サイドストーリー・再会
『異世界ライフの楽しみ方』のメインストーリーは完結しています。
NEXT STORYから始まる物語は全て後日談であり、連載されるかどうかは神のみぞ知るです。
静かな空間。
神界と呼ばれる場所で、マチュアがのんびりとティータイムに勤しんでいる。
始原の創造神の依頼を終えて一週間、マチュアは彼方此方に顔を出しては何事もなかった事を確認。
まあ、移動したタイミングの時間軸に戻って来たので、何も起きている筈がない。
「ふぅ。お茶が美味しいわ……しかし、随分と久しぶりなのかな?」
向かいの席に座っている侍。
その彼にもとっておきのマルムティーを差し出すと、マチュアは笑顔で問いかけた。
「ほっほっ。拙者にとっては、生ある時間こそが大切。マチュア殿が我々の前から立ち去った事など、拙者も死ぬまでは知らなかったでござったからなぁ」
侍は笑顔でマチュアに返事を返す。
初めて会った時よりも、彼の今の肉体は若く精悍である。
天寿を全うして十年。
彼は、ようやく冥王の赦しが出たので、転生の枠から寄り道をして、この場にやって来た。
「でもさ。向こうの私の話では、亜神化もエターナル化も断ったんだろ? ここに来た理由は?」
「向こうで亜神化したら、こちらのマチュア殿の手伝いが出来ませぬからなぁ」
「そうかいそうかい。それで、ここに来たのはあんただけ?」
「拙者の死後、十四郎も冥界に来ましたな。でも彼は速やかに転生の道を選びましたぞ」
「へぇ。今頃は何をしている事やら。まあ、奴の事だから、新しい主人を見つけて、またニンジャをしているんだろうなって予想は付くけどね」
空になったティーカップにマルムティーを注ぐと、マチュアはアプルパイを綺麗に切り分ける。
その一つを侍に差し出すと、懐かしそうに食べる彼をしばらく見ていた。
「十四郎かぁ。出来るなら、私の元に来て欲しかったけどね」
「転生の枠に乗るときに、冥王から特例措置を貰ったとか言ってましたなぁ……たった一度だけ、彼から手紙が届きましたぞ」
「手紙?」
「うむ。転生後に一度だけ送れる、知人達への手紙です。マチュア殿はこっちの世界の人間なので、冥界に向けられた手紙を受け取る事は出来ないのでしょう。今の彼は、とある機動戦艦の主人の元で働いているそうです。二十四の伝承宝具の一つを身に付けて……」
──ブーッ!!
力一杯、紅茶を吹き出すマチュア。
「おおう、その様子では、どうやら心当たりがあるようですな」
「心当たりも何も、その機動戦艦ってアマノムラクモとか言わないよな? いや、あのダーツシステムで手に入る機動戦艦はアマノムラクモだけだし……いや、まあ、いいや」
自分なりに納得すると、マチュアは心を落ち着かせてマルムティーを飲む。
そして暫くの間、侍との楽しい話に盛り上がっていた。
──カチッ、ボーン、ボーン
やがて時計が鳴り響くと、侍は立ち上がる。
もう、時間である。
これから彼は、転生の道を進む。
「しっかし。冥王の判決は『修羅の道』だよな。転生後も血塗られた道を歩む事になるんだが、その覚悟はあるのか?」
「記憶も全て失い、一からやり直す。それもまた、新たな道。そして、冥王殿には、もう伝えてあります。拙者の転生先は過去、そして、今度は十四郎と正面からやり合える道を進みたいと」
その言葉を聞いて、マチュアは一瞬だけ目を伏せる。
かつては仲間だったものが、転生後には敵同士となって戦う。
そんな姿は見たくなかったが、彼らは戦士であり武士。死地に生を得るのが道ならば、それをマチュアが阻む道理はない。
「そっか。じゃあ、斑目も元気でな」
「ほっほっ。すぐに帰って来ないように、頑張ってみるでござる」
そう告げてから、斑目は右手を上げて歩き始める。
やがてその姿が霧のように消えていった後で、マチュアは空を見上げる。
「創造の力を持つ破壊神……でも、全てを好きに出来ない。人間よりも、少しだけ便利な力だけど……心はまだ神に成り切れていないからなぁ」
せめてもと、マチュアは転生後の斑目に加護を一つだけ与える。
それは何の事はない、他愛のない加護。
一度だけ、完全なる死を逃れる。
その加護はやがて、彼の敗北による死を無効化し、再生する事になるが、それはまだ先の話。
かつて斑目と呼ばれた、幻影騎士団の侍マスターは、とある世界で鬼神・有川義光となるのだが、それはまた別の世界の物語である。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。






