような依頼をしてきた男子生徒がいた。そして私とダリアが君達新入生にその捜索を依頼し、それを新入生テストとした」

「違いますっ」

「ソーダ」


 宇治川海山はたしなめるように言った。


「初めから『ゴキブリ爆弾事件』とか『連続気絶事件』なんていうものは存在していないのだ。故に、それを新年度の新入生テストとして君達に頼むことはできないのだ。だから、君達の新入生テストは『無くした制服の捜索』だ」


 宇治川海山が何を言おうとしているのか、宗田栞はまだ分からない。


「新入生テストは“新入生だけ”で解決しなければならない。『ゴキブリ爆弾事件』が新入生テストならば、私達は君達を手伝うことができない」

「で、でも、一番さいしょの事件はまちがいなく『ゴキブリ爆弾事件』ですよ」

「いいや、違う。まだ分からないか」


 『ゴキブリ爆弾事件』が今年度初の事件ではない?


「『ゴキブリ爆弾事件』なんていうものは初めから存在していなかったんだ。あの一連の事件は『ゴキブリ爆弾事件』ではなく『酉饗津惟追放作戦』だったのだから。そして私がそれを認知したのはつい今しがただ。私やダリアにとって、今年度初の事件は『ゴキブリ爆弾事件』ではなく『無くした制服の捜索』なんだ。そして第二の事件が『酉饗津惟追放作戦』。だから君達の新入生テストは『無くした制服の捜索』になる」

「そうなると…………どうなるんですかっ」


 宇治川海山はふふふと笑う。


「君は察しが悪い。純粋だからなのか、単に無知なのか――――――――――私の言わんとしていることを汲み取ってくれないか」

「え? …………え、ええっと――――」


 宗田栞は思考を巡らせる。

 宇治川海山の主張はこうだ。

1.新入生は年度初めの事件を解決しなければ正式な推部部員として認められない。

2.その『新入生テスト』は新入生だけで解決しなければならない。

3.便宜的に事件は正式な推部部員|(宇治川海山、有田千鶴)が認知したときに初めて事件となる。

4.『ゴキブリ爆弾事件』は事件ではない。その代わり宇治川海山は『酉饗津惟追放作戦』を事件として認知した。

5.『酉饗津惟追放作戦』を事件として認知したのはたった今である。

6.『無くした制服の捜索』は一昨日事件として認知された。

7.3〜6より年度初の事件は『無くした制服の捜索』である。

8.1,2,7より、宗田栞、御簾川紗希、白詰朔ら新入生は『無くした制服の捜索』を新入生テストとして捜索しなければならない。その際、他の者からの助けは得られない。

9.1〜8より、逆に言えば、『酉饗津惟追放作戦』は宇治川海山、有田千鶴らに手伝ってもらうことができる!


「あっ」


 宇治川海山は宗田栞を見上げ暖かな笑いを漏らす。


「つまりはそういうことだ、ソーダ」


 そして宇治川海山は腕をバッと広げた。


「我々六陵高校推理探偵部部員は、総力をあげて『酉饗津惟追放作戦』の捜査に乗り出す!! 全力で君達の支援をしよう!!」

「あ…………ありがとうございます!!」


 宗田栞はぺこりと頭を下げる。ようやく反撃が始まる!


「……でも、なんでそんなに回りくどいことするんですか? 今回は例外、ってことにしたらいいような気がするんですけど……」

「私はそれでもいいのだが、ダリアがそれでは納得しないだろうと思ってな」


 宇治川海山は腕を組む。「ダリアは感情論で動かない。ちゃんと理論的に筋が通っていなければ納得しない。酉饗津惟が被害者であると分かっても、ちゃんとした理由がなければ君達の手助けをするとは言い出さないだろう。逆に言えば、理由さえあれば私達は喜んで君達を手伝う。困っている六陵生を救うのが、我が六陵高校推理探偵部の役割だからな」


