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TOD  作者: ナナシノススム
後半
241/284

後半 07

 鉄也達、ダークやライトは交代で休憩を取りつつ、それぞれが少しでもできることをしていた。それは、孝太が亡くなったことがショックで、後回しになってしまったものを少しずつでも進めていくことだった。

 鉄也は、通信障害がどの範囲で発生していたかを確認した。その結果、孝太達がいたとされるファーストフード店を中心に、周囲50メートル程度の範囲に広がっていたことがわかった。

 また、影響を受けたシステムと、そうでないシステムの違いとして、通信しているかどうかだろうといった予想を立てたうえで、その原因を探った。そして、それを今後の対策に繋げようと考えていた。

 一方、圭吾は先ほど起きると、翔に指示された場所へバイクを置きに一旦外へ出た。ただ、比較的近くだったようで、すぐに戻るとのことだった。

 また、孝太の件は、和義かずよしにも伝わっている。ただ、和義は自分の役割として、セレスティアルカンパニーのシステムを解析することに集中している。

 それから、他のダークやライトのメンバー達は、引き続き監視カメラの映像を監視し、ほんの少しの異常も見逃さないように集中していた。

 そうしていると、圭吾が戻ってきて、鉄也に話しかけてきた。

「鉄也、さっき外へ出た時、あのファーストフード店の店長から……システムのログといえばいいのか? 何かよくわからないものをもらったんだ」

「そんな説明でわかるわけねえだろ。とにかく渡せ」

 圭吾が持っていたのはSDカードで、その中には、エラーが発生した時、その原因を探るのに必要なログが入っているようだった。そのため、何かヒントになればと鉄也はSDカードを受け取ると、すぐに確認した。

 しかし、どういったエラーがあったのか、ログを見ても一切わからなかった。

「ダメだ。原因はわかりそうにねえ」

「何かヒントになるようなことも残されてないのか?」

「現状わかってることから、特に進展はねえよ。恐らく、通信系の障害なんだろうけど、それでシステムが破壊される理由がわからねえ。……なんて話を圭吾にしてもしょうがねえか」

「確かに、こういう話は苦手だ。ただ、通信系の障害だというなら、信号までおかしくなってたのは何でだ?」

「信号機もネットワークと繋がってるんだ。それで、混雑状況によって変わるタイミングをずらすことで、少しでも混雑を緩和する目的があるそうだ」

 恐らく、圭吾が理解することはないだろうと思いつつ、鉄也は簡単にそんな説明をした。

「そうだとしたら、相当広い範囲で他の信号にも被害が出ないとおかしくないか?」

「ああ、だから、近くにある電子機器を破壊する、EBと呼ばれるものが使われてると考えてたんだ。ただ、そうだとしたら様々なことをコンピュータで制御してる車とかバイクにも被害が出るはずなのに、そうなってなかった。まあ、通信をしてるカーナビとかは被害が出てただろうが……」

「よくわからないが、その通信をすることでシステムを破壊できないのか?」

「そんなこと……」

 一瞬、否定しかけたが、鉄也はふと思い付いたことがあり、改めてログを確認した。ただ、確認したのは、既に調べたどんなエラーがあったかということでなく、どういった通信をしていたかというものだ。

 いつの時間帯にどれぐらいの年代の人が来て、さらにはどんな商品を購入したかといった情報を、ファーストフード店やコンビニでは記録している。そして、そうした情報を基に、商品展開や広告などを考えて、売り上げに繋げている。

