第5話(累計 76話) 実家での捜査会議1
「で、どうして捜査会議にかこつけて、私まで実家に引きずられなくちゃダメなのかい、ミアくん」
「だってぇ。こうでもしなきゃ、先生はご両親の処に顔を出さないでしょ。ねー、お義母様ぁ」
「ありがとうね、ミアちゃん。我が息子なら頑固で不愛想なのよ。ああ、娘が増えると家が華やかでいいわぁ」
「ミアちゃん、私もキミが来てくれると嬉しいよ。いつも治癒魔法込みのマッサージ、ありがとう。最近、体調が良くてね。今日も庭を何周も散歩できたんだよ」
文句を言いつつも、両親とミアが仲良く話しているのを見て笑みを浮かべるフィン。
顔合わせと同日にあった貴族街大通りでの大爆発事件。
フィンは事件についての科学的情報がある程度集まったので、警察機構の最高位になる宮中伯マリーと捜査会議をしようと申し出た。
だがマリーとミアに捕まり、今実家にて夕食を五人共に頂いていたりする。
なお、ミアは堅苦しいのは嫌だと義理両親に許可を貰い、いつもの動きやすい恰好。
まあ、オシャレはしたいとズボンではなくフレアスカート姿だし、三つ編みにはピンクのリボンが追加されている。
「ね、お兄様。『案ずるより産むがやすし』でしたっけ? お兄様は石橋を叩き過ぎ、考えすぎですの。たまには何も考えず、おバカなミアちゃんみたいに突撃して相手の懐に入るのも手ですわよ、おほほ」
「あー、お姉さま。またボクの事をバカって言ったのぉ。あ、お義母様。別にお姉さまに怒っていないですよ。いつもの事ですし、ボク、バカだもん」
「ミアちゃん。貴方はとっても賢いわ。マリー、フィン。ミアちゃんを遊ばないでね」
「お義母様ぁ、だーい好き!」
兄妹は、ミアがすっかり両親と打ち解けているのが嬉しくてたまらない。
幸せな笑みが増えていくのが楽しい。
「お義父さまのお顔の色が良くないのが、初めてお会いした時から気になってました。なので、一生懸命、マッサージしてみました。ボク、いつもお父さんや騎士団長さまにマッサージしているの。みんな、少しでも元気になって欲しいから」
「ミアちゃんのは魔法と愛情込みだから、すごく効くよ。腰を痛めてから宮中伯のお役目をマリーに譲っていたのだが、これなら復職も出来そうだよ」
食事中で少々無作法ながら、ぶんぶんと手を振り元気さをアピールする前宮中伯。
そんな様子にマリーはフザケながら言葉を返した。
「お父様! もう宮中伯はアタクシの天職ですの。ぷんぷん。返せと言っても返しません。その代わり、お父様はお身体をお大事になさって長生きしてほしいですわ、ね、お母様」
「そうね。貴方、わたくし達は孫や曾孫の顔をみなくてはなりませんですの。差し当ってミアちゃんの子なら男の子でも女の子でも可愛いと思いますわ」
「もー、お義母さまったらぁ。ボク、恥ずかしいですぅ」
女三人そろえば姦しいというが、姑小姑嫁の三人が仲良く語り合うのを見て、フィンは笑顔になった。
「ああ、こんな幸せ。私に来るとは思っていなかったよ。ミアくん、ありがとう」
「ん? せんせー、どうしたの。ボク、別に何もしていないよ。親孝行は当たり前でしょ?」
ミアは感謝するフィンに不思議そうな顔で答えた。
「それがミアくんの普通か。ああ、良いなぁ」
「フィン。貴方は絶対にミアちゃんを逃がさないように」
「ああ。間違ってもミアちゃんを怒らせて、離縁などにならぬように。ああ、ミアちゃんをウチの娘にしたい」
「ミアちゃん、恐るべし。我が家もミアちゃんに撃沈したのね。うふふ。お兄様、くれぐれもミアちゃんを泣かさないようにね」
フィンがふと呟いた一言。
それを聞いて両親もマリーも、ミアを逃がさない様にとフィンを追い詰める。
そんな様子にフィンは大声で笑った。
「あははあ! ああ、久方ぶりに笑ったよ。ミアくん、これからも宜しくね」
「はーい、せんせー!」
元気に手を上げるミア。
その様子に宮中伯家の食卓は笑い声が更に響いた。
◆ ◇ ◆ ◇
「では、爆発事件について科学的に分かった事を報告します。ぜひ、父上や母上からも気が付いた事を発言お願いします」
食器が片付けられ、食後の茶が配られた食堂。
そこにて、捜査会議が始まる。
フィンは各員へ植物紙に書かれた資料を渡して説明を開始した。
「せんせー。事件って言ってますが、あれは何かの事故じゃないんですか?」
「それがね。実に怪しいのよ、ミアちゃん」
「事故であれば、どれだけ良かったか。アレは意図的に行われた犯罪。テロだよ」
フィンの「事件」という言葉に首をかしげるミア。
だが、マリーもフィンも顔をしかめ、事件。
テロだと告げた。
「まずはミアくん。キミの聞き込みから話を聞こう。キミの情報だと事件だとは分からなかったんだね」
「そーなの、せんせー。ボクはね、貴族街じゃなくて市場とか下町で聞き込みしたの。ボクの捜査担当は下町だし」
「ミアちゃんには、まだ貴族街担当は無理。それに市場でのミアちゃん人気は絶大だから署長に命令して、警部補かつ騎士爵になってもミアちゃんは下町担当なの」
マリーはミアの人気度及び貴族からの妬みを避けるため、今もミアを下町担当にしていた。
「そーなんだ、お姉さま。ありがと。で、聞き込みなんだけど、事件が起きる前。下町から貴族街への門に向かう荷馬車はいくつかあったんだ。でもね、その中。今まで見たことが無い荷馬車を目撃したって証言があったんだ」
ミアが聴き込んできた内容によれば幌も無く、貨車部分を分厚い布で覆った四頭立て馬車が貴族街へ向かっていたらしい。
「普通、四頭立てなら幌付きだし、四頭も使うのは荷物が重い場合だよね。でもね、その貨車はあんまりかさばって無かったんだって。だから、気になって覚えていたって花売りのおばちゃんが言ってたよ」
「なるほどですわ。アタクシが貴族街や被害者に聞いた話と荷馬車が一致しますの」
「そうか。荷馬車に爆弾を詰めてテロを狙っていた訳だな」
夜が更ける中、茶が冷めるも報告から耳が離せない宮中伯家であった。