 なるほど。


「私達の能力はとても捜査の役に立つ。存分に有効活用すれば――――」


「何をしているの?」


 振り向くと、セーターを腰に結んだ有田千鶴が立っていた。宗田栞と宇治川海山は、有田千鶴に事のあらましを伝える。

 有田千鶴は苦そうに頷いた。


「あなたたちの推理が合っていた――――か。どうやら私も、まだまだね」


 有田千鶴は恥ずかしげに微笑んだ。


「ごめんなさい――――って、あの子に謝らなくちゃ」


 あの子、とは誰のことなのか。

 有田千鶴は静かに廊下に掛かる肖像画を眺めた。ギターを持った男性の肖像画を。


「私も捜査に協力するわ」

「ほ、ほんとですか!?」


 喜びのあまり跳び跳ねようとした宗田栞を、「ただし」とたしなめる。


「状況は今、最悪なの。今朝、二人は校門で何か受け取った?」


 宗田栞と宇治川海山は顔を見合わせる。


「何も」

「もらってないです」

「…………そうよね。二人は多分、あの人たちが校門に来る前に、ここに来ていたのね」


 有田千鶴はため息を吐き出す。


「カバンは教室だから、今は持ってきていないんだけれど――――酉饗津惟の追放に関する“赤紙”が配られたわ」


 その言葉に、宇治川海山は目を見開いた。

「“赤紙”!? それは本当なのか!? ならばもう――――――酉饗津惟は――――」


 宇治川海山は口をつぐんだ。




「――――宗田さん!!!」




 叫び声に近い大声が聞こえ、一同は声の出本に目をやった。

 そこには白詰朔が肩で息をしながら、一枚の紙を握っていた。


「こっ、これを…………これを見てくれ!!」


 宗田栞は白詰朔から紙を受け取る。

 宗田栞は、次の瞬間言葉を失った。




『六陵赤新聞


スクープ!! ゴキブリ爆弾事件の犯人判明!!


担当記者 吉永



 四月十六日。吉永は校舎に響く放送音を耳にした。

 年度初めにもかかわらず、一年生を名指しで生徒指導室に呼び出したその放送にただならぬ気配を感じ取った吉永は、すぐさま撮影機を携え生徒指導室へと向かった。生徒指導室の扉は固く閉ざされ、声は殆ど聞こえなかったが、廊下で待機していた吉永は生徒指導室から出てきた生徒を見て息を飲む。

 その生徒は、放送で呼び出された一年E組酉饗津惟。彼女は共に出てきた推部生徒と思われる一年生数名に対し、次のような台詞せりふを浴びせた。


『酉饗津惟は悪人だ』


『そいつの人生は、この酉饗津惟が、めちゃくちゃにしてやった』


『犯人は酉饗津惟だ! 酉饗津惟が全部悪いのだ!』


 左の写真は、その時のものだ。

 また、推部生徒が『お前があの事件の犯人なのか』と聞いたところ『もちろんそうだ』と答えていたり、以前に匿名で『酉饗津惟はゴキブリ爆弾事件の犯人だ』という投稿が寄せられたことから、酉饗津惟がゴキブリ爆弾事件の犯人であることは疑いようもない。

 彼女は何を思い凶行に及んだのか。その理由を知るものはいないが、被害者の皆様の悲しみを知ること無く、酉饗津惟は平気な顔をしてこの高校に通い続けている。


――――このまま悪人を野放しにしていいのか。


 吉永は、六陵高校の全生徒、全職員、そして何より酉饗津惟に苦言を呈する。

2050:4/18』






 ◇◆宗田栞◇◆






「嘘」


 宗田栞は息を呑んだ。

 どうして。

 津惟ちゃんは――――犯人なんかじゃないのに。


「こんなの絶対、おかしいよ」


 もう一度その新聞に目を落とすと、それは風も吹かないのに、音もなく揺れていた。一体何事かと思ったが、少しして気づく。


 自分が、震えている。


「こんなの…………津惟ちゃんは――――」


 震えるあたしの肩を白詰くんが支える。


「酉饗は今、御簾川と一緒だ。大丈夫だ」

「だけど、でも、でも」


 狼狽える宗田栞を見詰め、有田千鶴が苦しそうに言った。


「――――――――酉饗津惟はもう、六陵高校にはいられない」


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