 そうしたことを知ったうえで、鉄也は、通信障害が発生する直前、どんなデータを受信していたかを調べた。その結果、あることに気付いた。

「起きてる奴は、全員聞いてくれ! 通信障害の原因について、手掛かりになるものを見つけたかもしれねえ!」

 それから、鉄也は和義にも連絡した。

「和義、遅い時間に悪いが、今は大丈夫か?」

「大丈夫だけど……もうすぐ朝だし、むしろ早い時間じゃん」

 そんな言葉を返されて、もうすぐ夜明けなのかと鉄也は感じた。

「和義、少しは休んでるのか?」

「大丈夫。仮眠はちゃんと取ってるよ」

「それなら良かった。それより、これから全員に聞いてもらいてえ話があるんだ。和義も一緒に聞いてくれ」

「オッケー。何かな?」

「今、スピーカーで和義の声もここにいる全員に聞こえるようにした。何か意見があったら言ってくれ」

 そんな前置きをしたうえで、鉄也は話を続けた。

「通信障害の原因について調べてたんだが、やってることは単純で、周辺にある通信……正確には、受信をしてるシステムに対して、あるデータを送り付けることで、システムを破壊させるというものだと思う」

「いや、それはもう考えたよ。俺が前にセレスティアルカンパニーのシステムをダウンさせたのも同じような方法だからね。でも、それはセレスティアルカンパニーのシステムにバグがあったからできたことで、今は通用しないよ」

「そのバグ、ホントにもう残ってねえのか? 何かしらかの形で、今も残ってて、しかもそれがセレスティアルカンパニーが管理するネットワーク……いや、それ以外のネットワークにも影響を与えてるんじゃねえか? そして、それを悪魔が利用してる可能性があるんじゃねえか?」

「絶対ないとは言えないけど……鉄也がそこまで言うってことは、何かあるんでしょ? それを先に教えてよ」

 そう言われて、鉄也は先ほど調べていたことを改めて確認した。

「ああ、そうだな。さっき通信障害があったファーストフード店のログを圭吾がもらってきたんだ。今、和義にも送るから、確認してほしい」

「オッケー。あ、届いたよ」

「エラーのログには、特に何も残ってなかった。その代わり、通信障害が発生する直前にどんなデータを受信したか調べたら、妙なものを見つけた」

「今見るよ。えっと……何だこれ?」

 鉄也と同じように、和義は異変を感じたようだった。

「どう思う?」

「これ、単に最新のメニューを本部から受信したり、客が何を買ったか記録したり、そういうログしか残らないはずだよね? それなのに、何か変なデータ……というより、プログラムを受信してるじゃん」

「あいにく、そこでログが途切れてて、どんなプログラムを受信したかはわからねえ。それに、仮にプログラムを受信したとしても、それがすぐに実行されることはねえはずだ。ただ、そんなものを受信したのに、何のエラーも出してねえのはおかしいだろ?」

「そうだね。セレスティアルカンパニーのセキュリティシステムに引っかかって、そもそも受信しないはずなんだけど……」

「だから、何かしらかのバグが残ってて、特定のプログラムを受信した瞬間にシステムが破壊されるようになってるんじゃねえかと考えてるんだ」

「そうなると、エラーがログに一切残ってないのも納得だね。システムは正常に動いてたって判断してるんだろうね」

 和義の言う通りで、圭吾から渡されたログは、一見すると何の異常もなく、稼働し続けているかのような印象を受けるものだった。それは、正常に稼働した結果、システムが破壊されたということを表していた。

「問題は、これがセレスティアルカンパニーの管理するネットワークにだけ影響するかどうかだな。それこそ、俺達が管理してるネットワークにも同じような影響があると思うか?」

「分けてるといっても、ネットワークは繋がってるからね。俺達のネットワークも、基本的にセレスティアルカンパニーのシステムを利用しつつ、監視されないようにしてるってだけだし、同じような影響を受けそうだね。実際、俺がセレスティアルカンパニーのシステムをダウンさせた時、他のネットワークもダウンしたからね」

「俺も同じ考えだ。だから、どうすればそれを防げるか考えたい。それで、ここにいる全員で、そうした対策をすぐ実行できるようにしたいんだ。ただ、和義には、解析を続けてほしいから、俺達は何をすればいいか、指示をくれ」

「相変わらず無茶なことを言ってくるね。まあ、受信したプログラムの一部がログに残ってるじゃん? それを受信しないようにするって方法が簡単にできるから……いや、これだと完璧じゃないね」

