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どうやら世界が繋がったらしい  作者: 天城 在禾
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こっそりと投稿します…






「え、きょ、恭禍さん!?」

「きょう姉…」

「大丈夫だ。とりあえずお前らは乗ってろ」


不安そうな声を上げた大貴と莉音に安心させるように声をかけ、恭禍は車を降りる。

かちゃり、と周りから銃器を構える音が聞こえて恭禍は仕方なく両手を上げた。


「別に怪しい者じゃない。外から逃げてきたんだ。この車は借りただけだ。この場の責任者は誰だ」


車から降りてきたのが年若い女性であったことに周囲は少なからず動揺したようだった。

しかし、多少の訓練を受けた者たちではあるので、銃器をそのまま恭禍に向け続ける。


「…お前は何者だ」

「ただの大学生だ。あんたが責任者か?」

「質問はこちらから行う。どうして自衛隊の車を?どうやって手に入れた」

「…信じて貰えるか分からんが、これは借りたんだ。◯◯◯自衛隊基地の松井という男に聞いてもらえば分かる」


恭禍は努めて真剣な顔をして答えた。

ここで不真面目な態度を取れば話が拗れて面倒なことになることは分かっていたからだ。

恭禍の態度を見てそこまで危険ではないと思ったのか、質問した者が周りに合図する。

他の者たちは銃器を下ろし、整列を始めた。

質問した者は恭禍の前にやってきた。


「◯◯◯自衛隊基地の松井と言ったな?」

「あぁ。宮田という男でもいいが」

「いや…君は勾槻恭禍さんだね?」


恭禍は名前を呼ばれて少し意外に思った。

しかし、考えてみれば松井たちが恭禍のことを報告しないわけがなかった。

目の前の彼らから敵意が無くなったのを見て、松井たちが好意的な説明をしてくれたことが分かった。

恭禍はそれに安堵した。

あんな怪しい行動を取ったのだから、もっと悪評を立てられてもおかしくないと思っていたのだ。


「そうだ。改めて、勾槻恭禍という。松井さんがそちらに報告を?」

「私は山崎徹という。あぁ。◯◯◯自衛隊基地から先日報告を受けた。松井曹長が君の身分を保証すると言っていた」

「…はぁ…やられた」


恭禍が大きなため息をついたのを見て山崎は首を傾げた。

松井が身分を保証するということは、自衛隊内で恭禍を害そうとする者はいないしそれなりに良い待遇を受けることができるということだ。

山崎にしてみれば、一般人の少女が自衛隊の庇護を受けられることを幸運だと思う。

しかし、恭禍にとっては足枷になりかねないものだ。

ジュリアスの友人、涼斗に政府と連携を取れと言われ、納得したふりをしたが、恭禍は必要最低限しか政府と接触するつもりなどなかった。

少なくとも自身の大切な存在…家族の無事を確認するまでは国に貢献するつもりなどさらさらない。

しかし、松井が身分を保証したことで恭禍はそれなりに松井に対して気をつかわなければならなくなった。

恭禍が何か大きな問題を起こせば松井が少なからず責任を取ることになるのだ。


「松井さんや宮田さんは見所ある人たちだったからな…少しは顔を立てるか」

「…えぇと…君は不思議な力を持っていると聞いたが…それであの怪物たちを倒して人々を助けて回っているらしいな」

「…少し誤解があるな。私は別に人助けを生業にしてる訳じゃない。まぁいい。詳しくはまた話す。悪いがあなた方の拠点に案内してもらえないか」

「あぁ。上層部も君に会いたがっていた。案内しよう」

「それは助かる」


山崎は恭禍とともに軍用車に乗り込んだ。

ほかの自衛隊員はそれぞれグループに別れて何処かへ行ったので、別の場所に車があるのか元の任務にでも戻ったのだろう。

恭禍としては、この山崎という男は警戒心が足りなくて心配になったが、恭禍は危害を加えるつもりはないので何も言わなかった。

山崎は迷わず運転席に乗って、後ろを見て驚いた。


「ん!?なんだ、他にも人がいたのか!?」

「…気づいてなかったのか…となると他の自衛隊のやつも気づいていないな…あいつらについては拠点に着いてから話す。まずは先を急ぎたい」

「あ、あぁ」


明らかに変なメンバーを見て山崎は動揺していたが、恭禍はそれを冷めた目で見て、先を促した。







拠点に着いて、恭禍は真っ先に通信室へ向かった。

山崎は慌てて恭禍を止めに入ったが、恭禍の「急がないと大変なことになる」という発言に、通信室へ案内する役を買って出た。

とくに何も危機的状況が迫っているわけではなかったが、面倒事を避けられたので良しとする。

詩音や莉音は何処かで休ませようと思ったのだが、莉音が恭禍から離れたがらなかったので、結局大貴と莉音と詩音を引き連れて歩くこととなった。

ベルフェゴールは起きなかったので、そのまま軍用車の中に置いていった。


通信室に入ってきた変な集団を見て中にいた人たちは驚いていたが、恭禍はそれを無視して近くの機械をいじり始める。

周囲が慌てて止めようとしたころには、砂嵐だった画面がパッと何処かの部屋を写し出した。


「ジュリアス」

『!!!』


画面の先で大きな音がして、ジュリアスの顔が見えたかと思うと、それを押し退けて野坂涼斗が顔を出した。


『キョウカさん!!』

「こんにちは。二人とも無事そうでよかったです」

『そうじゃありません!政府と連携を取ると言っていたのに、あれから何も連絡もなく…日本政府に確認を取っても知らないの一点張りで…ジュリアスから貴女の話を聞いて覚悟はしていましたが、まさかここまでとは…』

「ご迷惑をおかけしました」

『ええ!…ですが、ご無事でよかったです』


恭禍は、涼斗の言葉に苦笑いとも言えない笑みを浮かべる。

安堵する涼斗を押し退けて、ジュリアスが画面に現れた。


『キョーカ。イギリスは私が結界で覆いマス。ケド、世界全部はムリ。原因探して何トカしないと』

「…あぁ。そうだな。原因には少し心当たりがある」

『心当たりが!?一体何がこんな事態を引き起こしてるんです!?』


画面の外から涼斗の声が聞こえた。

ジュリアスが慌てて涼斗の口を押さえた。

その行為が、ジュリアスが恭禍と同じ結論を叩き出したことを意味していた。


「ジュリアスは気づいていたか」

『…ハイ。原因、キョーカの可能性ですネ?」


恭禍は微笑んだ。

ジュリアスと恭禍が同じ考えをしたことが、恭禍にとって嬉しかった。

それだけ、恭禍がジュリアスに近づけている証なのだ。

恭禍がこの災厄の元凶である可能性は、弟の拓真が指摘するよりも前から…いいや、異形たちが大学に現れた時から考えていたことだ。

6つの世界と繋がった…それも、恭禍が行ったことのある世界と。

そのことが恭禍を元凶だと決めつける十分な理由になりえる。


『でも、キョーカである確証はアリマセン』

「ああ。私だって、自分の意思でこんなことを仕出かすわけないだろ?」


当然だ。

自分の意思でわざわざ他人を巻き込んでまで世界を繋げたりなどしない。

だから。


「何かが…誰かが、私という存在を鍵として、世界を繋げたんだ」










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