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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
第八部 異世界の地球で色々と

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日常の章・その13 進化した盗賊団

 街道から外れて森を駆け抜ける。

 馬車は途中に放置して、冒険者一行はゴブリンの集落へと向かっていく。

 急げ、急げ、急げ

 先程広場で見た光景、スモールドラゴンが三匹、ゴブリンの集落を襲っている。

 急がなくては、拐われた者達が危ない。


――ゴゥゥゥゥゥッ

 ドラゴンの吐き出す灼熱の息によって、集落は燃え上がっている。

 必死に逃げ延びるゴブリン達を、完全武装した男達が後ろから襲う。

 ゴブリン達もやられてなるものかと必死に抵抗するものの、圧倒的な数で制圧されていく。

「急げ、地球人アーシアンを連れてずらかるぞ」

 ひとりの男が縛られている女性を抱えて叫んでいる。

 そこにサイノス達は飛び込んでいくと、襲いかかる男達を切り捨てていく。

「き、貴様たち何者だ‼︎」

「悪いが、拐ってきた人達は返してもらうよ。悪く思わないでくれな」

 ザックスとサイノスのパーティーは二手に分かれ、混乱した状況から拐われた人達を探し出す。

 幸いなことに男性一人と女性一人を抱えていた者達はすぐに見つかったのだが、相手もかなりの手練れ、一筋縄では行かないらしい。


――ピッピッ

「ドライ、今どこにいる?お前が付いていて何が起こったんだ?」

『誠に申し訳ない‥‥影縫いで身動き取れませぬ』

「まだ小屋か?」

『ええ。三人とも拐われました』

「了解。すぐに一人向かわせる」

――ピッピッ


「さて、うちのドライの上をいく敵かぁ‥‥何者だ?」

 念話での会話を終えると、マチュアはすぐさまフィリアに状況を説明した。

「フィリア、済まないけれど打ち合わせにあった小屋にドライがいるから救援をお願い。私は残り一人を探します‼︎」

「了解さ〜‼︎」

 すぐさま連続瞬歩で小屋に向かうフィリア。

 そしてマチュアはと言うと、横で飛んでいる棚橋に防御魔法を再度施す。


――ブゥゥゥン

「対象指定・敵性防御と‥‥棚橋さん、取り敢えず貴方に簡易的な防御結界を施しましたので、万が一敵に攻撃されても‥‥もしもし、聞こえてますか?」

 結界についての説明をしていたのだが、当の棚橋は目の前で起きている光景に身震いしていた。

「こ、これが冒険者‥‥これが殺し合い‥‥」

 むせかえるような血の匂いと光景で、吐き出さないのは大したものである。

 腰が多少引けているものの、この場から逃げたりしない。

 流石は戦いの中に身を置いて来ただけはある。

「棚橋さん、当初の予定が狂うのはよくある光景です。誰か棚橋さんのガードをお願いします」

「マチュアさんはどうするのですか?」

 そう棚橋に問われると、マチュアは空を見上げる。

「一人攫われたままなので救出します。飛行するドラゴンなんて、私ぐらいしか追いかけられないので」


 未だスモールドラゴンは上空を飛び、しかもその背中には人が乗っている。

 マチュアが最初に見たレザーアーマーの男が、スモールドラゴンに装着されている手綱を握って飛んでいた。

 しかも、残りの二匹のスモールドラゴンにも人が乗って飛翔しており、そのうちの一体には拐われた女性も載せられている。


 すると、後衛に下がってきたメレアが棚橋とマチュアの乗っている絨毯まで駆けつけてきた。

「マチュアさん、こっちは私が」

 叫びながらすぐさまメレアが絨毯に飛び乗り、ゆっくりと高度を上げる。

