第27話 久しぶりの再会
放課後、いつも通りの帰り道。今日は特に何も考えず、ただ家に向かって歩いていた。頭の中では、やっぱり水瀬のことが少しずつ浮かんでは消えていく。けど、今はそのことを深く考えすぎないようにしていた。
「おーい、光!」
突然、後ろから元気な声が聞こえた。振り返ると、そこにはサッカー部のエース、南良哉が笑顔で手を振っていた。
彼とは一年生の時に隣の席になり、それ以来の付き合いだ。俺が恋愛相談キャラになるきっかけを作った人物でもある。
「良哉……久しぶりだな。」
俺がそう言うと、良哉は肩に掛けていたスポーツバッグをポンと手で叩きながら、歩み寄ってきた。
「いやー、最近どうよ?相変わらず恋愛相談キャラしてんのか?」
良哉は軽い調子で話しかけてくる。彼の明るくて屈託のない性格は、いつも周りを元気にさせる力がある。昔から、彼と話していると自然と笑顔になってしまうのだ。
「まぁ、ぼちぼち……って感じかな。そっちはどうだ?サッカー部、相変わらず忙しそうだな。」
「おう!試合が近いから、こっちはバタバタだよ。でもな、あいかわらず彼女とはうまくいってるぜ。お前のおかげでな!」
良哉はそう言って、ニカッと笑った。一年の時、彼から最初の恋愛相談を受けた時のことが頭に蘇る。
あの時、俺が彼にアドバイスしたことで、彼は彼女と付き合い始め、今でもその関係は続いているらしい。俺もその話を聞いて、少し誇らしい気持ちになった。
「それはよかったな。まあ、あれはお前が頑張ったからだよ。俺はただ相談に乗っただけだし。」
「いやいや、あの時のお前のアドバイスがなかったら、今の俺はないぜ。マジ感謝してるよ。」
良哉は肩をポンと叩いてきた。彼の力強さに、俺は少し照れくさい気持ちになりながらも、彼の存在が俺にとっても大きかったことを再確認した。
「で、お前はどうなんだよ?最近、誰かいい感じの子でもいるのか?」
良哉はニヤリとしながら、俺に軽い調子で聞いてきた。さすが、昔から人の心の中を読み取るのが上手い奴だ。俺は一瞬ドキッとしながら、どう答えるべきか迷った。
「……まあ、特にそういうわけじゃないけど。」
俺は視線を逸らしながら、適当に流そうとしたが、良哉はすぐに察したようだった。
「おいおい、光。お前がそんな曖昧な返事するってことは、何かあるんだろ?お前がそんな顔するの、珍しいぜ。」
良哉はニヤニヤしながら俺の顔を覗き込んでくる。その視線から逃げるように、俺は少しだけ言葉を選びながら口を開いた。
「……まあ、ちょっと気になる人はいるかな。」
その瞬間、良哉の目が輝いた。彼はニヤリと笑い、俺の肩をまたもや軽く叩いてきた。
「ほらな、やっぱりな!で、どんな子なんだよ?教えろよ!」
「別に、そんな話すようなことじゃないけど……」
俺は照れくさくて言葉を詰まらせた。水瀬のことを、どう話せばいいのかも分からなかったし、まだ自分の気持ちを誰かに打ち明けるつもりもなかった。
でも、良哉はそんな俺の気持ちを汲んでか、少しだけ真面目な表情になった。
「まあ、無理に話す必要はないけどさ、恋愛相談キャラのお前が恋愛してるって、なんか新鮮だよな。」
彼はそう言って、軽く笑った。俺もその言葉に少しだけ笑顔が戻った。良哉には不思議な力がある。どんなに緊張していても、彼と話していると自然と落ち着いてくる。
「まあ、そうだな……でも、まだどうなるか分からないし、俺も自分の気持ちがよく分からないんだよ。」
「ふーん、なるほどね。まあ、ゆっくり考えればいいんじゃね?お前なら、ちゃんといい方向に持っていけるだろうし。」
良哉はそう言って、軽く俺の肩を叩いてきた。彼のその言葉に、少しだけ肩の力が抜けた気がした。
「じゃあ、俺はそろそろ部活に行くから。またな、光!何かあったらいつでも相談しろよ!」
良哉はそう言って、手を振りながら走り去っていった。俺は彼の後ろ姿を見送りながら、ふと立ち止まって、水瀬のことをまた考え始めた。
「ゆっくり、か……」
良哉の言葉はシンプルだったが、その中に何かヒントがある気がした。焦る必要はない。少しずつ、水瀬との関係を深めていけばいい――そう思えるようになってきた。




