第51話 向き合う、避ける
ここ最近、凛の様子が明らかにおかしい。俺が声をかけても、彼女はすぐに話を切り上げようとするし、笑顔もどこかぎこちない。あれほど楽しく話せていたのに、今ではまるで避けられているようだ。
図書室でも顔を合わせなくなった。以前は毎日のように一緒にオタクの話で盛り上がっていたけれど、それももう過去の話だ。
凛は明らかに距離を取っている。そして、その理由が俺には全く分からない。
「……俺、何かしちゃったのかな。」
考えても、思い当たる節がない。けれど、凛が俺を避けているのは確かだ。それが辛くて、胸の奥がモヤモヤしている。こんな状態が続くのは嫌だ。
凛が何を抱えているのか分からないけど、このまま彼女が遠ざかっていくのを見過ごすわけにはいかない。
──ちゃんと、凛に向き合おう。
俺は心の中で決意を固めた。今まで、避けられていることに気づいても、どう接していいか分からなくて流されてきた。
でも、凛とは今まで通り、オタク仲間として楽しく話していたい。そのためには、彼女が抱えているものとしっかり向き合わなければいけない。
凛が何に悩んでいるのかを知りたい。どうして距離を取るようになったのか、その理由を聞きたい。
そうしなければ、今までのように気軽に話すことなんてできない。
「明日……凛に話をしよう。」
決意を固めた俺は、学校で凛を探して、ちゃんと話をすることにした。彼女にとって何が負担になっているのかを知って、そこからもう一度、ちゃんと二人の関係を築き直そう。
俺にできることは、凛に正面から向き合うことだ。たとえ彼女が今俺を避けていたとしても、それをそのままにするつもりはない。オタク仲間としての大切な関係を失いたくないから。
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「もう、無理だ……」
田中先輩を避け続けて、どれくらい経っただろう。最初はそれで気持ちを抑えられると思っていた。
けれど、先輩に会わないようにすればするほど、先輩のことを考えてしまう。距離を置けば置くほど、逆に先輩への想いが強くなっていく。
「これじゃ、意味ない……」
避けることで感情を整理するどころか、むしろ余計に苦しくなっている。学校で先輩を見かけるたびに、胸がドキドキして、声をかけたくなる衝動を抑えるのが辛い。
今までは自然に話せていたのに、今は一言でも話しかけられると、感情が溢れてしまいそうになる。
「もう、どうすればいいか分からない……」
恋愛感情なんて、持ちたくなかった。先輩とはただのオタク仲間でいたかったのに、今ではそんな風に接することができない自分がいる。
それが嫌で、逃げ続けてきた。けど、避けても避けても、この気持ちは大きくなるばかりで、私の中に溜まっていく。
ある日、私は廊下で田中先輩の姿を見つけた。視線が合うかもしれないと分かっていたのに、また逃げ出そうとしてしまう。けれど、足が止まった。
「逃げても、何も変わらない……」
自分にそう言い聞かせながらも、逃げるのは怖い。それでも、目の前にいる先輩に気持ちが伝わってしまうことが何よりも怖かった。どうすればいいか、分からない──だから、遠ざけるしかなかった。
だけど、もう限界だった。胸が締めつけられるように苦しい。先輩に会いたい。話したい。でも、それは叶わない。今の私は、先輩の前に立つのも怖くなってしまった。
「このままじゃ……本当に壊れちゃう。」
距離を取ることで、少しは楽になると思っていたけれど、逆にどんどん苦しさが増している。限界だった。このままじゃ、私はどうにかなってしまいそうだ。
教室で机に突っ伏しながら、私はどうすればいいのかを考えていた。だけど、何も思い浮かばない。もう、どうすればいいのか分からない。
先輩に想いを伝える勇気なんてないし、この気持ちを隠したまま一緒にいるのも無理だ。
「いっそ……全部伝えちゃえば、楽になれるのかな……」
でも、そうしたら今までの関係は壊れてしまう。オタク仲間としての楽しかった時間が、全部消えてしまう。だから、伝えられない。
「どうしよう……」
私は自分の気持ちに押しつぶされそうだった。誰にも相談できず、ただ一人で抱え込むしかない。限界だった。自分の中で、これ以上この感情を抑え込むことができなくなっていた。




