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もふもふ好きのおっさん、異世界の山で魔物と暮らし始める  作者: あろえ
第二章

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120/122

第120話:王都までの旅路Ⅱ

 馬車に荷物を積み終えると、すぐに王都に向かって進んでいく。


 馬車で揺られるルクレリア家の二人とは違い、俺たちは徒歩で向かわなければならない。


 王都までの道のりは約一週間だと聞いているので、疲労が溜まる頃には到着する見込みだった。


 ただ、俺は異世界らしいイベントを体感して、大人とは思えないほど胸が高鳴っている。


 それは、普通に歩くことを許可されたウサ太も同じみたいだった。


「きゅーっ! きゅーっ!」

「いつもの山とは違う光景が続いて、新鮮だよな」

「きゅー!」


 縄張り意識が高い魔物としては、見慣れた景色を散歩することも、立派な仕事のうちなんだろう。


 しかし、今日は初めて歩く場所ということあり、ウサ太も純粋に散歩を楽しんでいるような気がした。


 そんな中、出発前には緊張していたクレアも――。


「ふっふーん♪ このあたりの街道には、綺麗な花が咲いてるね」


 ハニードロップを食べただけでスッカリと落ち着きを取り戻し、旅を楽しむ余裕が生まれている。


 そういうところはまだまだ子供っぽくて、可愛らしかった。


 護衛依頼を受けた冒険者としては問題があるみたいで、アーリィは少し不満そうな表情を浮かべているが。


「今回は護衛依頼なんだから、移動中も気を抜かないこと。危険な目に遭わないように心がけることが大事よ」

「はぁ~い」

「本当にわかっているのかしら。心配だわ……」


 はぁ~、と大きなため息を吐くアーリィは、自分がクレアの師だという自覚があるゆえの言動だと思う。


 クレアが冒険者として独り立ちすることを想定して、今のうちからしっかりとその知識を教えておきたいのかもしれない。


 ただ、急いては事を仕損じる、という言葉があるように、俺は焦る必要はないと考えていた。


「今回は御者にロベルトさんが同行してくれているし、クレアは初めて依頼を受けるんだ。必要以上にプレッシャーを与えるより、予行練習みたいな気持ちで挑んだ方がうまくいくんじゃないか?」

「気持ちはわからなくもないけど、公爵家の護衛は私たちだけなのよ。その期待に応えることも大事だわ」

「それはその通りだが、王都まで緊張感を持ち続けたまま、旅をするわけにはいかないだろう?」

「まあ……それもそうね。メリハリをつけて行動しないと、体力が持たないもの」

「またガチガチに緊張する方が悪影響を及ぼすから、今は魔物との戦いに集中させてやるのもいいと思うぞ。幸いなことに、危険を察知することが得意なウサ太もいるからな」

「きゅーっ! ……きゅ?」


 ちょうど返事をしたウサ太が何かを察したようで、勢いよく俺の体を登ってくる。


 頭にガシッとしがみつき、帽子役に徹しているため、人の気配を察知したに違いない。


 俺とウサ太の間で緊張感が高まると、予想通り、前方から一台の馬車が対向するように近づいてきた。


 何人も冒険者を連れていて、荷台には多くの荷物が乗っているため、商人さんの馬車だと思われる。


 しかし、彼らに警戒されることはない。


 こちらはルクレリア公爵家の馬車ということもあり、直接何か関わるようなこともなく、軽く会釈をするだけで通り過ぎていった。


 意外にウサ太が魔物だとバレないものだなーと思っていると、後方から冒険者たちの声が聞こえてくる。


「変な帽子を被ったオッサンだったな」

「一瞬、ホーンラビットを頭に乗せているのかと思ったぜ」

「そんなわけないだろ。どんな物好きだよって話だぜ。ハハハッ」


 うん、思いっきりバレてた。


 常識的に考えてあり得ない、という思考で見逃されただけの話である。


「ウサ太、この作戦だとリスクが大きそうだ。今後はぬいぐるみ作戦でいこう」

「きゅっ」


 俺の頭から飛び降りたウサ太は、凛々しい顔で頷き、協力的な姿勢を見せていた。


 一方、馬車の中から顔を出したフィアナさんは、心配そうな表情を浮かべている。


「普通に荷物袋の中に入れれば、気づかれないのではないでしょうか」

「それだとウサ太が嫌がるんですよ。ただ、危ない橋を渡っている自覚はありますので、無茶なことをするつもりはありません。他の作戦がうまくいかないようであれば、最終的にそれをすることで同意しています」

「きゅっ、きゅっ」


 何度も頷くウサ太を見たフィアナさんは、納得するしかないみたいで、苦笑いしていた。


「魔物のお世話をするというのも、大変なんですね」

「普段は言うことを聞いてくれる良いやつなんですよ。でも、本当に嫌がっているみたいなので、仕方なく……という感じですね」

「賢い魔物であることは認めます。しかし、もしものことが起きた際、ルクレリア家で擁護することはできませんよ」

「その形で問題ありません。これでもバレないように練習してきましたからね」


 そう言った俺がウサ太に顔を向けると、勢いよく飛び乗ってくる。


 瞬きを防止するために目を線のように細めて、ピクリッともせずにジッとする姿は、完全にぬいぐるみに化けていた。


「こちらは頭を押すと音が鳴るぬいぐるみです」

「きゅ~……、きゅ~……」


 良い年したオッサンが真剣に考えた結果が、これである。


 ウサ太が声を漏らしてしまった時に誤魔化す手段として、予め練習しておいたのだ。


 ちなみに、アーリィとクレアも手伝ってくれたので、誰がウサ太の頭を押しても鳴く仕様になっている。


 この完成度の高いウサ太のぬいぐるみ作戦に対して、フィアナさんは少し頬を赤くしていた。


「むう。それはそれでちょっと可愛らしいですね。羨む方がいるような気がします」


 普通にぬいぐるみとして欲しそうに見えるのは、気のせいだろうか。


 残念ながら、ウサ太は本物の魔物なので、お渡しすることはできなかった。


 そんなフィアナさんの慈愛のこもった眼差しをウサ太が浴び続ける中、ロベルトさんが馬車を止める。


「皆さん、このあたりで休憩しましょう。先ほどのパーティも、あちらで休憩していたようですから」


 まだ使われたばかりであろう焚火の跡を見て、俺たちは最初の休憩を取るのであった。

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