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突然だが、私は異世界とやらに行った事が6回ほどある。
あ?んなことどうでもいい?
…尤もな意見だ。
が、しかし、是非とも私の話を聞いて頂きたい。
私が行った異世界とやらは全て違う世界だった。
1つ目は剣と魔法の世界、ザティール。
そこで私は聖女様として召喚され、世界を浄化することになった。
全く以て迷惑な話である。
しかも召喚された国の貴族は腐っていて、現国王は貴族たちの傀儡。
仕方なく皇太子と協力して貴族を粛清し、かつ世界も浄化した。
…あの日々は本当に苦痛だった。
政治のせの字も知らないような私が権力者に立ち向かって行くなんて本当に無謀なことをしたものだ。
2つ目も剣と魔法の世界で、名をファルガイヤと言った。
ここでは私は勇者として召喚された。
…勇者って何?おいしいの?
魔王を倒して欲しいとか、何その無理ゲー。
三人のお供を付ける?
彼らは世界中から集められた精鋭?
え?何?これが聖剣?私の武器?
はぁ、魔法が使える…らしい。
と、適当な装備を渡され、三人の(これが美形集団で、かつ世話の焼けるやつらだった)お供と共に世直ししつつ魔王を倒した。
3つ目は前者2つと少し変わってあやかしと呼ばれる存在が跋扈する、アサナトという名の世界だった。
私はそれらに捧げられる供物として召喚された。
…まぁ、何やかんやあってあやかしの長と和解?し、あやかしの敵である邪神を倒して、私はこの世界に帰ってきた。
4つ目は科学の発達した世界、ディスヴィディアだった。
そっちの研究者たちが言うには、私は時空の狭間とやらに落っこちてそっちに行ったらしい。
時空の狭間が次に現れるのは何時になるか分からない。
私は研究の対象として扱われると共に、戦争にまで駆り出された。
幾度かの戦場に出て、私に向けられた銃が音を立てたその瞬間、私はこちらの世界に帰ってきていた。
5つ目の世界はまたもや剣と魔法の世界だった。カーナルという名前の世界だ。
そこでなぜか私は魔王として召喚され、勇者に滅ぼされる演技をしてこちらの世界に帰ってきた。
6つ目も剣と魔法の世界で、カタフニアという。
この時は私が呼ばれたわけではなく、私は所謂巻き込まれというやつだった。
勇者を召喚したらしく、私を巻き込んだ彼は確かに勇者っぽかった。
…外国人で言葉通じなかったけど。
元気かなー、ジュリアス。
で、だ。
なぜ唐突にこんな話をしたのかと言えば。
その6つの世界とこの地球と呼ばれる世界が、繋がってしまったらしい。
大学で講義を受けていた私は外からの悲鳴に首を捻った。
それは他の学生も同じで、教授も同じように首を捻った。
窓側にいた学生が外を見て、それから血相を変えて悲鳴を上げる。
教授は訝しげに窓に寄り、学生と同じように悲鳴を上げた。
それから他の学生も窓に寄り、全員が全員、悲鳴を上げた。
私も友達と一緒に窓に寄り、外を見た。
…なるほど。
平和ボケした大学生には地獄絵図だろう。
尤も、向こうの世界でもこれは地獄絵図と呼ばれるレベルの状況だろう。
私は友達に決してここから動くなと伝え、教室を飛び出した。
まずは魔法が使えるかの確認だ。
魔法の存在していた4つの世界では、私は詠唱せずとも魔法が使えた。
…使えた。
4つの世界の魔法が使えた。
これなら行ける。
とりあえず友達のいる教室に結界を張り、見つけた人間には片っ端から私のいた教室へ行くよう告げていく。
…この状況は大学内だけではないはずだ。
かと言って私が地球の全ての人間を助けることなど不可能だ。
まぁ、私は目の前の人を助けることに集中すればいい。
他はジュリアスと各々の政府が頑張ってくれるだろう。
狼に似た異形(これは1つ目の世界での言い方。2つ目の世界では魔物、5つ目の世界は悪魔、6つ目の世界は魔獣と呼んでいた)を魔法で叩き潰し、私は広い教室に結界を張り、そこに人を誘導していく。
私の友達も中にはいて、大丈夫かと声をかけてくれるやつもいれば恐ろしいモノを見るような目を向けたやつもいた。
私は適当に返事をして、片っ端から異形を潰していく。
…くっそ、せめて聖女だったときの杖があればな…
呼べば来るか?
「…アルクス!!」
私は聖女の杖を呼んだ。
…ごめん、現在聖女あるいは聖人を勤めている方。
私は空に影を見つけて心の中で謝った。
アルクスは物凄いスピードで来たかと思うと、私の前で急停止した。
アルクスをひっ掴んで聖女用の長い詠唱を開始する。
もちろん、その時襲ってくる異形どもは無詠唱の魔法で捻り潰した。
長ーい詠唱が終わり、発動の一声を上げると、アルクスが光り始める。
その強い光に目が開けられなくなり、目を閉じた。
…おい、久しぶりでテンションが上がってるな?アルクス。
そのおかげか、大学内の異形は一掃出来たが。
とりあえず大学全体に結界を張り、私はこうなった原因を調べるために大学を出た。
どうやら、地球の至る所で世界が繋がっているらしい。
これはあくまで私の予想なので本当にそうなのかは分からない。
幸か不幸か、我が大学の直ぐ近くの神社に世界の繋がる場所があったらしく、湧き出る異形を捻り潰して、とりあえずそこに結界を張った。
それにしても厄介だ。
あとどれだけの数、世界を繋ぐ場所があるか知らないが、一々こんなことをしていれば私の体力が持たない。
もちろん、常人よりも体力はある。
それどころか異世界の者よりもあるかもしれない。
だが、これが世界中にあるのだとすれば流石にキツいものがある。
「…ちっ…自衛隊はまだかよ!私だけでこいつらをぶっ殺せってか?…仕方ない…」
私は懐かしい名前を叫んだ。
「サクレ!クローディア!」
サクレは勇者の時の聖剣だ。クローディアは魔王の時の大鎌。
案の定、空に影が見えて、サクレとクローディアは猛スピードでやってきて私の前で急停車した。
「…久しぶりに、やりますか」
2つをひっ掴んで、それぞれ構える。
それから、走り出した。
20XX年5月20日。
その日、他の世界と繋がり、人を襲う化け物が地球へ入り込んだ。
多くの人が死に、多くの国が機能を停止した中、2つの地域が少ない被害で済んでいた。
1つはイギリスのロンドン。
もう1つは日本の京都。
その2つを拠点に、我々人類は化け物と戦うことになった。




