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もふもふ好きのおっさん、異世界の山で魔物と暮らし始める  作者: あろえ
第二章

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109/122

第109話:祝い事

 バラ園を見に行った二日後の早朝。


 まだ日が昇り始めて間もない頃で、普段なら静かな時間帯なのだが……。


 ブーン♪ ブーン♪ ブーン♪


 今日は珍しく軍隊蜂が群がっていて、大きな音を立てている。


「こんな朝早くに、いったいどうしたんだ……いてっ」

「ニャウ~!」

「今日はニャン吉も元気だな。何か良いことでもあったのか?」

「ニャウ~!」

「そうか、わかったぞ。今日はハニードロップの納品日だから、あやかろうと思っているんだな」

「ニャウ、ニャウ~!」


 必死に何かを訴えるニャン吉には悪いが、軍隊蜂もハニードロップを目当てに来ているはずだ。


 きっと軍隊蜂の縄張りが正常化したことで、サウスタン帝国側にいた軍隊蜂にもハニードロップを分け与えているんだろう。


 その結果、ハニードロップの在庫が乏しくなり、こんな朝早くに催促しに来たに違いない。


「俺たちは持ちつ持たれつの関係だからな。仕方ない、早めに用意してやるとするか」


 眠い目をこすりながら、キッチンの方に足を運ぶと、勢いよく走ってきたウサ太と合流する。


「きゅ~!」

「ん? ウサ太も朝から元気だな」

「きゅーっ!!」

「ニャウ~!」


 ただ、どことなく様子が変なウサ太とニャン吉の姿を見て、俺の思考は徐々にクリアになっていく。


 なんだが喜んでいるみたいだな、と。


 聞こえてくる軍隊蜂の羽音も、警戒をしている時に鳴らしているようなものではない。


 純粋に大勢の軍隊蜂が集まって、喜びあっているだけのような気がする。


 ただ、早朝に祝うようなイベントなんて何もないと思うんだが……と考えていると、眠そうな表情を浮かべるクレアが起きてきた。


「トオル~……、おはよう」

「おはよう。軍隊蜂の音で目が覚めたか?」

「うん。今日は蜂さん、いつもより早いね」

「ああ。たぶん、ハニードロップを取りに来たんだろう。まだバケツに移し替えてないから、クレアも手伝ってくれ」

「はぁーい……」


 いったん考えることをやめて、蜜蝋(みつろう)で作られた軍隊蜂のバケツにハニードロップを移し替えていると、朝が苦手なアーリィまで起きてきた。


「どうしたのよ。なんでこんなに朝早く、軍隊蜂が群がってるの……?」

「ハニードロップを取りに来たんだと思うぞ。後はバケツに移し替えるだけだから、アーリィも手伝ってくれ」

「わかったわ。今度から昼以降に取りに来るように言っておかないと……」


 女王に認定されたであろうアーリィの言葉があれば、もうこんな事態に陥ることはないだろう。


 そんなことを考えながら、一足先にハニードロップを入れたバケツを外に持っていこうとドアを開けると、ウサ太とニャン吉が勢いよく飛び出していった。


「きゅーっ!」

「ニャウーッ!」

「本当に元気だな。ちょっとは落ち着い……」


 ウサ太とニャン吉が向かった先に視線を移した俺は、衝撃的な光景を目の当たりにして、固まってしまう。


 ガサッ

 ガサッ


 なんと、ニッコリと微笑むトレントの爺さんの足元に、双子の小さなトレントが誕生しているのだ!


 ウサ太よりも少し大きい程度の体格で、青々とした葉を茂らせている。


 クリクリッとした目を持ち、精いっぱい体を動かそうとする姿は、とても可愛らしいものだった。


「軍隊蜂が集まっていたのは、ハニードロップが目的じゃなかったのか」


 数日前、トレントの爺さんの様子を見た軍隊蜂が機嫌を良くしていた理由を、俺はようやく理解することができた。


 まさか新しい命をお祝いするために、朝早くから駆けつけてくれるとは思わなかったが。


 そんなことになっているとは知らないアーリィとクレアが遅れてやってくると、さらにお祝いムードが加速する。


 バケツを置いたクレアは、満面の笑みを浮かべて双子トレントに近づいていった


「うわぁ~! トレントのお爺ちゃんの赤ちゃんだ~!」

「きゅーっ!」

「ニャウ~!」


 子供というのは受け入れが早いもので、早くもウサ太とニャン吉と共にお祝いしている。


 一方、大人というのは受け入れ難い生き物みたいで、アーリィは呆然と立ち尽くしていた。


「トレントが、増えてる……。えっ、なんで?」

「その気持ちは十分に理解することができるんだが、俺も答えを持ち合わせていない。逆に聞きたいくらいだ」

「トオルが知らないなら、私が知るはずもないわ。いったいどうやって繁殖したのかしら」

「ベースが植物であることを考えると、軍隊蜂が花粉を運んできて、トレントの爺さんに受粉……。いや、婆さんと言った方がいいのか?」

「難しい問題ね。本人が怒ってないんだったら、お爺さんだと思うわよ。たぶん」


 ゴブリンやウルフといった魔物は、哺乳類と同じような形で繁殖するはずだ。


 しかし、木の魔物であるトレントに関しては、それに当てはまるとは思えない。


 おそらくトレントは、性別や出産という概念が存在しない魔物なんだろう。


 種をまいて仲間を増やしたり、苗を株分けするかのように自身の栄養や魔力を分け与えることで繁殖したりする可能性がある。


 あくまで想像の域を越えないが、一つだけ間違いなく言えることがあるとすれば――。


 ガサッ

 ガサッ


 双子トレントが可愛くて、めちゃくちゃ癒される存在であることだけだった。

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