エピローグを語ろう・その2・カルアドのマチュアと平穏な時間
『異世界ライフの楽しみ方』の更新は、毎週火曜日、木曜日、土曜日を目安に頑張っています。
ジ・アース、白亜の回廊。
4大陸を統べる魔人族の王を討伐し、彼らの所持していた世界の天秤のパーツを全て回収したマチュア一行。
無事に世界の天秤を再生し、悲願である世界の修復を終えると、マチュアはライナス達に別れを告げ、世界の天秤に封じられていた秩序の女神テンバランスと共に、この始まりの場所である白亜の神界に戻って来た。
そして戻って来たマチュアに対して、ガイアを除く全ての神が拍手を贈っていた。
――パチパチパチパチ
「おめでとうマチュア。そしてこのジ・アースを救ってくれた事に感謝する」
「うむ。最後の決断をライナスに託すとは、思い切った事をする」
そう褒めてくれる神々に対して、マチュアは後頭部をポリポリと掻きながら笑った。
「いやぁ‥‥私じゃあんな答えは出せなかったからねぇ‥‥あれで正解だと思うよ、うん」
「正解なんかじゃありませんわ‥‥どうしてマチュアさんが告げてくれなかったのですか。これでジ・アースは魔人族も人族と共に生きる世界になってしまったではありませんか‥‥私は最初から話していましたよね、人間族に世界を取り戻して欲しいって‥‥」
回廊の片隅‥‥というかは判らないが隅っこでしゃがんで回廊に『の』の字を書いているガイアがぶつぶつと文句を言っている。
だが、マチュアはそんな事気にする様子もなく一言。
「まあまあ、これ何事もなく無事平穏。これで正解ということで、そんで私の次の行かないとならない世界はどこじゃらほい? The・ones様が迎えに来るのかな?」
きょろきょろと周囲を見渡すマチュアだが、その背後からストームがのんびりと歩いて来る。
「やあフェルドアースの水無瀬真央。俺は新しい創造神のストームだ」
いきなり聞こえて来た声で、マチュアは慌てて後ろを振り向く。
そこには、白銀の全身鎧に身を包んだ武闘派創造神のストームが立っていた。
「うぉう、よく見たことあるファンタジーライフ・オンラインのストーム。って事は善か。えぇっと‥‥ルーンスペースの善、だよね? どもども初めまして、フェルドアースの真央です」
「ああ、なんかややこしいが初めましてでいいのか。あんたの中にはルーンスペース真央の記憶もあるんだろう?」
「んーちょいまってね、引き出し入れ替えるから」
両こめかみに人差し指を当ててうーんうーんとうなり声をあげるマチュア。
そして魂の中にある真央の記憶から、善の記憶も全てひっぱりだした。
瞬時に深淵の書庫を発動して全てをすり合わせて一つにまとめると、マチュアの中にあった残っていた記憶の欠損が全て補われていったのである。
「いよっし!! 記憶の整合性取れたぞと。そんでストームが創造神ってことは、私の次に救う世界を教えてくれるの?」
「そういうこと。そんじゃ行ってみようか‥‥」
そう告げてから、ストームは銀の鍵を取り出して空間に扉を開くと、最後に振り向いて一言。
「あ、ジ・アースの管理神から、一人、統括管理神を選抜しておいてくれ。そいつにはエリュシオンに駐留して仕事をしてもらう事になるからな」
――ガチャッ
それだけを告げて、ストームはマチュアを連れてカルアドに向かっていった。
「「「「「「「「「「えええええ!!!!!!」」」」」」」」」」
まあ、世界を根底から改変しようと考えているストーム。
ゆえに、全ての世界から統括管理神を集めて、権限を振り分けるのが目的の模様。
そしていきなり告げられたジ・アースの神々に合掌‥‥チーン。
〇 〇 〇 〇 〇
目の前に広がっているのは荒涼たる世界。
カルアドの神界は次元階層ではなく、星の中央にある聖域に存在している。
深い霧の結界に阻まれ、神威を持つもの以外は通り抜けることのできない島。
その中央にある巨大な神殿に、マチュアはストームと共にやって来た。
「‥‥おわぁ。私はここで何するものぞ?」
「それじゃあ簡単に説明するぞ。フェルドアース・マチュアは今から、このカルアドの秩序の女神アーカムとなって、この世界をのんびりと見てみて欲しい」
‥‥‥
‥‥
‥
「へ?」
一瞬の沈黙。
マチュアはおもわず耳を疑い、ストームをまじまじと見る。
「マジ?」
「まあ、フェルドアースで本気と書いてマジと読むならマジ。ということで紹介します、先代カルアドの秩序の女神のマチュアさんと、その分身体のマチュア・マジックジャーです」
――ヒュンッ
突然マチュアの目の前に二人のマチュアが姿を現した。
そして三者三様・お互いの顔をじっと見ているとルーンスペース・マチュアは魔人ルナティクスに姿を変えた。
「ほら、混乱しないようにこれでいいだろ? という事で、これが現在起きた全ての事象。これを補うための作戦がこっち‥‥どっちも取り込んで、すぐに理解しろ」
そう説明してから、ルナティクスは記憶のオーブを二つ作りだしてからマチュアに手渡した。
すぐさま魔力分解して読み込むと、マチュアは頭を抱えてその場に蹲ってしまう。そしてその様子をマジックジャーもワクワクしながら眺めている。
「それで‥‥ややこしいからルナティクスって呼ぶぞ、マジックジャーの仕上がりはどんな感じだ?」
「まあ、最後の一仕事で終わり。その仕事はストームの仕事な」
