第46話 後輩オタク仲間との日常
放課後の図書室には、いつものように穏やかな静けさが漂っていた。人が少なくなり、静まり返ったこの時間は、俺にとってのひとときの癒やしでもあった。
「田中先輩、見ました?あの最新作のアニメ!」
隣に座っている後輩の西野凛が、興奮気味に話を切り出す。
その瞳はいつも以上にキラキラと輝いていた。彼女と話していると、自然と俺も楽しさが倍増する。
「もちろん。あの展開、予想外すぎたよな。まさかあそこで主人公があんな選択をするとは思わなかった。」
俺も自然と乗り気で話し始めた。凛は俺と同じくラノベやアニメ、ゲームといったオタク趣味を持つ仲間で、話しているとつい時間を忘れてしまうことがよくある。
彼女とは気が合うし、何よりも趣味が同じだから、こうしてアニメやラノベの話で盛り上がるのが楽しい。
「そうですよね!あのシーン、感情が揺さぶられました。主人公の葛藤があそこまでリアルに描かれるとは……思わず泣いちゃいましたもん。」
凛が少し照れくさそうに笑いながら言う。彼女の反応を見て、俺も自然と笑顔がこぼれる。
「わかるよ。俺もグッときた。でも、あの後の展開がどうなるのか気になるよな。次回が待ち遠しい。」
「ほんと、それです!次回はどんな伏線が回収されるのか……それを考えるだけでドキドキします!」
凛は興奮を抑えきれない様子で、さらに話を続けた。彼女がこんなに感情を露わにして話すのは、こうしたオタク趣味の話をしている時くらいだ。
普段は少し控えめでおとなしいけれど、趣味の話になると途端に活発になる。
俺たちはこの空間で、時々顔を見合わせながら、次々に話題を広げていった。
新作アニメ、読んだばかりのラノベ、そして最近ハマっているゲーム……話題は尽きない。
凛は話しながらも、時折楽しそうに頷き、俺の意見に共感してくれる。
「そういえば、田中先輩が勧めてくれたあのラノベ、読んでみました!すごく良かったです!」
凛がにこにこしながら言う。その言葉に、俺はちょっと嬉しくなった。誰かに自分の好きな作品を勧めて、それを気に入ってもらえるのは、オタクとして最高の瞬間だ。
「マジか!良かったなら何よりだよ。あれ、面白いだろ?キャラが立ってるし、ストーリーも緻密だし、伏線回収も完璧だしな。」
「うん!特に主人公とヒロインの掛け合いが最高で……あ、すみません、なんか私ばっかり話しちゃって。」
凛は急に照れたように頭を掻く。その姿が少し可愛らしくて、俺は笑って「気にするなよ」と軽く返した。
「いやいや、いいんだよ。お前が楽しんでくれてるなら、俺も嬉しい。」
「ありがとうございます……田中先輩、本当に優しいです。」
凛は少しだけ顔を赤らめながら、そう言った。いつものように和やかで、楽しい時間だった。
俺たちの間には、特別な空気が流れているわけではないけれど、こうして気軽に話せる関係が心地よかった。
俺たちのこうした時間は、いつまでも続いていくような気がしていた。
気楽に話して、互いに笑い合い、ただ楽しいことを共有する。それが俺と凛の関係だったし、特に変わることはないと思っていた。
「それにしても、田中先輩とこうしてお話しできるの、本当に楽しいです。先輩と趣味が合うのが一番嬉しいですし……いつも、ありがとうございます。」
凛がぽつりとそう言った。彼女の言葉は穏やかで、どこか落ち着いた感じがした。
「こちらこそ、いつもありがとう。こうやって一緒に話してるの、俺も楽しいし、また次の作品の話でもしような。」
「はい!楽しみにしてます。」
凛の笑顔は、いつもと変わらない。
──だけど、その笑顔の裏に何かが隠されているとは、この時の俺にはまだ気づけていなかった。




