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モフモフ好きのオッサン、異世界の山で魔物と暮らし始める  作者: あろえ
第二章

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第75話:イリスさんに報告

 羞恥心全開の中でイリスさんによるシャンプーが始まったものの……、あっという間に時間が過ぎて、すっかりと癒されていた。


「はーい。じゃあ、後は髪をタオルで拭くだけね」

「ありがとうございます。後は自分でやりますね」


 さすがに最後までやってもらうことはできないと思い、クレアからタオルを受け取って、自分で頭を拭くことにした。


 異世界では気軽に風呂に入れない影響か、ヘッドスパが最高に気持ちよく感じるのは、間違いない。


 大きな都市でヘッドスパの店を経営すれば、億万長者も夢ではないと考えてしまうほど、格別な時間だった。


 早くも髪が乾いたクレアと、感心するようにそれを触るイリスさんの様子を見ても、同じことが言えると思う。


「クレアちゃんの髪、すごいサラサラになってるわね」

「うんっ! 髪に手を入れた感じがね、今までと全然違うの!」


 なんだかんだでイリスさんも興味があるみたいなので、後でこっそりとシャンプーを渡しておこう。


 あまり髪の毛が痛んでいるように見えないが、綺麗にする方法はいくらあっても損はないのだから。


 ちなみに、なぜか俺も一回目はシャンプーが泡立たなかった。


 そう、なぜかはわからないが!!


「ねえ、トオル。ウサちゃんもやってあげてもいい?」

「きゅー!?」


 いいんですか!? と言いたげなウサ太は、目をキラキラと輝かせている。


 どのみち後で俺がやろうと思っていたところだったので、今回はクレアに任せることにした。


「ああ、いいぞ。目や耳に湯や泡が入らないように気をつけてやってくれ」

「はーい」

「きゅーっ! きゅーっ!」


 桶の湯温だけ調整してやると、ウサ太は躊躇することなく湯船に入っていく。


「きゅ~……」


 極楽だ~……と、吐息が漏れる姿は、やっぱりオッサンみたいだった。


「じゃあ、ウサちゃん。シャンプーするよー」

「きゅ~……」


 クレアはシャンプーを手に取ると、優しい手つきでワシャワシャと洗い始める。


 イリスさんのやり方を見ていた影響か、意外に上手だった。


「ウサちゃん、気持ちいい?」

「きゅ~……」

「そうなんだ~。よかったー」


 和やかな雰囲気に包まれていたので、邪魔をすると悪いと思った俺は、イリスさんと一緒に少し離れる。


 ウッドデッキの端に座り、クレアとウサ太の様子を見守ることにした。


「ウルフや盗賊の一件があったから心配していたけれど、普通に過ごす分には問題なさそうね」

「おかげさまで楽しく過ごせていますよ」

「そう、よかったわ。また別の問題が出ていたら、どうしようかと思っていたわ」

「……もしかして、それでヘッドスパをしてくださったんですか?」

「さすがに合わせる顔がないと思って、先に労わることにしただけよ。貴族に関することも調べてもらっているから、多少のことはしてあげないとね」


 パチッとウィンクするイリスさんは、子供っぽい雰囲気ではなく、最初に出会った頃のような大人っぽい雰囲気を(まと)っている。


 そのため、一人で考えるには荷が重いルクレリア家との会合について、報告することにした。


「ルクレリア公爵と顔を合わせましたけど、悪事を働くような人には見えませんでした。こちらのことを探りつつも、対応を慎重に検討しているような印象を抱きましたね」

「公爵家としては、正しい対応ね。確か彼は、軍隊蜂に対しても慎重な姿勢を示していたはずよ。今回の一件には、無関係だと判断してもいいかもしれないわね」

「俺も同意見です。少なくとも、欲望に支配されているような人ではありませんでした。どちらかといえば、軍隊蜂を恐れている印象が強かったですね」


 もしもルクレリア領主が強欲な方であれば、『もっと軍隊蜂の蜂蜜を持ってこないと、お前の言い分を認めることはできない』と、満足するまで納品させる方法を取っていたはずだ。


 今回のように、軍隊蜂の蜜蝋(みつろう)の採取依頼を指示したのは、ルクレリア家の利益を考えたのではなく、事実確認を重視した傾向にあると言える。


 それはロベルトさんやフィアナさんとの駆け引きも同じことで、欲望や悪意に満ちた様子は見られなかった。


「領主が関与していないとなると、次は冒険者ギルドや商業ギルドが怪しいわね」

「……そうですね」


 ただ、ルクレリア公爵が焦っているように見えたことだけは気になっていた。


 何か後ろめたいことでもあるんだろうか……と考えていると、恐る恐るニャン吉が近づいてくる。


 周囲をキョロキョロと見渡して、危険がないと判断したのか、俺の膝の上に飛び乗ってきた。


「ウサ太は怖がるのに、イリスさんは大丈夫なんだな」

「ニャウ~」


 同じテイムされた魔物であっても、イリスさんに恐縮するウサ太と安堵するニャン吉では、正反対の反応である。


 にこやかな笑みを浮かべた後、怪我した脚を休ませるようにゴローンッと横になった。


 一方、ニャン吉に顔を近づけるイリスさんは、真剣な表情を浮かべている。


「この子、シルクキャットじゃないかしら」

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