第22話(累計 66話) 学長の悪あがき。
「<解呪浄化>!」
ミアは学長に向けて対死霊魔法を撃ちだす。
「ふん! 死人を滅する魔法が生者たる私に効く筈は無いではないか? 血迷ったか、小娘め。世間の噂ほどでは無いな」
だが、学長の周りで一瞬光が起きたが何も起きず、学長は平気に話す。
「あれぇ? 門番とか司書には効いたのに? せんせー、ボク嘘は言ってないよ?」
学長は血色の悪い顔をしつつミアを軽蔑の眼で見る。
そして、自分は死者ではないと言い張る。
……おかしいの! おじいさんに魂が無いのはボク、はっきり見えるのに?
ミアは、自分の感覚では魂が無いはずの学長に魔法が効かない、少なくとも反応すらしないのに不思議がる。
そしてフィンに自分を信じて欲しいと告げた。
「ああ、私はいつでもミアくんを信じる。学長、いやバケモノ。語るに落ちていますよ。その防御結界は何ですかな? また、息が苦しい程の香は何を意味しますか? この香りは、沈丁花、沈香木のもの。古来より死者の腐敗臭、死臭を隠すために使われていました」
フィンは学長の周囲に漂う結界の残渣を指し示す。
更に呼吸が苦しくなるまで焚かれた香の理由を詰問する。
「アタクシもミアちゃんを信じますわ。学長の心は全く読めない、いやヒトとしての心が無いですからね」
「私もミア様を信じます。なにせ、そちらの学長とやら。鼓動も聞こえず、呼吸の乱れすらない。生きている気配がないですから。ああ、私もこれまで見逃していたのは残念です」
ミアが心配した事はなく、フィンもマリー、更には老執事も笑みを浮かべてミアを見る。
彼女を信じていると語ってくれた。
「ありがとー、みんな。学長、もう逃がさないよ。今度は結界を叩き割ってから直接浄化させてあげるの!!」
「ああ、愚か者どもよ。何故に王立魔法学院の学長な私より、異国生まれの小娘を信用するのだ? もの共、出会え! 学院を荒らす者を捕らえるのだ!」
ミアが真紅のロッドを付きつける中、学長は何かのボタンを押し声を荒げ警備を呼んだ。
「あら、先程のアタクシたちの発言を聞いていなかったのかしら。バケモノも老人に憑くと耳も悪くなるのね。既に学院は神聖騎士団によって包囲済み。神聖魔法の使い手なら魂の有無は分かりますから、貴方がたの手の者は一掃ですの。更に警備役も全員確保済みですわ、おほほ」
「ぐぬぅぅ。小娘どもがぁぁ」
しかし、マリーの宣言通り。
一向に警備役が学長室に向かってくる足音が聞こえない。
「観念するの! さあ、このまま大人しく捕まって実験動物になるか? それともボクと戦って天国に行く!?」
「……どうして、私。いや、ワレら『星振の精』の存在を知った? ワレらは狡猾に身を隠していたはず。ハールエルフよ、異界の知識を持つオマエなら、ワレらの存在が気にならぬか。滅ぼし合うのではなく共存を。電子の海から渡ってきたワレらと共に星振の向こうへの道を……」
ミアに追い詰められて、とうとう自白をしだした学長。
いや、異界の寄生体。
フィンに向かって仲間になる様に話しかけるが……。
「貴方がたは派手に動き過ぎたから、自分で正体を知らせてしまったのですよ、学長。そして貴方がたの仲間になるのは嫌です! 確かに私には異界で生きていた記憶、知識があります。ですが、これは人々の為に使うべきで、個人の為。ましてや人々を脅かす存在に渡すモノではありません!」
「せんせー! やっぱりボクのせんせーはカッコいいの。それにね、学長。貴方は共存って言ったけど、学長らの魂を奪って殺したじゃないの!? そんなの許せない!」
フィンもミアも学長に怒りをぶつける。
自分勝手の言葉には耳を一切貸さない。
「オマエらは動物の命を奪って喰らうではないか? ワレらは魂を喰らうだけだ。この世界では実体を持たず存在が保てないワレら。生きる為には、ヒトの命を奪う。ワレらとオマエらの何処に違いがある!?」
「く。くぅぅ」
命亡き骸の学長が命を語る。
自分が生きる為に命を奪うのは、誰もが同じと。
「ミアくん。舌戦は私に任せておきなさい。確かに命を喰らうのは我々も貴方がたも同じ。そこは認めよう。それこそが原罪であり業なのだから」
「ほう、なればワレらの仲間に……」
フィンは一旦学長に同情を見せる。
生きる上での業と。
「だが、断る! 用無しになったり、ジャマになったら処分に走る者を誰が信用しようか! ミアくん、とっとと邪悪な存在を倒してください。お世話になった知人の顔で悪しき事を言うのは、私も我慢ならない」
「うん、せんせー。汝、神と信徒に悪意をもたらす者なり! <悪意感知>! さあ、いくぞ」
フィンにお墨付きをもらったミアは悪意感知をしながら、学長に飛びかかった。
「このガキがぁ。死ねぇ、<火球>」
学長は後方に飛び下がり、間合いを取りながら魔法発動体の指輪を付けた指をミアに指し示す。
そして、そこから火球魔法を撃ち出した。
「<氷球>!」
だが、後から急いで詠唱をしたフィンが青い球の魔法を火球目がけて撃ち出す。
「なにぃ!?」
「せんせー、何かするなら先に言ってよー」
真紅の火球と青い氷球が引かれるようにぶつかり合い、光と大量の蒸気を吹き出して対消滅する。
急に目の前で魔法がぶつかり合ったので、ミアはびっくりして目をパしパしした。
「ごめんね、ミアくん。学長、貴方の魔法は私が対抗します。だから、ミアくんは安心して突っ込むんだ。ふふふ、前世記憶を元にした対魔法戦闘をこれまで秘密特訓してきたかいがあります」
「お兄様、ネタ晴らしはカッコ悪いですのよ。アタクシが練習のお相手するの大変でしたわ」
フィンは珍しくドヤ顔。
自分が前世知識を駆使して生み出した対抗魔法術が成功したのが、とても嬉しい。
また練習に付き合わされていたマリーは、口元を扇で隠しつつボヤく。
「なんだとぉ! そんな情報は学長の脳には無かったぞ!?」
「油断たいてきぃぃ!」
動揺した学長にロッドの一撃を浴びせるミア。
その打撃は学長の周囲を覆う障壁に邪魔されて本体には届かないものの、障壁の一部が砕けたのをミアは見た。
「やったー。殴れば倒せるんだ。このまま押し切るよ!」
「クソガキがぁ、調子に乗るなぁぁ。<雷撃波>!」
「<地槍>、避雷針だぁぁ」
ミアを襲う雷撃。
しかしそれもフィンが唱えた魔法によって石床から生えた鋭く高い石の槍に吸収され、地面へと流される。
「このまま押し切るよー」
ミアは、一気に学長へと攻め込んだ。