そう言われて、ストームはマジックジャーをじっと見る。
「あ、なるほどな。仏作って魂入れずの状態か。なら、マジックジャー・マチュアに命ずる。カリス・マレスの統合管理神としての権限と神威を与え、破壊神マチュアからその世界の権限を譲渡されるよう……これで良いな?」
──ヒュゥゥゥゥン
ストームの宣言ののち、マチュア・マジックジャーの魂が管理神の上位へと昇華する。
種族も管理神となり、新しい神の一人となって再誕した。
「さて、そんじゃもう一つ。私ルナティクスからマチュアへ、私の持つ眷属神への権限と名義、加護を全てあなたに引き継ぎます……」
──ブゥン
両手を合わせて生み出した『神威のオーブ』。それをマチュアに手渡すと、マチュアはそれを体内に取り込み、新しく生まれた神核にそれを統合した。
──シュゥゥ
ゆっくりと元マチュアの持っていた権限が新マチュアに書き込まれると、一時間後には全ての権限が移譲された。
それをティータイムを楽しみながら、ルナティクスはのんびりと眺めている。
その傍らでは、フェルドアース・マチュアが秩序の女神アーカムとなり、ストームとカルアドの大地母神フォルテシモから様々なレクチャを受けている。
「はあ、基本的にはやる事がないと?」
「はい。まだこの世界には、新しい人種が少ないのです。ですので、秩序の女神アーカムとしての仕事は、そうですねぇ……世界の散歩という事で」
これまたあっさりな説明をするフォルテシモだが、そもそも秩序の神の仕事は世界のバランスを取る事、そして外敵が出た際に対しての対処がメインである。
「はぁ、成程。それで、私は人の姿で散歩してよろしいので?」
「マチュアの姿はダメですよ?貴方からはマチュアのアバターを取り上げさせてもらいます。同じ場所に二人のマチュアがいてはいけません。ただし、あちらのマチュアさんにはこの世界の鍵を預けたままですので、この世界に人が来る為の導き手としての仕事は引き続きマチュアさんにお願いします」
つまり。
新マチュアの仕事は今まで通りに、異世界大使館責任者としてカルアドにやってくる人々の管理を、秩序の女神アーカムは速やかに神としての管理を行うようにと権限を分離したのである。
「ん〜、そのアーカムって名前も変えますか。確かマチュアさんの眷属にもアーカムっていますよね?」
「ええ。書き換えるなら今ですよ?人の深層心理での書き換えなので、人種の少ない今なら簡単に終わらせられますから」
そう告げられてフェルドアース・マチュアは腕を組んで考える。
「では、秩序の女神ではなく『秩序の神・カルラ』でお願いします」
──ヒュゥゥゥゥン
すぐさま事象が書き換えられ、フェルドアース・マチュアはユウという名前に変わる。
それに伴って外見も元の水無瀬真央を少し若くした出で立ちとなり、体内からマチュアのアバターが消滅した。
「へぇ。ユウってことはあれか、宇堂悠か。また懐かしい名前だな」
水無瀬真央が現世界で遊んでいたネトゲのキャラクターの名前の一つが、宇堂悠。
その外見に全てが切り替えられたのである。
「さて、それではここからは貴方の仕事。まずはこの聖域について説明しましょう。創造神ストーム、そして破壊神マチュア、この度はご足労いただき有り難うございました」
フォルテシモが二人に頭を下げる。
なのでルナティクスは手をひらひらと軽く振るだけ。
「良い良い。むしろ私のわがままで迷惑かけたね、ごめんね」
「これでカルアド関係は全て終わり。そんじゃ次行こうか」
「へ?次?」
「そう言うこと。目的地はエーリュシオン、神様ズの構図を全て書き換える‼︎」
その爆弾宣言ののち、ルナティクスはゲートを開く。
目的地はエーリュシオン大神殿。
そこであてふたしている管理神達の元へと3人は向かった。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
そのちょっと前のエーリュシオン
「ぬぁぁぁぁ、統合管理神って何よ、私達ではダメなの?」
「こ、これは創造神殿の謀反である‼︎誰かストームをお諫めしろ‼︎」
「さて、それではそれがしのこの肉体美を以て!ストーム殿を止めるとしましょうか」
秩序の女神ラスティ、正義神クルーラー、武神セルジオが大広間でオロオロしている最中、イェリネックやエクリプスたち三魔神はどっかりと座ってティータイムを楽しんでいる。
「あ〜、別に良いのではないかのう」
「イェリネックに同じく。我々の力が大きすぎる故の決断ならば、創造神の結論に異を唱える事は出来ぬであろう?」
「そう言うこと。まあ、ストームが来てから慌てれば良いのでは?」
そう呟いている三魔神、そして近くでのんびりと談話している精霊王アウレイオースと次元神・天狼。
大慌てしているのは三神のみという、実に不思議な光景である。
「アウレイオース、それに天狼。何故そんなに余裕なのですか?事は私達の立場も揺るがすものなのですよ?」
「まあまあ。例えそのような事があったとしても、創造神の決断は絶対、誰も逆らえませんよ?」
「そ、そうですけれど……」
そうアウレイオースなら窘められて!ラスティも意気消沈。
──ヒュゥゥゥゥン
すると、部屋の中央に銀色に輝く扉がゆっくりと形作られていった。
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。






