第14話(累計 第21話) ミアは今日も絶好調!
「少しは落ち着いたかい、ミアくん」
「うん、先生」
唇に紅を差した事で、フィンから綺麗と言われて暴走していたミア。
今はフィンからお茶を貰って一休み。
落ち着いて、やっと普通に話せる状態になった。
「では、色々聞きたいことがあるので、話してくれないかい?」
「はい、先生」
フィンはミアの顔、こと鮮やかな唇から視線を外しつつ、一番気になっていた事。
「それでは、最初に。今、クロエくんの様子はどうだい? お兄さんがお父様を殺した上に、あんなことになって大変だと思うのだが」
かつての教え子の動向をミアに聞いた。
「クロエちゃん。事実を知らずに兄に騙されていたことが分かり、警察からは厳重注意で許してもらいました。ですが神殿側は、騙されていたとはいえ神の御力を悪用していていた罰として、クロエちゃんは現在の治療院勤務の任を解かれて遺体安置室担当になりました」
ミアは泣きそうなな顔になり、罪を犯した親友の現状をフィンに伝えた。
「そうか。なら、良かった」
「え? どうして良かったんですか、先生! クロエちゃんは、ボク以上に優秀な治癒魔法使いですよ。そんな優秀な子を治療院から追い出して、どうするんですか!? そんなの、もったいないです! いくら、世間は親殺し犯人の妹と酷い事を言っても、神殿。神は信徒を守るんものじゃないですか?」
フィンはクロエが無事な事に安堵したのが、ミアは怒る。
いくら犯罪を犯したとはいえ自分が望んで犯したものではないのに、親友は世間からだけでなく神殿からも理不尽で酷い罰を受けた。
それを大好きな先生から肯定されるのは、如何なミアでも許せない
「ミアくん。今回も早とちりだぞ? 君も言っているじゃないか、世間の眼が冷たくて厳しいって。表に出て外部の人々と多く接する治療院だと、クロエくんは『世間の目』とやらを更に酷く受けるぞ?」
「あ! そ、そうだ。」
「モルグ担当なら、一般人はまず来ない。ある程度事情を知る有力冒険者や警察関係者。そして私とミアくん以外と会う事はないだろう。今回の神殿の処置、クロエくんを一時的に世間から守るという意味もあるんだろうね」
フィンから丁寧に説明されて、単純馬鹿なミアも神殿の「意図」をはっきりと理解した。
「あー、ボクの早とちりぃ。神殿長さまや、おじちゃん。神聖騎士団長さまにボク、酷い事を言っちゃったのぉ。クロエちゃんに酷い事するなって怒っちゃったぁ。どーしよう」
「そのあたりの人達は、ミアくんの事を良く理解しているから問題ないさ。後で皆にちゃんと謝っておくように」
「はい。先生……」
自分の早とちりで多くの人々を傷つけたことに気が付き、しゅんとしたミア。
フィンは苦笑いをしながら、落ち込んでいる可愛い生徒の頭をそっと撫でる。
「ミアくん。キミは成人したとはいえ、まだまだ幼い。失敗も沢山するだろうけれど、これから大人になるにつれて多くの事を学んで成長していけばいい。だから、落ち込んでいるよりも笑顔でいこう」
「うん、せんせー。ボク、やっぱり先生の事が大好き! ちゅー」
慰めが効果あり過ぎたのか、今度は笑顔でフィンに抱きつきキスを迫るミア。
「はい! ハグはまた今度。まだ聴きたいことが沢山あるんだからな」
「せんせーのいけずぅ。で、何聞きたいの?」
朱の唇を前に突き出したミアの顔を、掌で押しのけてハグを阻止するフィン。
更に聞きたいことがあるとミアに尋ねた。
「お、おほん。犯人は最終的にどのような刑罰を受けたのかな? クロエくんも父だけでなく兄を失うのは、いかな重罪犯であろうと悲しいが」
フィンは思わず抑えたミアの頬がとても柔らかく、しなやかな肌触りだったので赤面しつつつも平静を装ってみる。
「お兄さん、ファブリス・シャトレ―ですが、最終的に王国南部の孤島。鉱山のある島への遠島。島流しの上、十年間の鉱山強制労働になりました。先生が証明したはずの父親殺人は残念ながら証拠不十分で裁判所で認めらませんでした。最終的に公務執行妨害、傷害と死体遺棄、死亡の偽装・年金不正受給による詐欺罪、国の管理下にある施設への住居侵入罪、更に他人の資産を盗む窃盗罪の合わせ技になりました」
「やはり、まだこの『世界』で一酸化炭素による殺人を認定するのは表向きには難しいか。今回は『事情』もあるし、しょうがあるまいて」
「ボク、裁判所にも何回も文句言ったんだよ。神聖契約魔法でちゃんと証拠化したのに、先生が見つけた事を全然認めてくれないんだもん!」
ミアはフィンが赤面している事に気が付かないふりをしつつも、自分の大好きな先生の学説が裁判所に認められなかったのにも怒りを覚えている。
「ミアくん。キミはもう少し落ち着いて行動しよう。さて、先程のファブリスの罪であるが、父親殺人が重なればどんな刑罰が行われる?」
「そんなの死刑に決まってます! 親殺し、子殺しは重罪……。あ! そ、そうなったら、クロエちゃんは独りぼっちに……」
「そういう事さ。裁判所や神殿から今回は死刑にしたくないから、私が見つけた殺人の話は無かった事に出来ないかって学院経由で内密に相談を受けていたのだよ。他人を殺したわけでもない、悲しい家族ケンカの延長戦だった訳だからね。私も教え子がこれ以上不幸になるのを望まないから、承知したのだけれど? その分、今回の新たな研究室開設に繋がった訳で、私としては一切気にしていないぞ?」
またまたミアの早とちりを正すフィン。
「せんせー。ボク、どうしてこんなに馬鹿なんだろー」
「いやいや。ミアくんは、心がきれい過ぎる。真っすぐすぎるだけさ。でも、そんなミアくんが頑張ったから、事件は最悪の結末を向かえなかった訳だ。キミは己の中の正義を信じて進めばいい。間違いは、周囲や私が正してあげるよ」
「ありがとー。先生」
涙に濡れた笑顔。
そんな大人っぽい顔を見せるミアに、フィンは色気を感じてドキンとした。




