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乙女な神官戦士と魔法学院教授の異世界法医学ファイル~ボク、スパダリでハーフエルフの先生と一緒に完全犯罪は見逃さないの!~  作者: GOM
第2章 異世界でも年金偽装は発生する。

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第11話(累計 第18話) 年金偽装犯 逮捕劇 その1:誘いにのる犯人。

 深夜の貴族街。

 まばらにしか魔道具街燈が無い街を黒い影が走る。

 影は、武器屋に向く。

 先日まで兵士によって封鎖・包囲、監視されていた「シャトレー刀剣工房」の前で止まった。


「ふぅ。誰も監視していないとは、警察も騎士団も杜撰(ずさん)で不用心だな。俺がずっと王都内で隠れていたのも見つけられんし。さて、家の中から金と売れそうな武器を取ってから、高跳びだ。遺跡都市にでも行ってダンジョン探検でもしてりゃ、身元などバレんだろうしな」


 影こそは、かつての武器屋の店主。

 そして父親殺人と年金偽装犯として指名手配されていたファブリスであった。


 周囲を注意深く見て、誰も監視が居ない事を確認したファブリスは懐から鍵を出し、店の玄関を開けた。


「……妙な仕掛け(トラップ)も無しか。流石に手抜きが過ぎんか? 王都警察のアホ共は。さて、資産が全部国に取り上げられる前にめぼしいところを持っていくか」


 店内を、冒険者時代に覚えた暗視魔法で見回すファブリエス。

 しかし人の気配もなく、何の仕掛けも無い店内は真っ暗だ。


 かつての冒険者仲間の伝手を借り、王都内のスラム付近に潜伏していたファブリス。

 店の中にある「お宝」を見捨てて逃げるのがもったいないと、手配中ながらも王都から逃げ出すのを躊躇していた。


「おお、金も隠し場所を変わっていなかったか。大きな剣は持ち運びにくいから、小物の業物をっと。後は金庫の中を……」


 店の中を色々と物色していくファブリス。

 少し前まで自分が店内の全てを管理していたから、彼には全てのものの隠し場所が分かる。


「よし、これを探していたんだよ。これさえあれば、俺だってドラゴン殺し(スレイヤー)になれるぞ!」


 ファブリスは、金庫の奥から一本の片手半剣(バスタードソード)を取り出す。

 それの拵え部分は見事に彫金(エングレービング)されており、如何にも高価な剣だと分かる。


 ファブリスは剣を鞘から抜き出す。

 剣の刀身は暗い部屋の中でも淡くマナの光で輝き、刀身自身が細かく震えていた。


「やはり剣は良い! 俺は、この剣で世界を取る!」


「そんな事はお天道様(てんとうさま)が許しても、ボクが許しません!」


 そんな時、暗かった店内に灯りがともる。

 そしてファブリスに向かって指をビシっと差す少女が居た。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「ファブリス・シャトレー。貴方を父親殺人、死体遺棄、死亡の偽装・年金不正受給による詐欺罪、国の管理下にある施設への住居侵入罪、更に他人の資産を盗む窃盗罪。その他もろもろで逮捕します! 逮捕状は後から提示するので以下省略! 己の罪を数え、観念するのです!」


 魔法の光で照らされた店内。

 ミアは、魔法剣を抜いたファブリスに向かって高らかに宣言をした。


「おいおい、ミアくん。まだ住居侵入と窃盗について裁判所からの逮捕状が間に合わないからって省略は無いだろう。ファブリスくん、見ての通りだ。この家は既に警察や兵士らによって包囲されている。キミの行動は、最初から監視されていたんだよ。妹さんを悲しませたくないのなら、大人しく縛に付きなさい」


「お兄ちゃん。もう、これ以上罪を重ねないで!」


 店内の奥から沢山の兵士や警官。

 そしてフィンとクロエが現れ、ファブリスに対して説得を試みた。


「くぅ。じゃあ、俺のところに国が資産接収するって情報が流れたのも、店の監視の目が減ったのも……」


「そーなの。先生とボクが考えた作戦だよ。ねえ、ファブリスお兄さん。もう辞めよう。まだ、今なら死刑にはボクさせないから」


「そうよ、お兄ちゃん。ミアちゃんなら良くしてくれるわ」


 ……ホントは全部先生が考えた作戦なんだけどね。盗賊ギルド経由で情報を流せば、エサに食いつくだろうって先生は言うんだけど。ボク、今もどうして上手くお兄さんを誘き出せたのか分からないんだ。でも良いもん。ボクは先生の奥さんになるんだから、先生に全部任せておけばいいよね。