「ここはメレアに任せるわ。棚橋さん、彼女の指示に従っていて下さい」

 上がり過ぎない高度を維持すると、マチュアはすぐさま箒を取り出して上昇を開始する。

「そ、こ、の、ドラゴン‼︎地球人アーシアンを返しなさいっっ」

 箒に魔力を注いで加速するが、ボスらしい男と地球人アーシアンを乗せたドラゴンは加速を開始、もう一体が反転してマチュアの方を向いた。

「アコース、その女を殺せ。ガンズ行くぞ‼︎」

 ボスが叫ぶと同時にガンズと呼ばれた男がドラゴンを加速させた。

「させませんよっ」

 マチュアも箒で加速するが、アコースのスモールドラゴンが回り込んで行く手を阻む。

「邪魔なのよっ。悪いけど相手している時間がなくてね‥‥光の矢ライトニングアローっっっっ」

 マチュアの周囲に立体魔法陣が展開すると、そこから無数の光の矢が飛んで行く‼︎


――シュシュシュンツ

 計12本の光の矢がアコースの乗っているドラゴンに飛んで行く。

「そんなヤワな魔法ごとき、食らうと思うのかよ」

 すぐさま体勢を低くしてスモールドラゴンを加速させるが。

「魔法を躱せると思うなって‼︎」

 高速で光の矢から逃げるスモールドラゴンを、マチュアの放った矢が追跡する。

 だが、光の矢は対象を捉えるとどこまでも追跡するタイプ、マチュアを足止めしなくてはならないアコースは、矢から逃げる事しか出来ない。

「そのままどっかに逃げて下さいなっと」


――ブゥゥゥン

 さらに箒に魔力を注ぎ、地球人アーシアンを載せているガンズのスモールドラゴンの横を並走する。

「この野郎っ」

 手綱に魔力を通して、ガンズはドラゴンの速度を下げてマチュアを前に向かわせる。

――キィィィン‥‥ドゴォォォォォッ

 ガバッとドラゴンが口を開くと、そこから火球を吐き出した。

「うわっ‼︎そんな事まで出来るのかよ」

 マチュアも箒を操作して火球を躱すと、大きく回ってドラゴンの横に向かって一直線に飛んでいく。

――ガチャッ

 するとガンズも左手で手綱を取って、右手にショートソードを引き抜いた。

「おもしれぇなぁ。イーストウッドの流星の異名を持つ俺とやり合うとはなぁ」

「そんな名前知らないわぁぁぁぁ」

 ドラゴンの真上を交差するように飛ぶと、マチュアは箒から飛び降りてガンズの真後ろに降りた。

「ば、バランス悪いわっ‥‥」

「そりゃあそうだ。ほら、こうしたらどうする?」

――ガクン

 いきなりドラゴンの胴体がぐるっと回る。

 背面飛行の状態を取ると、ガクガクと体を揺さぶる。

 攫われた女性は鞍にくくりつけられているが、ロープがたるんでぶら下がる体勢になった。

 そしてマチュアは、体勢を崩されて振り落とされないように、なんとか尻尾にぶらさがっている。

「往生際が悪いぜ。とっとと落ちちまいなよ」

――ガクガク

 体勢は戻ったものの、ドラゴンは尻尾をブンブンと振り回す。

 それでも自慢の筋力でしがみついているのは大したものである。

「そ、そこまでやるのなら覚悟は出来ているんでしょうねぇ‥‥イーディアス‼︎」

 突然ドラゴンの背中中央に魔法陣が展開する。

 すると、そこから魔法鎧メイガスアーマー・イーディアスが呼び出されると、突然スモールドラゴンの速度と高度がさがっていく。


――ガクン

 いきなり自身の背中に重さ12tもの重りが乗ったのである。

 墜落するのは必然であろう。

 マチュアもすぐさまイーディアスの胸部ハッチの中に転移すると、左腕に構えた盾の先をドラゴンの背中に向ける。

――ガシィィィィィィン

 タワーシールドの中心に組み込まれた、高速杭射出装置パイルシューターが稼働し、ドラゴンの脊髄を打ち砕く。

