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もふもふ好きのおっさん、異世界の山で魔物と暮らし始める  作者: あろえ
第二章

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第108話:ロイヤルゼリー

「ロイヤルゼリー? 何それ。初めて聞いたわ。クレアは聞いたことがある?」

「ううん、ないよ。でも、蜂さんたちがこぼさないように持ってきたから、珍しいものなんじゃないかなあ」


 クレアの言う通り、今回のバケツを運んできた軍隊蜂は、やけに慎重に行動していた。


 わざわざ護衛までつけていたんだから、これは貴重な素材だと判断しても間違いない。


 トレントの爺さんの知識から引っ張ってきても、ロイヤルゼリーの可能性が高いと思うのだが……、少し話がややこしくなるような気がする。


「どうやらロイヤルゼリーは、普通の軍隊蜂は口にしないみたいだな」

「そうなの? じゃあ、どうして持ってきてくれたのかしら」

「うーん、どうなんだろうなー」


 真剣に考え始めるアーリィを前にして、俺は口を濁すことしかできなかった。


 なぜなら、ロイヤルゼリーを食べる軍隊蜂は、女王蜂に選ばれたもののみだという情報が頭の中を巡っているのだから。


「まあ……バラ園を作ってくれたお礼に、特別なものを用意してくれたんだろう」


 蜂蜜の恩返しをしようとしたアーリィと、自分たちの女王になってほしいと思いを寄せる軍隊蜂。


 バラの花を咲かせるということが、どれほど重要なことだったのか、今更ながらに知ってしまった。


 人間と魔物が会話できないことで、奇妙なすれ違いが起こっているが……。


 すでにアーリィがロイヤルゼリーを受け取っているので、余計なことは言わないでおこう。


「おいしいのかしら?」

「ねえねえ、食べてみようよ」


 クレアに背中を押されたアーリィは、指先に少しだけロイヤルゼリーをつけて、味見をする。


 しかし、予想していた味とは違ったみたいで、眉間にシワを寄せていた。


「めちゃくちゃ酸っぱいわ。まさかとは思うけど、毒を盛られたじゃないわよ、ね……?」


 勢いよく首を横に振る軍隊蜂を見れば、予期せぬ反応だったことはすぐにわかる。


 トレントの爺さんの知識で確認しても、毒っぽい効果は見受けられない。


 むしろ、怪我や病の治療だけではなく、活力を与えるような素材だった。


 さすがに軍隊蜂が可哀想なので、フォローしてやるとしよう。


「ロイヤルゼリーは、蜂蜜よりも肌に良いもののはずだぞ」

「ありがとう、軍隊蜂。大切にいただくとするわ」


 美容に興味を持ち始めたアーリィにとって、最高の贈り物であることには違いない。


 コロッと態度を変えた彼女の姿を見て、毒と疑われた軍隊蜂も安堵している様子だった。


 問題があるとすれば、本格的にアーリィが軍隊蜂を支配してしまった、ということかもしれないが……。


 まあ、悪影響は出なさそうになので、これでよかったと思うことにしよう。


 それにしても、この世界でロイヤルゼリーが評価されていないのは意外だなーと考えていると、アーリィが浮かない顔を向けてきた。


「そういえば、トレントの方はどう? 最近、元気がないわよね」

「軍隊蜂の反応を見る限り、病気ではないみたいだぞ。とりあえず、栄養剤をあげていれば、死ぬようなことはないだろう」

「確かにね。あれだけ雑草が生えるほど栄養価が高いなら、問題なさそうだわ。でも、あまり油断しない方がいいかもしれないわよ」

「ん? どうしてだ?」

「昨日、トレントに魚とウルフをコッソリ差し出してみたんだけど、反応が薄かったのよ。食べるには食べたんだけど、果実を実らせることもなく、そのまま眠りついたの。風邪でも引いてないか心配ね」


 そう言ったアーリィは、純粋に心配して行動に移してくれただけなんだと思うんだが……。


 少し前まで『魔物に餌付けする勇気を持てない』と言っていただけに、俺にとっては衝撃的な言葉だった。


 無論、アーリィもクレアと共にトレントの爺さんから果実を採取していたことを考えると、軍隊蜂のように愛着が湧いても不思議ではない。


 毎日その果実を食べていることも考慮すれば、それが普通だとも考えることができるだろう。


 ただ、この世界の常識と照らし合わせると……。


 二人ともすっかりと毒されてしまったな。主に俺のせいなので、口に出すつもりはないが。


「一応、トレントの果実は在庫がある。まだ数日は食べても問題ないぞ」

「そっちは気にしてないけど……。とにかく今は、様子を見るしかなさそうね。ちょっと頼りすぎていた一面もあったから、休ませてあげることも必要だと思うわ」

「ああ。休みすぎている軍隊蜂の姿を見ていると、メリハリは大事だと思い知らされるけどな」


 一国の軍事力に匹敵すると恐れられていた姿は、いったいどこにいったのやら。


 万全の警備体制でロイヤルゼリーを運んできた軍隊蜂も、少し目を離したうちに羽を休めている。


 軍隊蜂にとっては、本当に楽園のような場所になっていた。


「まあ、この場所を奪い合うような形で喧嘩が怒らないのであれば、これでいいのかもしれないな」

「ええ。交代で休みに来ているみたいだから、その心配はいらないと思うわ。雑草を抜くのに邪魔ではあるけどね」


 少しばかり不満を漏らしつつも、羽を休める軍隊蜂の姿を見るアーリィは、嬉しそうな表情を浮かべている。


 それは、軍隊蜂の女王……と呼べるものかはわからないが、意外に合っているのかもしれないと思ってしまった。

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