第48話 ますます大きくなる気持ち
「どうしよう……」
自分の中に芽生えた気持ち。それをどう処理していいのか、まったくわからない。
私は、田中先輩のことを好きになってしまった。
オタク仲間として、ただ楽しい時間を共有できる先輩。それだけだったのに、気づいたらいつも先輩のことを意識してしまっている。
先輩と話していると楽しいけど、その楽しさが、今ではだんだん苦しくなってきた。
「どうして、こんな気持ちになっちゃったんだろう……」
自問自答しても答えは出ない。ずっとこのまま、オタク仲間として、先輩との関係を続けられると思っていたのに。
それが一番幸せで、一番安心できるはずだったのに……。
その日も、放課後の図書室で田中先輩といつも通り会話をしていた。先輩は楽しそうに、アニメやラノベの話をしている。私も笑顔を作って相槌を打っていたけれど、心の中では別のことを考えていた。
「このまま、先輩と一緒にいていいのかな……」
先輩は私にとって大事な存在。だからこそ、気軽に話せるオタク仲間として、このままの関係を壊したくない。
でも……今の私の気持ちを隠して、このまま一緒にいられる自信がない。
先輩の笑顔を見るたびに、胸が苦しくなる。もっと一緒にいたい、もっと先輩のことを知りたい──そう思うたびに、オタク仲間としての「普通の関係」が遠ざかっていく気がして、怖くなる。
「──凛、最近なんか元気ないけど、大丈夫か?」
田中先輩がふと心配そうに声をかけてくれる。その優しさに、私は余計に胸が締めつけられた。先輩は何も変わっていない。
いつも通り、私に優しく接してくれているだけなのに、私だけが勝手に苦しんでいる。
「う、うん、大丈夫です!ただ、ちょっと疲れてるだけで……」
私は慌てて笑顔を作る。でも、その笑顔は偽りだった。先輩には何も気づかれたくない。
でも、私の中での葛藤は日に日に大きくなっていった。
「このままじゃ、ダメだ……」
ある日、私は心の中でそう呟いた。田中先輩に恋愛感情を抱いてしまったこと、それを無視して今まで通りに接するのは、もう無理だと感じ始めていた。
先輩と話していると、どうしても自分の気持ちを隠しきれなくなってしまう。
「もし、この気持ちがバレたら……」
そんな不安が頭をよぎる。もし田中先輩が私の気持ちに気づいたら、今の関係はどうなってしまうんだろう?先輩はどう反応するだろう?きっと戸惑わせてしまう。そんなことになったら、二人の関係は壊れてしまうかもしれない。
そう考えると、ますます苦しくなった。先輩に恋愛感情を持ってしまった自分が嫌で、どうすればいいのか分からない。
ただ、これ以上一緒にいると、ますますこの感情を抑えられなくなりそうで怖かった。
「……距離を置くしかない。」
私はそう決断するしかなかった。今のまま、先輩と接していたら、いつか自分の気持ちが先輩に伝わってしまうかもしれない。
そんなことになったら、二人の関係は今まで通りには戻れないだろう。
「少し、先輩から離れよう……」
そうすれば、この気持ちも少しは整理できるかもしれない。そうすれば、また普通のオタク仲間として、先輩と接することができるかもしれない。
そう自分に言い聞かせるように、私は少しずつ田中先輩を避けるようになっていった。
******
「凛、最近あんまり図書室に来ないよな。なんかあったのか?」
ある日、田中先輩が心配そうに話しかけてきた。私はなるべく自然な顔で答えようとする。
「えっと、ちょっと忙しくて……他にやることがあって、それで図書室に行けてないだけです。すみません。」
言い訳をしながら、私は自分の胸が苦しくなるのを感じた。先輩は何も変わっていないのに、私だけが先輩を避けている。先輩に申し訳ない気持ちが込み上げてくる。
でも、これ以上一緒にいると、今の私では自分の気持ちを抑えられない。だから、先輩と距離を置くしかない。そうしないと、きっと私は壊れてしまう。
その日以来、私は図書室で田中先輩と一緒に過ごす時間を減らした。先輩からの誘いも断るようになり、学校で顔を合わせても、なるべく早くその場を離れるようにしていた。
先輩のことを避けるたびに心が痛んだけれど、それでも距離を取らなければいけないと思った。
「このまま、先輩のことを忘れられたらいいのに……」
だけど、どんなに距離を置こうとしても、先輩のことを考えない日はなかった。
避けているのに、気持ちはますます大きくなっていく。私の心はますます乱れていった。