 これは以前マチュアがベルナー王城の鍛治師に依頼していたもの。

 それを大型化したのである。

――グゥォォォォォォォォッ

 絶叫を上げながら空中で暴れるスモールドラゴン。

 やがて飛行することもできなくなると、地面に不時着する。

「今だっ」

 スモールドラゴンが着地する瞬間に、マチュアは地球人アーシアンの下まで駆けつけると、囚われていたロープを引き千切る。

――ブチブチブチィィィッ

「よし、このまま離脱するって」

――シュンッ

 地球人アーシアンを抱き抱えると、すぐさまマチュアはゴブリンの集落に転移した。


 ‥‥…

 ‥‥

 …


 死屍累々。

 どうにか鎮火した集落には、無残に殺されたゴブリンたちと野盗の死体が大量に転がっている。

 ちょうど盗賊の生き残りがいないか見回っていたサイノスがいたので、マチュアはそっちに歩いていく。

「ええっと、魔法鎧ですか。中はマチュアさん?」

――プシュゥ

 胸部ハッチを開いて顔を出すマチュア。

「あたり。サイノス、この子を棚橋さんの所に届けてくれる?」

「はい。では一足先に戻りますね」

 助け出した地球人アーシアンを抱き抱えると、サイノスは後方の馬車まで戻って行く。

 それを見送ってから、マチュアは集落を見て回った。

 生き残ったゴブリン達は散り散りになって逃げたらしく、この場には生存しているゴブリン達はいない。

 ならば。


――グルルルルルルル

 マチュアに向かってスモールドラゴンが威圧している。

 マチュアによって脊髄を砕かれたドラゴンである。

「流石はモンスターの王様、生命力は凄いなぁ」

 そう呟いていると、やがてドラゴンも最後の気力を使い切ったらしく、ゆっくりと頭を下げて、そして眠るように死んでいった。

「あの場は仕方なかったんだよ。ごめんな」

 死んだドラゴンの身体を軽く撫でると、マチュアはドラゴンの真下に魔法陣を作り出し、物言わぬドラゴンの死体を地面に埋葬した。

 そして再び集落を見て回ると、もう一匹のドラゴンが佇んでいるのを見つけた。


「こっちは傷だらけだが生きているか。これ、どうするかなぁ」

 墜落して虫の息のスモールドラゴン。

 翼はマチュアの放った光の矢でズタズタになり、近くには身体が真っ二つに折れて死んでいる盗賊の姿もある。

「‥‥殺すのも忍びないからなぁ‥‥」

 ぐったりとしてゼイゼイと息をするドラゴンの頭に近づくと、その額に手を当てる。

「さて、ドラゴンテイマーの本領発揮なるか。慌てない。怖がらないで、いい子だから‥‥」

 かつてサーベルタイガーを従えたことのあるマチュア。

 ここは昔取った杵柄で、ドラゴンを従わせようと試みる。

 右手がゆっくりと輝くと、マチュアの名前を示す魔法紋様がドラゴンの額に浮かび上がる。


――ブゥゥゥン

 すると、険しかったドラゴンの表情が穏やかになる。

『グルゥゥゥゥゥ』

 マチュアに何かを訴えるように鳴くと、マチュアはすぐさま傷の手当てを始めた。

「よしよし。中治癒でいいか。飛べるようになればいいんだけどなぁ」

 右手をドラゴンの身体に添えて魔力を流し込む。

 やがて全身の傷が輝くと、見る見るうちに塞がっていく。

――シュゥゥッ

 それは魔法によって破られた飛膜も修復する。

 軽くバサッバサッと翼をはためかすと、ドラゴンもその場で座り込む。

「調教コマンド‥‥私の仲間は襲わない。命令がない限り人間は襲わない‥‥良い?」

 マチュアの言葉に額の紋章が呼応するように輝く。

 このコマンドには強制力はないが、知識を持つものはマチュアの言葉を理解する事か出来る。

 カクカクと頭を縦に振っている所を見れば、どうやら納得はして貰えたらしい。

「さて、それじゃあ戻りますかぁ」

 

