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第37話 何故私が?

 その声に驚いて振り向くと、私以上に驚愕の表情を浮かべているカレンの姿があった。

そして勿論彼女の背後には取り巻きの男3人衆がいる。……そこには当然エイドリアンの姿はない。


「エドワード王子様! 何故ステラさんと一緒にいるのですか?」


私に視線を向けることもせず、涙目でエドに訴えてくるカレン。そしてそんな彼女の様子をじっと見守る3人のナイト? 達。


「何だ、また君か……? 何故、ステラと一緒にいるのか理由を話さなければいけないんだい?」


面倒くさそうに答えるエド。


「そ、そんな……酷い……」


酷い? これくらいのことで酷いと言うなんて……呆れてしまう。

どうやらこのカレンの中にいる人物は、私のように社会の荒波に揉まれた経験など無いのだろう。

世間知らずのお嬢様だったのだろうか?


背後に控えている3人のナイトたちは、ぐっと堪えるように口を閉ざしている。

恐らくエドが王族だから、歯向かうことが出来ないのだろう。


素晴らしい! 権力、万歳!


「ちょっと! ステラさん! 酷いじゃないですか!」


「はい!?」


すると、驚くべきことに何故かカレンは私に怒りをぶつけてくる。


「あの……私の何処が酷いの?」


すると、男どもが喚き始めた。


「何だと! 自分の罪を分かっていないのか!?」


「心当たりが無いなら胸に手をあてて思い出してみろ!」


「エイドリアンに何をしたんだ!」


その言葉に、ピンときた。


「エイドリアン……? あ、そういうことか……」


「ほら! やっぱり! 今朝、エイドリアン様が皆と一緒に迎えに現れなかったから、おかしいと思ったんです! いつも私の送り迎えを忘れなかった、あの人が!」


カレンが金切り声を張り上げて、私を避難し続ける様を他の学生たちは静かに傍観している。


……何かがおかしい。

エイドリアンは私の婚約者だったのに、(もっとも彼に関しては1ミリの興味もないが)カレンの取り巻きのひとりだった。

普通に考えれば非難されるべきはカレンであるはずなのに、何故声を上げる学生がここにはいないのだろう?


「ちょっと! 黙っていないで、何とか言ってみたらどうですか!」


ヒステリックに叫ぶカレン。


「そうだ! カレンの言うとおりだ!」


「何て目で見てるんだよ! 本当に目つき悪いな!」


「カレンを泣かせるなんて……やっぱりお前は悪い女だ。この悪女め!」


もうメチャクチャだ。

目つきが悪いのは仕方ないし、カレンのほうが余程悪女に見える。


そしてエド。

何故彼は傍観しているのだろう? 私達……友達同士なんだよねぇ!?


「エ、エド……」


友達ならなんとかしてよ!


必死で目で訴えると、エドは私を見つめてニコリと笑う。次に、肩を抱き寄せてきた!


「さっきから、黙っていれば……君たちは随分好き勝手なことをステラに言ってるじゃないか? 大体、エイドリアンはステラの婚約者なんだろう? それなのに、何故君の家に送り迎えさせていたんだ? 目つきが悪いのはステラのせいじゃないだろう? それにたった今、彼女のことを悪女と言ったが……俺には君のほうが余程悪女に見えるけど?」


「そ、そんな……! エドワード王子様……?」


カレンの顔が真っ青になる。


「とにかく、俺の恋人に酷いことをするのはやめてくれないか?」


そしてエドは私の肩を抱き寄せてきた。


「こ、恋人!? う、嘘ですよね!? そんな設定……信じられません!」


カレンが激しく首を振る。


え? 設定……? 設定って何のこと?


すると――


「もういい、行こう。カレン」


3人衆の中で一番イケメン男(もっともエドとは比べ物にならない)が、声をかけてきた。


「アンドレ様……」


カレンが涙目でイケメン男を見上げ、彼らはヒロイン? を取り囲んで連れ去って行く。


ふ〜ん……彼がアンドレか。もしかすると、あの人物もいたりして……。

そんなことを考えていると、メガネ男が立ち止まって私を振り向いた。


「覚えてろよ」


メガネ男性が吐き捨てるように私に文句を言い捨てると、カレン達の後を追いかけていく。


「はぁ!?」


何で? 何で私が「覚えてろよ」と言われなくてはならないのだろう?

今カレンを非難したのは私ではなく、エドだよね?


「エ、エド……」


恨めしそうな顔でエドを見上げる。しかし、私の気持ちに彼は気づこうともせず笑顔を向けた。


「どうだ? 見事に追っ払ってあげただろう? 今日のお昼が楽しみだ。何しろ助けてあげたんだから……当然くれるよな? オベントウを」


「はぁ!?」


追っ払った? エドのせいで余計恨みを買った気がするのは……うん、多分気のせいではないだろう――




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