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もふもふ好きのおっさん、異世界の山で魔物と暮らし始める  作者: あろえ
第二章

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118/122

第118話:旅の準備Ⅳ

 アーリィが軍隊蜂に指示を出しに行った後、俺は拠点に残ったクレアと共に旅の準備を進めることにした。


「何か必要なものが不足していたら、遠慮なく言ってくれ」

「うん、わかった。ポーションはトオルが用意してくれるんだよね?」

「ああ。今から作るところだ」


 【箱庭】スキルの錬金システムを起動した俺は、ポーションのレシピを選択する。


 どれほどの危険が待ち構えているかわからないので、多めに作るくらいがちょうどいいだろう。


 万全の準備を整えておきたいから、癒しの軟膏も持っていくつもりだ。


「ポーションは完成するまでに時間がかかるから、その間にトレントの果実を加工しておくか。他の食材や持ち運びのしやすさを考えると……ジャムが無難だな」


 早速、俺は調理システムを開いて、ジャムのレシピを選択する。


 トレントの爺さんから採取したリンゴと、商業ギルドで購入した砂糖を用意するだけでも作れるのだが……。


 ここに触媒として、さらにリンゴを付け加えることで、果肉入りのジャムが誕生する見込みだった。


「一般的にジャムはパンにつけて食べるが、紅茶やミルクで割る食べ方もある。長旅になることを考慮したら、意外に便利なものだよな」


 ジャムは一度に大量消費することがないし、砂糖を入れることで腐りにくくもなる。


 リンゴのまま大量に持ち運ぶよりは、有意義な方法だと思った。


 同じトレントの果実であるブドウもジャムにしてみるか……と考えていると、ポカンッと口を開けたクレアが見つめてくる。


「トオルのスキルって、とっても便利だよね」

「まあな。拠点の中じゃないと何もできない、という不便な一面はあるが、それでも恩恵の方が大きい。正直、このスキルがないと、この山で生きていける自信がないよ」


 生産システムにしても、拠点にしても、畑にしても……。


 何か一つ欠けるだけでも山の生活が苦しくなるので、イリスさんから理想的なスキルをいただいたと思っている。


 まあ、そのバランス調整がおかしくて、過剰に良いものができることだけは注意しておくべき点だが。


「そういえば、今までのアーリィとの旅では、どういう食事をしていたんだ?」

「基本的には、魔物を倒して肉を焼いたり、休憩地点を中心に野草を探したりしてたよ。後は固パンと干し肉を持っていくくらいかな」

「固パン、か。スープに浸して食べるやつだよな」

「うん。スープが作れない時は水でふやかすから、微妙な味になっちゃうんだよね……」


 クレアは何度か固パンを水でふやかして食べた経験があるみたいで、嫌そうな表情を浮かべていた。


「まあ、王都までは一週間程度だと聞いているから、あまり固パンの世話になることもないだろう。雨が降ったり土砂崩れがあったりして、長引かないことを祈るしかないな」


 そんなことを話している間に、調理システムで作っていたジャムが完成する。


 小瓶の中に入っているのは、黄色味がかったゼリー状になっていて、果肉がしっかりと残っていた。


 これをパンにつけて食べることを考えるだけで旅が楽しみになるのだから、不思議なものである。


 思わず、クレアが俺の手元を覗き込んできた。


「うわぁ~。いつものリンゴが全然違う形になっちゃったね」

「これはパンにつけて食べるものだな。甘いものだから、きっとクレアも気にいると思うぞ」

「ほんと?」

「ああ。保存も利くから、旅で活躍してくれるだろうな」


 調理システムのクオリティーを信じて、俺は封を開けることなく、すぐに小瓶をしまう。


 すると、クレアがキョトンッとした表情を浮かべていた。


「あれ? 今から食べるんじゃないの?」

「いや、違うぞ。旅で必要だから、作っていただけだ。……あっ。さては、味見ができると期待していたな?」

「えへへっ、バレちゃった? だって、トオルが何か作った時はいつもくれるんだもん」

「確かにな。でも、今回は旅の楽しみに取っておくとしよう。商業ギルドで購入した砂糖には、限度があるからな」

「はーい。じゃあ、今回の旅が始まるまで我慢するね」

「ああ。いい子だな」


 聞き分けの良いクレアと共に、その後も旅の準備を進めていく。


 イリスさんにニャン吉やトレントたちの世話をお願いするので、彼女の分のリンゴジャムは別で用意しておこうと思いながら。

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