 魔法鎧メイガスアーマーを戻してからドラゴンの背中にある鞍に跨る。

 そして手綱を握った時、マチュアは思わず手綱を離してしまった。

「こ、これは魔道具か。これでドラゴンを使役していたというのなら、かなり厄介だなぁ」

 再び手綱を握ると、魔力を注がないで馬のようにドラゴンをコントロールする。


――フワッ

 ドラゴンの翼に魔力が宿ると、軽く羽ばたくだけで飛翔を始めた。

「これでようやくおしまいだなと。まずはみんなと合流しますか」

 ゆっくりと上昇し、途中で馬車を止めてきた場所まで戻っていくと、マチュアはザックス達が集まっている場所に降り立った。


「う、うわぁ‥‥ってマチュアかよ。どうしたんだこれ?」

 空からスモールドラゴンが降りて来たので、ザックス達は身構えたらしい。

 だが、その背中からマチュアが飛び降りるのを見て、武器を納めた。

「ん?捕まえて使役した。私の新しい乗り物だね‥‥そこで待機しててね?」

 スモールドラゴンの頭を撫でながら話しかけると、ドラゴンもコクコクと頷いている。

「相変わらずの規格外だなぁ。これだから トリックスターは‥‥」

「何でも出来るんだからいいの。さてと、棚橋さんはと」


 先に助けられた二人の地球人アーシアンは馬車の近くで待機している。

 今はメレアが三人の怪我の具合を確認していた。

「メレア、三人の怪我は?」

「怪我はないのですけれど、拘束の術式で身動きが取れませんわ」

 その説明を聞いて、マチュアも三人の術式を見てみるが、地球人アーシアンに施されている拘束術式を見て驚いた。

「へぇ。魔術強度A-って所かぁ、メレアこれ解呪できる?」

「無理ですわ。解呪は専門ではありませんので‥‥」

「なら私が‥‥」

 右手に魔力を注いで、ゆっくりと解呪する。

 そして拘束の術式が解かれた途端、女性はその場にへたり込んで泣き叫んでいた。

「あ〜はいはい。メレア任せたわよ。私はあっちの二人も解呪するから」

「了解ですわ」

 そのまま棚橋たちの元にいる二人も解呪する。

 却下リジェルトなら簡単だが消費魔力が高くつく。

 ならば少し時間が掛かるが正規の解呪で解放した。

「うっ‥‥うううっ‥‥」

 咽び泣く女性と、どうしていいかわからない表情の男性。

「さて、棚橋さん、こちらにサインをお願いします。依頼は囚われていた人々の救助、無事に終わりましたので」

 泣いている三人の近くで、ザックスが依頼完了のサインを棚橋に求めた。

「あ、ああ、そうですね、任務は救助でしたね」

 呆然としながらもサインをする。

 やがて地球人アーシアンと棚橋も馬車に乗り込み、一路カナンへと帰還して行った。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 救出された三人は一旦日本大使館に保護された。