 ミアは内心を一切見せることなく、ドヤ顔で自慢をする。

 更にクロエまで一緒になってミアに捕まるように、兄に進言した。


「くそぉ。お前らのような優秀過ぎるヤツには、俺の事なんて分からないんだ!」


「ボク、なんとなくだけどお兄さんの気持ち分かるよ。クロエちゃんが生まれた時にお母さんが亡くなって寂しかったんでしょ? でもね、クロエちゃんを恨むのは違うよ。それにね、人には得意不得意があるし、自分に合った仕事を見つけたら良いの」


「く。くぅぅぅ! オマエ! オマエのような甘ちゃんで何でもできるヤツに同情なんてされたくない! だがなぁ、俺の手には魔剣『ソニック・クレイヴ』がある。オヤジが国王から賜った国宝級の剣だ。これを使えば、お前らなんて!」


 怪しげな光を放つバスタードソードを構えるファブリス。

 それを前にして、ミアはため息をひとつついた。


「ふぅ。クロエちゃん、ごめんね。お兄さんの説得に失敗しちゃった」

「ううん。こちらこそ、ごめん。馬鹿なお兄ちゃんで」


 ファブリスから視線を外さずにクロエに謝るミア。

 愛用の伸縮型ロッドを展開し、戦闘準備をする。


「ガキがぁ。オマエが魔剣を使った俺に敵うとでも思うのかぁ!」


 ファブリスは一気に前へ踏み込み、大上段に構えた魔剣をミアに振り下ろす

 その魔剣の怪しい輝き、そして剣から発せられる微かな振動と音。

 それをエルフ由来の耳で聞いたフィンは叫んだ


「ミアくん。あの剣は、まともに受けちゃだめだ! なんでも切り裂く魔剣に違いない」


「ありがと、せんせー。じゃー、よいしょ!」


 身体強化魔法を起動したミア。

 フィンの助言を聞いて受け止めるのでは無く、ロッドを回して剣をカランと受け流す。


「くそぉ、この魔剣の初撃すら受け流すかぁ。このバケモノがぁ。やっぱりオマエらのような恵まれた者には、俺の気持ちなんて分かるかよぉ!」


「そんな弱言は捕まえてからゆっくりと聞くね。オラオラオラ!」


 ミアの猛攻連撃を下がりながら受け流すファブリエス。

 しかし防戦一方なので、かなり焦っている様にミアには見えた。


「このままぁ!」


「甘い、くそガキがぁ!」


 好機と攻めに入ったミアに、ファブリスから短剣が投げられる。


「こんなの! え! 痛い、うそ!」


 自分に迫って来た短剣を簡単に弾くミア。

 しかし、弾かれたはずの短剣は軌道を大きく変え、空を舞って再びミアを襲う。

 ミアは回避をしそこね、頬から血が一筋垂れた。


「魔法剣、ダンシング・(舞い踊る)ダガー(短剣)か!? ミアくん、動きに気を付けて」

「うん、先生!」


 先生からの声援と情報を受けて、飛びかかってくる短剣と戦うミア。

 その隙に、ファブリスはミアから遠ざかって店の出口に向かう。


「と、止まれ! ぎゃ!」

「うわぁ、剣が切られたぁ!」


「ふははあ! やはり、俺は最強だぁ!」


 取り囲んでいた兵士や警官に切りかかるファブリス。

 彼が繰り出す魔剣の一撃は簡単に鎧や剣を切り裂き、周囲に鮮血が飛び散る。


「クロエくん、危ない!」

「お兄ちゃん、辞めてぇぇ!」


 フィンの制止も聞かずに、ファブリスの前に飛び出すクロエ。

 切り倒された兵士たちを守る様に盾になって、両腕を広げて立ちはだかった。


「クロエ! どけぇ。オマエなんか、俺の苦労も知らずにのうのうと神殿でぬくぬくしやがって」


「どかないわ! もう、アタシ。お兄ちゃん、ファブリスから逃げない! だってアタシが逃げたから、お兄ちゃんはお父さんを殺したんでしょ」

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