 和義の提案は、鉄也だけでなく、他の人に頼む形でもすぐにできることだった。ただ、提案した和義自身がすぐに完璧じゃないと付け加えたため、鉄也は戸惑った。

「完璧じゃねえって、どういうことだ?」

「鉄也の言う通り、特定のプログラムを受信することが原因でシステムが破壊されてるとして、その特定のプログラムが一つとは限らないじゃん? だから、一つを防いだところで、いくつもあった場合、防ぎ切れないでしょ?」

「だったら、どうすればいい?」

「トラップというか、むしろ向こうの想定外のバグを起こそうよ。こういうのを考えるの、楽しいんだよね」

 和義の嬉しそうな声を聞いて、思わず鉄也も笑みが浮かんだ。同時に、今の和義に何を伝えれば喜ぶかもわかった。

「さすが、セレスティアルカンパニーのシステムをダウンさせただけのことはあるな」

「嬉しいこと言ってくれるじゃん。それじゃあ、こんなのはどうかな?」

 その直後、和義から送られてきたものを鉄也は確認した。

「まず、システムが破壊されるのを防ぐため、そのプログラムを受信した瞬間にシステムを止めるようにしようよ。止まるのも痛いけど、破壊されるよりはマシでしょ? 今送ったの、前に作ったハッキング対策のプログラムで、ハッキングをかけられた瞬間にシステムを止めてくれるものだよ。それを少し修正すればいけるでしょ?」

「ああ、わかった。これなら、すぐにできそうだ」

「あと、そっちに置いてある盗聴器も使えるんじゃないかな? あれ、受信したデータを記録するだけで、何か他の処理が動くってことはないじゃん? だから、それを使えば、どんなプログラムを受信したのか確認できるよ」

「確かに、使えそうだな」

「それで、メインになるトラップの話だけど、システムが停止した瞬間、その付近の出入口を全部ロックしちゃおうよ。やり方は単純で、出入り口をロックするシステムだけ単独化した後、通信ができるシステムで間接的にロックしないよう制御するんだよ。それで、制御してるシステムが停止したら、自動的にロックがかかるようにすれば、悪魔がシステムを破壊した瞬間、付近の出入り口を全部ロックできるでしょ?」

 和義のアイデアは、なかなか興味深いものだった。考え方としては、自動的にロックがかかるようにした出入口を用意した後、通信を行うシステムで無理やり開けた状態を維持するというものだ。そうすることで、通信を行うシステムが停止すれば、そのタイミングで出入口にロックがかかるようになるというわけだ。

「閉じ込められれば一番いいけど、それは難しいだろうね。でも、元々迷路みたいになってる、その周辺がさらに複雑になれば、いい足止めになるんじゃないかな?」

「そうだな。それはいいアイデアだ。仮に悪魔の襲撃を受けたとしても、地の利を使えるからな」

「とりあえず、鉄也達が動きづらくならないようにしてね。まあ、出入口、一杯あるから大変だと思うけど、みんなで頑張ってよ」

「ああ、和義に話を聞いて良かった。あとは、こっちでどうにかできるから、和義は解析を続けてくれ。さっき言った通り、バグが残ってねえか、改めて調べてみてほしい」

「オッケー。解析を続けながら、一緒に調べてみるよ」

 そうして、和義と連絡を終えた後、鉄也はそこにいた者達に顔を向けた。

「今、聞いてもらった通りだ。いつ何があるかわからねえから、すぐに対応してほしい」

「はい、わかりました」

 それから、それぞれ手分けをしつつ、周辺のシステムを修正していくことにした。

「俺は何をすればいい?」

「圭吾にできることは何もねえから、その辺で寝てろ」

「鉄也が売ってきたケンカを買うことはできるぞ?」

「圭吾さん、運んでほしい物があるので、手伝ってください!」

 ライトの一人が、鉄也と圭吾のケンカを止めるように焦った様子でそう言ったおかげで、ケンカになることはなかった。

 それから、鉄也は他の者に指示を出しつつ、和義の言う通りにシステムの修正を進めていった。

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