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第71話 責任取ってください

「おはよう、ステラ」


いつものように、さわやかな笑顔で挨拶してくるエド。


「ええ、おはようございます。エド」


腕組みして返事をする。

そして両親は扉の陰から何故か隠れて様子を伺っている。


「ステラ……何だかいつもよりその……機嫌悪くないか?」


「何故そう思うのですか?」


「いや、何だか目が笑っていないと言うか……」


「私が機嫌悪そうに見えると言うことは、何か心当たりでもあるのでしょうか?」


「そ、それは……悪かったかな、って思ってるよ」


そこへ、両親が扉の隙間から飛び出してきた。


「何がどう悪かったと言うのです!?」


「エド様、ステラを泣き寝入りさせるおつもりですか!?」


父と母が興奮気味にエドに詰め寄る。


「ええ!? な、泣き寝入りって……ステラ、まさかあのことを話したのか!?」


エドが驚いた様に私を振り返る。


「いいえ、具体的なことは特に話していませんけど?」


「そうだよな……話せるはずは確かに無いよな」


すると私とエドの話をどう勘違いしたのか、増々両親がヒートアップしてくる。


「ふたりとも! 親の見ている前で、なんて話をしているんだ!?」


「ええ、そうですよ! こうなったらエド様に責任を取って貰いましょう」


母がエドに視線を向ける。


「せ、責任……随分大袈裟ですね……」


エドがたじろぎながら首を傾げた。うん、確かに私もそう思うけど……でも、食べ物の恨みは恐ろしいのだと、食い意地の張ったエドに分からせるには丁度良いだろう。


「どうなのだね? エド様。ちゃんと責任を取って貰えるのでしょう?」


エドが王族だと言う事を知らない父は、彼に迫りまくる。


「分かりました、責任を取りましょう」


ついに観念したのか、エドは頷いた。


「よし! 確かに約束しましたからね!? ならこれで一安心だ。ステラや?」


突然父が私に声をかけてきた。


「はい、お父様」


「後のことは我々に任せておきなさい。さ、大学へ行っておいで」


「行ってらっしゃい、ステラ」


父と母が笑顔を向ける。


「は、はぁ……行ってきます」


こうして私はエドと共に、馬車に乗り込んだ――




「エド、それで私から奪ったエコバッグはどうしましたか?」


「あ~……あれかぁ……」


エドは私から視線を逸らす。ま、まさか……。


「エド……まさかとは思いますが、全部食べてしまったわけではありませんよね?」


「ほ、ほら。アレだ。目が覚めたらあの部屋に戻っていたんだよ。そして見るとエコバッグがあるじゃないか。ステラはまだ眠っていたし……アレの中身を誰かに見られたらまずいだろうと思って、持ち帰ったんだ。それで少しだけ味見をしてみたら‥‥‥その、手が止まらなくなって……」


段々、エドの声が小さくなっていく。


「まさか全て食べ尽くしてしまったんですか!?」


「すまない!」


私の怒りの声と、エドの謝罪の言葉が同時に重なる。


「酷いじゃないですか! 貴重なお菓子を……! もう一度食べたら補充されないのに!」


「本当に悪かったと思ってるよ! だから、責任は取るってステラの両親に誓っただろう?」


「責任……本当にとってもらえるのでしょうね?」


「勿論。俺に出来る事なら何でも言ってくれ」


コクコク頷くエド。


「なら、次の復讐に手を貸して貰いますからね?」


「分かったよ。それで俺は何をすればいい?」


「では、カレンとデートの約束を取り付けて下さい」


「は……? デート……? デートだって!?」


エドが半分悲鳴交じりの声を上げた――

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