 すぐさま棚橋の指示で解放された三人のケアを始めたらしいが、マチュアと棚橋は冒険者ギルドへと向かう事にした。

「‥‥しかし、飛び出したドライを影縫いした挙句に拘束するとはねぇ。あんた仮にもミスリルゴーレムでしょうが」

「い、いや、それが‥‥」

 弁解無用。

 と言ってしまえばおしまいなのだが、忍術と中位魔術を併用で使える存在など、マチュアでも殆ど見たこともない。

「ドライ、あなたを止めたのは多分人間じゃないかもね」

「その方が助かりますよ。人間の、それも盗賊に拘束されたなんて、ツヴァイやファイズにバレたら何を言われるか」

「まあ、相手は只の盗賊ではない事も理解したわよ。魔力でスモールドラゴンを使役する盗賊なんて相手したくはないわ‥‥またきな臭くなって来たわよ」

 そんな話をしていると、やがて一行は冒険者ギルドへと到着した。


 ザックスとサイノスも報告書を提出して報酬を受け取ると、すぐさま酒場に向かう。

 ドライは一旦異世界ギルドに戻り、マチュアも酒場に入っていった。

 まずは一息とエールを頼むマチュア。

「さて、仕事明けの一杯と‥‥私は依頼報酬貰えないから自費なのよねぇ」

 クビッと一口のどに流し込むと、注文した焼いた腸詰めもやって来る。

 それをモグッと齧り付き、再びエールを流し込む。

 一杯目のエールが空になり、二杯目が届いた頃に棚橋も手続きを終えてやって来た。

「おや、マチュアさんもここに居たのですか」

「ええ。仕事明けの一杯ですよ。殆どの冒険者は仕事が終わったらここに来ますよ。報酬の分配などもありますからねぇ。棚橋さんも飲めば良いのに」

「いえ、夕方の鐘の音がなるまでは勤務時間です。飲む訳にはいきませんよ」

 そう説明して、棚橋はフレッシュジュースを注文する。

 それでまずは喉を潤すとマチュアと話を始めた。


「さて。今回の邦人がさらわれた件について、私は日本国に報告しないとなりません。そこで、今一度異世界での冒険者のあり方について、色々と指導しなくてはならないと感じました」

「まあ、初級冒険者がモンスターや盗賊に襲われるのはたまにあるよ。気にしなくても良いと思うんだけれどなぁ」

「確かに冒険者は自己責任です。命のやり取りがあるのは分かっています。問題なのは、冒険者になった人達の倫理観の崩壊です」

「へ?」

 二杯目のエールを飲み干して頭を捻るマチュア。

「崩壊するの?」

「討伐任務でモンスターや盗賊を殺す。私達日本人にはありえない事態ですよ。ハンターが熊や鹿を狩るのとは訳が違います」

「人に害をなすものを討伐する。それが動物か魔物かモンスターか人か。それだけの違いよ」

 手をヒラヒラと振る。

 元日本人のマチュアでさえ、今は生き物を殺すのには躊躇ない。

 生きる為には必要ならば。

 まあ、余程の事がない限りは拘束してお終いなのはいつもの通り。

「マチュアさんはこの世界の人間ですから、私たちの倫理観は理解できないでしょう。罪は償わなくてはならない、法の下にね」

「こう見えても異世界大使館のカナン大使ですよ?日本にいる限りは守るべき法ぐらいは遵守していますし、させています。ですが、ここカリス・マレスでは私達の法に従ってください」

