第7話(累計 78話) 実家での捜査会議3:フィンの科学捜査
「では、爆弾について説明する。皆は黒色火薬はご存じですよね」
「うん。花火とかにも使うし、銃もそうだよね」
「炭、硫黄、硝石を混ぜて作るのでしたわよね、お兄様。銃を使う戦い方も警察や軍で研究中ですの」
フィンは今回の爆弾を説明するために、火薬から話し出す。
「マリーのいう通り。黒色火薬は銃にも花火にも使う。原料、硝石については近年、錬金術師により人の手により類似物が作れるようになった。これは肥料にも使える事は、以前私から情報を流してある」
「せんせー。せんせーは医学だけでなく他の事にもお詳しいんですね。肥料も御存じなんてぇ」
「お兄様はね、実は案外と食いしん坊なのよ。美味しいものを食べたいから、前世の知識を農業に使うんだって小さい頃から言ってましたわ。おかげで、王国の農業生産量は三十年まえからは倍くらいになってますの。ミアちゃんが好きなマッシュルームの人工栽培もお兄様の知識ですわ」
「おいおい。話が別の方向に言っているぞ、マリー。まあ、マリーの話も事実ではあるがな。民が飢えるのは正直好きじゃない……って、ミアくん。妙に感動しなくていいぞ。はぁ。事件の話に戻るぞ」
ミアの熱い視線を受けたフィンは白い頬を朱に染めつつも、ミアから視線を外して話題を元に戻した。
「今回の爆弾だが、黒色火薬では無かった。爆発時の煙が黒くない。どちらかといえば、金白色の煙が上がっていた。その上、爆心地らしき場所でも硫黄のにおいは全く感じられなかったのは、二人とも知っているよな」
「ええ。お兄様」
「そーいえば、硫黄の匂いが現場ではしなかったの。だから、ボクは爆弾だって思わなかったんだ」
……銃で撃たれると怖いから、硝煙の匂いは嗅ぎ分けるようにしているんだ。先生の検視を最初に頼んだ事件の時も、最後は撃たれそうになったし。確かに硫黄の匂いは無かったけど、何か変わった匂いはあったよね。
いくら防御魔法などを使えるミアにとっても、狙撃や不意打ちの銃撃は怖い。
だから、黒色火薬の匂いには絶えず気を付けている。
「で、更に悪質な事に爆弾には鉛の粒と鉄釘が多数仕込まれていた。その上、おそらくは鋳鉄製の容器の中にぎっしり爆薬ごと詰められていたと思われる。爆薬を硬い容器に詰め込んで爆発させると、勢いが強くなる。更に破片が飛ぶのでさらに被害が大きくなる。また、現場では多数の鉛粒や釘が発見されており、それにより傷つけられた人々が多く見られた。あれは爆弾の威力を更に上げる為に行われてるのだが、とにかく悪質だ。」
フィンは現場で発見された金属片、鉛弾、釘から爆弾を作ったものが、被害を拡大させる知識を持っている事に気が付く。
「私も前世知識として爆弾の製法は知っていたが、ココでは使うつもりはなかった。ただただ人を殺し傷つけるだけの知識は、公開したくなかったからね」
「お兄様。では、『誰か』が爆裂魔法ではなく黒色火薬以外の物を使用した爆弾を製造準備し、悪意を持って無差別テロを行ったという事のでしょうか?」
フィンは現場から発見された遺留物について報告する。
ミアもマリーも現場にいたので、木材に突き刺さった釘。
そして、しっくい壁にいくつもの穴をあけていた鉛弾など、不自然なものが現場にあったのに気が付いていた。
「おそらくは。起爆に魔法を使った可能性はあるが、あの爆発は新型爆薬によるものだろう。なにせ半径十メートル以上のクレーターが石畳を吹き飛ばして出来、五十メートル以内の建物の大半は爆風で倒壊。現場から数百メートルほどは離れていた当家にも被害が出る程だった訳だし。あそこまでの爆発を魔法で行うには、多くの魔法使いと触媒。更には儀式が必要。しかし、現実には御者一人による発動だからね」
「そんな火薬を誰が作れるのでしょうか? お兄様のように知識がある方ならいざ知らず……。あ、まさか」
「せんせーみたいに別世界の科学知識があったりする人なのかなぁ? お姉さま。心当たりありますの?」
フィンの発言に、マリーは誰が悪意の知識を使ったのか気が付く。
ミアは不思議そうに兄妹の会話を聞いていた。
「おそらくだが『結社』の者だろう。あそこは異世界から本や人材を引っ張ってきた実績がある。なれば、爆弾製造の知識を何処かで得ていてもおかしくない。後ね、マリー。これは無差別テロじゃない可能性も高い。爆弾の入っていた荷馬車は、最終的に何処に搬入される予定だったのかい? 事前にバレそうになったから口封じも兼ねて自爆したんだろう」
「……そんな!? まさか、王様らの暗殺を狙って」
「どうしてなの、お姉さま!? 王様は良い人なのにどうして命を狙われちゃうの!? 悲しいよぉ」
そして、フィンはテロが無差別ではなく特定の人物。
王や城にいる人たちを狙っての物だった可能性が高い事をマリーらに告げた。
ミアは王を狙ったテロだと聞き、憤慨する。
ミアにとって王は面白い話が出来るオジサンであり、国を正しく導いてくれている賢王。
尊敬する事はあれ、戦ったり殺す対象などに考えた事すらない。
……ボク、誰かを殺したいなんて思ったこと……。あったっけ。お父さんやお母さんを殺しに来た人を返り討ちにしちゃったし。
といって、己の手も多くの血で塗れている事を思い出し、ミアは怒りよりも悲しみを覚えた。
「そうだね、ミアくん。実に悲しい事だよ。だからね、私たちでこの事件を解決してみよう。マリー、良いかな?」
「うん、せんせー!」
「いいですわよ、お兄様。さあ、宮中伯家はこれより臨戦態勢に入ります。次なるテロを起こす前に、敵を発見。殲滅しますの。差し当っては爆薬製造の証拠固めですね。侯爵領に送っています密偵に調べさせますわ。おほほ」
フィン、ミア、マリーは、この後もどうやって「敵」を追い詰めるか話し合う。
そんな様子に前宮中伯夫妻は、己らの子達を笑みを浮かべて眺めた。
「貴方、我が家はますます安泰ですわね。フィンとマリー。そしてミアちゃんが協力すれば無敵ですの」
「そうだね。安心して隠居できそうだが、孫たちの面倒は私たちが見なきゃならんのは、気のせいじゃないかな。孫を可愛がるのも楽しそうだ」