「それは承知していますよ。では、日本国に提出しなければならない書類も作らなくてはなりませんので」

 それだけを告げて、棚橋は酒場を後にした。


「ふぅ。また国会で色々と言われるぞ。それに、あの三人はもうカリス・マレスには来ないだろうからなぁ」

 拐われて売り飛ばされそうになり、三人を助けだす為に大勢の人々が武器を手に戦った。

 この事実だけでも、三人が二度と来ないのは理解出来る。

「これが日本で考えると‥‥海外でテロがあって拐われたのを、特殊部隊が駆けつけて救出した‥‥怖いわ」

 グイッとジョッキに残ったエールを飲み干すと、マチュアは馴染み亭ではなく異世界ギルドに飛んでいく。

 スモールドラゴンの背中に乗ってテクテクと歩いていくと、遠くから騎士団が駆けつけてくる。


「そこのドラゴンは止まれ‼︎貴様は何処のどいつ‥‥またマチュア様かぁ」

 駆けつけた騎士の中にファイズがいた。

 そしてドラゴンの背中で笑っているマチュアを見て脱力している。

「はろう。これ、私のドラゴン。捕まえて使役したので殺さないでね」

「あの、暴れません?」

「シスターズなら使役できると思うよ。それに怖くない。クロウカシスの眷属だから、餌は魚と果物とかだろうし」

 そのマチュアの言葉に、騎士団員がそーっと近づいて頭を撫でようとする。

――グッグッグッグッ

 喉を鳴らすかのように頭を下げると、騎士団員が撫でているのに目を細めて喜んでいる。

「これは‥‥マチュア様、是非騎士団に‼︎」

「やらん。けれど、もし野良ドラゴン見つけたら殺さないで弱らせて捕まえて来てくれたら使役してあげる。それじゃあね」

――ノッタノッタノッタノッタ‥‥

 ゆっくりと歩いてサウスカナンへと向かうマチュア。

 あちこちの商人や冒険者も、マチュアのその姿を見て驚いている。


「‥‥魔法鎧メイガスアーマーの次はドラゴンとは。マチュアさんは本当に暇なんですわね」

 正面から馬車に乗ったカレンがやってきた。

 荷馬車一杯に荷物を積んでいるところを見ると、どうやら仕入れの帰りなのだろう。

「いいでしょう。色々あって捕まえた」

「その色々が怖いんですけれど。あ、ストームから伝言ですわ」

 ふと思い出したように手をポン、と叩くカレン。

「へぇ、何かな?」

「ロットがとんでもないミスをしたので西方大陸行ってくると」

――ガクッ

「あ、あの阿保ロットめ。今度は何をやったのやら」

「ストームは笑いながら話してましたわよ」

「笑いながらという事は、致命的だがストームが許せるミス。それで西方大陸……エイジアか。ストームは後、暗黒大陸を制覇したら東西南北中央不敗だな」

 東の和国、西のエイジア、北のグラシェード、そして中央のウィル大陸。

 正に各地で不敗の名を重ねている。

「まあ!ストームも同じ事話してましたわよ。その何とか不敗ってどなたですか?」

「ええっと。私とストームの魂の師匠?そんな感じです」

 嘘ではない。


「へぇ。マチュアさんとストームの師匠かぁ。会ってみたいですねぇ。今は何処に?」

「永遠に会えない場所かな?」

 そう呟くと、カレンは視線を落とした。

 マチュア達の師匠は死んだのだと、勘違いしているのだろう。

「ちなみに死んでないわよ。ある意味不老不死だからね」

「え?」

 ガハッと顔を上げるカレン。

 先程までの笑みも帰ってきた。

「まあ、一度ぐらいストームの顔見てきますか。大使館の仕事で連休取れないかなぁ‥‥」

「それはマチュアさんの権限でどうとでもなるのでは?」

「なるけどねぇ。正直言うとこっちでやらないとならない事が増えるかもしれないのよ」

 淡々と説明すると、カレンは頭を捻る。

「まさか戦争とか?」

「ないない。今戦争しているのはウィル南方とエイジアの国。ラグナ・マリアが戦争になる事はないわよ。問題なのはこれ」

 ボンボンとスモールドラゴンの背中を叩く。

「これって、ドラゴン?まさかまたクロウカシスが?」

「ちゃうちゃう。これを盗賊団が自在に乗りこなしていたのよ。多分この手綱で操っていたんだろうけれど、こんな魔道具を何処からどうやって?しかも盗賊団のレベルが上がっているのが問題なのよ」

 組織的に強くなっただけでなく、個々にも強くなりつつある。

 それが問題なのである。

「しばらくは安心だろうけれど、カレンも気をつけてね?」

「了解しましたわ。では、私はこれで」

 ニッコリと頭を下げると、カレンは商人ギルドに向かって馬車を進める。

 マチュアもサウスカナンに向かうと、とりあえずはギルドの横の空き地にドラゴンを繋ぐ事にした。


 なお、ギルド内でマチュアはツヴァイから思いっきり突っ込まれた事は言うまでもない。



誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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